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「虫が好き」なだけなのに

今日はどうでもいい話をする。だいたひかるの「どうでもいいですよ♪」のショートコントくらい、どうでもいい話だ。(個人的には彼女のコントよりも、あの独特な出だしのワンフレーズが好きだ)


私は虫が好きだ。「苦手ではない」とか、「嫌いじゃない」とかの話ではない。「好き」なのだ。基本的にあらゆるジャンルの虫を「好きなもの」に位置付けてはいるが、さすがに毒虫系はできれば素手で触るのは遠慮したい。でも500円くらい詰まれたら、蜘蛛や百足の類なら果敢に挑もうとするかもしれない。

世の女性たちは、比率的にはあまり虫を好まない。というか、むしろ「嫌い」な人の方が圧倒的に多いと感じる。そんなわけで、私は職場などではその分野で割と重宝された。要するに、害虫駆除という分野である。無線をつけて働く職場などでは、それはそれは頻繁に呼び出されたものだ。

「はるさん!洗面台に蜘蛛が!」

「はるさん!給湯室にGが!!」

(Gとはあいつである。名前だけでも恐怖を覚える方が多いイメージなので、敢えて本名は伏せる。茶色い羽根のヌメっと光るあいつだ)

呼ばれるたびに「はいはい」と駆け付け、雑巾やらテッシュやらで捕獲する。もしくは可哀想だがお陀仏して頂く。そのたびに拍手喝采を浴びるのだけど、みんな私から10歩くらい離れている。退治してもらえた安堵と同じくらい、平気でそれらに近づける私が怖いらしい。理不尽だと思う。

普段くそみたいな態度を取ってくる人までもが、嫌いな虫が出た時だけ縋るような声を出してくる。「知らねーよ」と言ってやりたい気持ちを抑えて退治してあげるのだけど、退治した途端に用済み感を全面に出してくる。理不尽だと思う。


女性の多い職場を退職する時、送別会で若い女の子に泣きつかれた。

「はるさんがいなくなったら、Gが出た時どうすれば良いんですか?!」

私の存在意義はそこだけですか?


虫が好きとはいえ、やはり好みはある。バッタとか、カマキリとか、トンボとか。カミキリムシやナナフシなんかも良い。ナナフシはなかなかお目にかかれないので、たまに見かけると息子たちと一緒に大興奮してしまう。

芋虫も好きだ。彼らが蛹になって蝶々になる過程は、本当に美しいと思う。

先日はちびにカマキリを頭に乗せられた。心の準備が全くなかったのでさすがに驚いたが、おそらく虫が苦手な人からしたら発狂レベルなのだろう。虫が好きな人だとしても、カマが髪の毛に絡みついてそこそこ面倒だし痛いので、カマキリを頭に乗せるのは個人的にはお勧めしない。


虫が好きだと言うと、いつも「凄いね!」と憧れの眼差しを向けられる。でも実際は、虫が好きなことで受けられた恩恵よりも理不尽なことの方が多かった。

小学校低学年の頃、クラスの男子に背中にミミズを入れられたことがある。私は平気な顔でそのミミズを取り出し、その男子の顔に投げつけた。すると、あろうことかその男子は泣き出した。泣き声を聞きつけて飛んできた先生にこっぴどく叱られた。先にやったのは向こうだと言ったら、「でもあなたは平気だったんでしょう?」と言われた。私も嘘でも泣けば良かったと思った。

その日からしばらく、私は「ミミズ女」と言われた。理不尽だと思う


ちなみにミミズは雌雄同体なので、「ミミズ女」も[ミミズ男」も存在しない。的外れな悪口だったことが判明した時、私はこっそりほくそ笑んだ。




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