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君たちとの、あれこれ

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息子たちとの出会い。 息子たちとのあれこれは私の中の奥の方を容赦なく引っ掻き回し、私という人間を生かしてくれた。 *時系列はバラバラです。その時心に浮かんだ記憶と想いを、ありの… もっと読む
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#日記

【そらのかみさま】

【そらのかみさま】

「そらのかみさま、おねがいございます」

そう言って、ちびは両の手をあわせて空に祈った。今にも泣きだしそうな灰色の空。フロントガラスにぽつりと滴が落ちる。

「かみさま、そらのかみさま。おねがいございます。どうか、たいようをちょっとだけかしてください」



雨の週末、息子たちが会いにきてくれた。彼らと新しい土地で過ごすのは、これが二度目。迎えにいく道すがら、天気予報を調べた。土曜日は雨。日曜日

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【”もも”の空】

【”もも”の空】

「みて、”もも”みたいにきれい」

 そう言ったちびの頬も、隣に立つ長男のそれも、桃色に上気していた。

 うっすらと染まる夕焼けを眺めながら、真っすぐに空を指さして笑う。小さな指先を眺めながら、私もつられて笑っていた。

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【お母さん12年生、夜更けの反省文】

【お母さん12年生、夜更けの反省文】

女性ホルモンに理性が負けた一日だった。

本日の私は自己嫌悪の塊である。この時間になり後悔が山のように押し寄せてきてしまったため、懺悔の意味でこのnoteを書いている。懺悔と言いながらしっかり酎ハイを飲んでいるけれど。しかも500㎖のロング缶。

絶賛PMS期にも関わらず、この数日相当な負荷がかかっていた。子どものあれこれが忙しく休む間もない連休を過ごし、挙句に今日もちびは幼稚園をお休みした。家の

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そういうときこそ、食べるんだ。

そういうときこそ、食べるんだ。

悲しみや苦しみが深いとき、人は「食べる」ことを疎かにしがちだ。食べることは生きることと直結している。生きる力が不足しているときは、食べ物を摂取するためのエネルギーが枯渇した状態にあるのだと思う。これは医学的にどうとかいう話ではなく、私個人の経験に基づく推測の話だ。

近頃、少し食欲が落ちていた。詳しくは書けないが、先日息子が理不尽な目に合い、それによって私も深く傷ついていた。一番傷ついたのは息子だ

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水色の世界

水色の世界

ちゃぷちゃぷと水音を立てるちびの表情は、夏の太陽みたいだった。

「おかあさん、みてみて!!」

ぴょんぴょんと弾むような声が、青空の下に響き渡る。彼の「みて!」に従って目線を下げた私の前に、幻想的な世界が広がった。その色と光の美しさに、ちびの笑顔が重なる。

「ね、きれいでしょう?」

私の宝ものは、この世界から”きれいなもの”を見つけるのが得意だ。その瞬間の彼の笑顔は、あまりにも真っすぐで時々

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「ありがたいことは、あたりまえじゃないの?」

「ありがたいことは、あたりまえじゃないの?」

「当たり前だと思わないでね!」

母は、この台詞がお気に入りだった。
ご飯があること。お家があること。学校に行けること。
全てがありがたいことであり、心の底から感謝すべきだといつも口を酸っぱくして私たちに話していた。母の生家は、時代もあるのだろうが、とても貧しかった。まだ幼かった母を柱に縛り付けて農作業をしなければ、生きていけないほどに。

ご飯を残すことは、絶対に許されなかった。それはどんな場合

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【子どもたちの今】

【子どもたちの今】

 昨夜、長男が泣いた。彼が声を上げて泣くところを見るのは、随分と久しぶりだった。私にできるのは、彼の背中を擦り続けることだけだった。
「悔しいね」
 そう言いながら、抱きしめることだけだった。

*

 コロナの影響で、また公式試合が一つ潰れた。その試合を、息子はとても楽しみにしていた。その試合に勝てば県大会がある。勝ち上がれたものだけが挑戦できるステージがある。県大会で結果を残すこと。それが彼ら

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「そんなこと」なんかじゃない。

例の感染症の影響に伴い、学校がGW明けまで休校になった。プール授業もなくなって、長男の小学校生活最後の運動会さえも、何が何だか分からないうちに煙のように消えてしまった。

走るのが好きで、泳ぐのが好きで、とにかく運動が好きで。何よりバスケが好きで。それなのにもう1か月以上まともにバスケをしていない。庭のゴールでひたすら練習しているけれど、一人で打ち込むシュート練習だけでは単調過ぎて物足りないらしい

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