マガジンのカバー画像

君たちとの、あれこれ

18
息子たちとの出会い。 息子たちとのあれこれは私の中の奥の方を容赦なく引っ掻き回し、私という人間を生かしてくれた。 *時系列はバラバラです。その時心に浮かんだ記憶と想いを、ありの… もっと読む
運営しているクリエイター

#育児

【そらのかみさま】

【そらのかみさま】

「そらのかみさま、おねがいございます」

そう言って、ちびは両の手をあわせて空に祈った。今にも泣きだしそうな灰色の空。フロントガラスにぽつりと滴が落ちる。

「かみさま、そらのかみさま。おねがいございます。どうか、たいようをちょっとだけかしてください」



雨の週末、息子たちが会いにきてくれた。彼らと新しい土地で過ごすのは、これが二度目。迎えにいく道すがら、天気予報を調べた。土曜日は雨。日曜日

もっとみる
【”もも”の空】

【”もも”の空】

「みて、”もも”みたいにきれい」

 そう言ったちびの頬も、隣に立つ長男のそれも、桃色に上気していた。

 うっすらと染まる夕焼けを眺めながら、真っすぐに空を指さして笑う。小さな指先を眺めながら、私もつられて笑っていた。

もっとみる
【お母さん12年生、夜更けの反省文】

【お母さん12年生、夜更けの反省文】

女性ホルモンに理性が負けた一日だった。

本日の私は自己嫌悪の塊である。この時間になり後悔が山のように押し寄せてきてしまったため、懺悔の意味でこのnoteを書いている。懺悔と言いながらしっかり酎ハイを飲んでいるけれど。しかも500㎖のロング缶。

絶賛PMS期にも関わらず、この数日相当な負荷がかかっていた。子どものあれこれが忙しく休む間もない連休を過ごし、挙句に今日もちびは幼稚園をお休みした。家の

もっとみる
水色の世界

水色の世界

ちゃぷちゃぷと水音を立てるちびの表情は、夏の太陽みたいだった。

「おかあさん、みてみて!!」

ぴょんぴょんと弾むような声が、青空の下に響き渡る。彼の「みて!」に従って目線を下げた私の前に、幻想的な世界が広がった。その色と光の美しさに、ちびの笑顔が重なる。

「ね、きれいでしょう?」

私の宝ものは、この世界から”きれいなもの”を見つけるのが得意だ。その瞬間の彼の笑顔は、あまりにも真っすぐで時々

もっとみる
【ごめん、ずっとこれを一人でやらせて】

【ごめん、ずっとこれを一人でやらせて】

LINEの着信音がピコン、と鳴った。一人きりの部屋で、でもそのとき画面越しに友人たちと語り合っていた私は、一人ではなかった。

”どうしよう”…か。
咄嗟に湧いてきた感情は、苛立ちだった。同じように「どうしよう」と電話やメールをした私に、あなたはいつだって「仕事だから、あとよろしく」と背を向けたじゃないか。そう思い、苦々しい思いで画面を閉じた。

友人たちに息子が発熱したことを告げ、私の楽しいひと

もっとみる
小さなカメラマン

小さなカメラマン

「みて!きれいでしょ?」

そう振り返るちびの顔は、きらきらと輝いていた。差し出された掌に握られたスマホのなかで、季節の花々が美しく咲き乱れていた。



初夏のように暑かった晴天の午後、ちびと近くの神社までお散歩をした。
先日ちびは足を怪我してしまったので、今はお散歩もままならない。だからこれは、ちびが怪我をする1日前の話だ。

「おかあさん、おそといこう」

いつものようにちびが言う。彼は外

もっとみる
「ありがたいことは、あたりまえじゃないの?」

「ありがたいことは、あたりまえじゃないの?」

「当たり前だと思わないでね!」

母は、この台詞がお気に入りだった。
ご飯があること。お家があること。学校に行けること。
全てがありがたいことであり、心の底から感謝すべきだといつも口を酸っぱくして私たちに話していた。母の生家は、時代もあるのだろうが、とても貧しかった。まだ幼かった母を柱に縛り付けて農作業をしなければ、生きていけないほどに。

ご飯を残すことは、絶対に許されなかった。それはどんな場合

もっとみる
【子どもたちの今】

【子どもたちの今】

 昨夜、長男が泣いた。彼が声を上げて泣くところを見るのは、随分と久しぶりだった。私にできるのは、彼の背中を擦り続けることだけだった。
「悔しいね」
 そう言いながら、抱きしめることだけだった。

*

 コロナの影響で、また公式試合が一つ潰れた。その試合を、息子はとても楽しみにしていた。その試合に勝てば県大会がある。勝ち上がれたものだけが挑戦できるステージがある。県大会で結果を残すこと。それが彼ら

もっとみる

「そんなこと」なんかじゃない。

例の感染症の影響に伴い、学校がGW明けまで休校になった。プール授業もなくなって、長男の小学校生活最後の運動会さえも、何が何だか分からないうちに煙のように消えてしまった。

走るのが好きで、泳ぐのが好きで、とにかく運動が好きで。何よりバスケが好きで。それなのにもう1か月以上まともにバスケをしていない。庭のゴールでひたすら練習しているけれど、一人で打ち込むシュート練習だけでは単調過ぎて物足りないらしい

もっとみる
一番痛いのは、きっと私じゃない。

一番痛いのは、きっと私じゃない。

夜の空気は、昼間のそれより少し哀しい匂いがする。物音は消え去り、光も少なく、刻々と深まる闇がこちらに近づいてくるような気がする。

それでも、私は夜が好きだ。静けさも、暗闇も、慣れてしまえばむしろ落ち着く。月灯り。星灯り。どれだけ見つめていても目が痛まないその光には、不思議な力がある。

車で夜を過ごす生活にも、だいぶ慣れた。明け方まで起きていて、空が白んできたらようやく眠る。少し眠ったら、簡単な

もっとみる
子育てへのアドバイスは、取捨選択していい

子育てへのアドバイスは、取捨選択していい

2か月ほど前、こんなツイートをした。

呟いたのは、このママ友から電話がかかってきた直後だった。LINEだけのやり取りで済ませたい内容でも、彼女はよく電話をかけてくる。私は出ない。出られないのだ。動悸がしてきて、背中を嫌な汗が伝う。いつも残る不在着信の表示に罪悪感を感じないわけではないが、どうしても心が彼女との対話を拒否している。

私の長男は、此処でも何度も書いているように破天荒だった。今でもそ

もっとみる
クリスマスにコンクリートを欲しがる息子の話

クリスマスにコンクリートを欲しがる息子の話

数日前、意気揚々と長男が私にこう告げてきた。

「お母さん、俺今年のクリスマスプレゼント決まった!!」

「お、なになに?」

「コンクリート!!!」

……コンクリート?

「コンクリートって…何?」

「だからぁ、庭をコンクリートにして欲しいってこと!そしたら雨降ってても練習できるじゃん」

我が家の庭にはバスケゴールがある。雨が降るとそのぬかるみが乾くまで練習出来ないのが、彼はずっと不服そう

もっとみる

覚えておきたいことを教えてくれるのは、いつだって君たちなんだ

救急車のサイレンの音がする。おそらく、後続しているであろうパトカーの音も。

降りしきる雨は止んだものの、まだまだ混乱は続いているようだ。

昨日降り続いた大雨は、車ごと人をも押し流してしまうほどの威力を持っていた。近隣の歩道で土砂崩れが起き、徒歩5分以内の道路が冠水した。ちびの幼稚園のお迎えも、普段使っている道路が湖のようになっていて立ち往生した挙げ句、ぐるりと迂回して10分の道のりに小一時間か

もっとみる
迷いながら育てる。きっと、それでいい。

迷いながら育てる。きっと、それでいい。

「勉強しなさい」と子どもに言いたくない。

その台詞が私のなかでトラウマであることも原因ではあるが、そもそも何かを人に強要することが極端に苦手だ。もちろん礼儀とか、挨拶とか、人となりに関わる最低限のルールは教えている。しかし、それ以外のことに関してああしろこうしろと指示を出す気にはどうしてもなれない。

私は実は、怒るとかなり怖い。よその子も口を揃えてそう言う。命に関わること、人の心を傷つけること

もっとみる