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海外と日本のコロナ寄付の違いを考える

すっかりnoteの更新がご無沙汰してしまいました。

SDGsについての更新もしたいところですが、ここ数ヶ月は「寄付」について向き合うことが多かったので、しばらくは「寄付」にまつわるテーマでいくつか投稿をしていきたいと思います。

今回のテーマは「海外と日本のコロナ寄付の違いを考える」。

わたしは今、READYFORというクラウドファンディングの会社で働いておりまして、4月3日に立ち上がった「新型コロナウイルス感染症:拡大防止活動基金」のプロジェクトマネジャーとして運営事務局を担当しております。

この基金を運営する中で国内外の様々なコロナ寄付をリサーチする機会があり、その中で気づいたことや感じたことがいくつかあったのでまとめていきたいと思います。

(※本記事の内容は、すべて個人の見解です。)

時系列でみるコロナ寄付

今回の新型コロナウイルス感染症は中国で1~2月頃に感染が拡大し、その後2~3月で米国やヨーロッパに広がっていきました。そのため世界では2月頃から徐々にコロナにまつわる寄付が活発化し、特に感染者の多い中国・米国・イタリアなどの国では、連日コロナ対策への支援を表明するニュースが流れていました。

一方日本では感染が本格的に拡大し、緊急事態宣言が発令された4月頃から寄付活動が本格化し、様々な基金が立ち上がったり、寄付キャンペーンが実施され始めました。

そのため、支援のピークにはタイムラグがありました。かつ、感染者数が増加し、状況が深刻な国でより寄付にまつわる取り組みが活発だったため、今回の寄付の特徴がその国の特徴なのか、このコロナ特有のものかは定かではありません。

海外の寄付動向その1:IT大手とレガシー企業がそれぞれオリジナリティある支援を実施

今回のコロナに伴い、海外のコロナ寄付の事例は100個以上調べましたが、その中でも数百億円の規模で寄付を実施していたのがグローバル企業でした。

海外企業寄付額ランキング(筆者調べ)

1. Tencent 335億円
2. Alibaba 300億円(自社ECサイトの無料使用料も含む)
3. TikTok 270億円
4. NETFLIX 111億円
5. Facebook 100億円(自社の無料広告クレジットも含む)
5. Google 100億円
7. JP Morgan 50億円
8. MasterCard 26億円(同社財団が拠出)
9. NIKE 16億円
10. Apple 15億円

*本ランキングは直接の寄付以外の支援も含んでいます。

今回は、中国で被害が深刻だったことから、中国のIT大手企業が米国のIT大手企業よりもかなり多くの金額を寄付しています。

支援する内容も企業によってまちまちです。

Tencentは2月以降、複数回に渡って基金を増額しており、当初は医療従事者向けの個人防護具などの物資の提供に寄付を使っていましたが、その後は医療従事者へのトレーニング費用、メンタルケア費用、研究機関への支援などより中長期的な支援に移行しています。

NETFLIXは自社で基金を設立し、テレビやエンタメ業界で働くスタッフを支援するためのスキームを展開しています。

MasterCardは今回のコロナ支援の際にも中心的な役割を果たしているビル&メリンダ・ゲイツ財団などと協働で、新型コロナウイルス感染症の治療薬の開発に取り組むアクセラレーターへ寄付を実施しています。

それぞれの企業のリリースを見ていても、普段、自社の事業活動を通じて目指しているものと今回の寄付にどのような繋がりがあるのかをしっかり説明している企業が多く、その企業なりの支援の姿勢やあり方を垣間見ることができます。

海外の寄付動向その2:各地域のコミュニティ財団が中心的な役割を担う

これは特に米国において強い傾向ですが、緊急支援としての寄付先として各地域のコミュニティ財団が企業や大手財団から選ばれていました。

例えばAmazonはワシントン地域の4つのコミュニティ財団に一括で寄付をして、各コミュニティ財団によってその地域でフードバンク、シェルター事業などに取り組む非営利団体に比較的使徒が柔軟な助成金という形で資金が提供されています。

企業が緊急支援の際に、個別の団体の中で適切な団体に寄付をすることは非常に難しいため、日頃から団体とのネットワークが強いコミュニティ財団が地域のハブとなって資金を集め、そこから地域の個別団体にお金を流す仕組みは非常に理にかなっていると感じます。

海外の寄付動向その3:超富裕層による巨額の寄付とエンタメ的な寄付の広がり

企業や財団に引けを取らない金額が、セレブリティや企業の創業者、スポーツ選手などのビッグネームによって寄付されています。

コロナ寄付で恐らく個人で最も寄付を実施している、Twitterの創業者のJack Dorsey氏。なんと個人資産の1,100億円の寄付を宣言し、更にその寄付先をスプレッドシートにて金額と寄付理由を添えて公開しています。彼がTwitterに記載している通り、透明性の高さを意識していることや、それぞれの寄付理由が書いてあるのでJack氏の思想や価値観を垣間見る事が出来ます。


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出典:#smartsmall tracker
6/20時点で89の寄付を実施しています。
スプレッドシートの詳細はこちらから見れます。

スポーツ選手による寄付も今回のコロナにおいては活発で、サッカー業界ではクリスティアーノ・ロナウド(金額不明)やリオネル・メッシ(1.2億円)を初めとするスター選手が寄付をしたり、特にコロナの影響が大きかったヨーロッパのサッカー選手は自身で基金を立ち上げ寄付も募るほどの力の入れ様でした。

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出典:WeKickCorona
バイエルンに所属するドイツ代表のMFレオン・ゴレツカとDFジョシュア・キミッヒが、WeKickCoronaという基金を設立。自身も、約1.2億円を寄付し、フードバンク、病院、地元のホームレスの支援団体、献血団体などに助成を実施している。(運営は、ドイツの信用金庫が実施)


一方米国のセレブリティの間では、チャリティーオークション企画が実施されました。その中でも多くのセレブが関わり、今も継続して行われているのが「All in Challenge」。スター俳優や歌手などのセレブリティ・著名人が賞品やイベントなどをそれぞれ提供し、次の人を指名して行くスタイルで、寄付者は10ドル以上を寄付をすることでオークションの商品が抽選で当たるチャンスを獲得することが出来ます。

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出典:All in challenge
All in challengeに掲載されているオークション商品の一覧

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出典:All in challenge
オークションに参加するオプションとしては10ドル〜数百ドル単位での寄付のオプションがあり、購入数は自由。寄付額が多ければ多いほど、オークションの商品が当たる確率が高まる方式。写真の商品は『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)などで知られるアンソニー&ジョー・ルッソ兄弟とレッドカーペッドを歩けるというもの。

過去には、俳優レオナルド・ディカプリオやロバート・デ・ニーロ、ジャスティンビーバーなど錚々たるメンバーがオークションへの商品提供に参加しており、これまでに60億円の寄付を集めています。(個人的に過去にとても好きだった商品が『ジュラシック・ワールド』最新作に「恐竜に食われる役」として出演できる権利というものです笑)

こういった、普段は寄付の経験が無い人でも自分の好きなスターのファンであることをきっかけに、キャンペーン形式で参加出来る仕掛けはすごく良いなあと思っているので、日本でも広まることを期待したいです。

日本の寄付動向その1:自治体への寄付が活発に

日本でコロナに関する寄付が本格化したのは4月上旬頃からでしたが、その頃から私自身がREADYFORにいることもあって、周囲の人から「このコロナの状況で何か支援をしたいけど、どこに寄付をして良いかわからない」という声を多くいただきました。

日本では日常的に寄付をする人は多くは無いため上記の様な戸惑いを持つ人がマジョリティかと思います。私はそのような状況の中で、今回多くの人の寄付先として想起されたのが「自治体」だったのでは無いかと推察しています。ここ数年でふるさと納税が浸透したことで「寄付をする」ということと、「寄付先としての自治体の認知」が多くの人の中でリンクしてる状態であったことも要因の一つかもしれません。

ニュースでご覧になった方も多いかと思いますが、特に多くの支援を集めているのが大阪府の基金です。6月20日時点で約26.6億円ほどを集めています!恐らく日本の自治体の中で1位の寄付総額かつ、日本のコロナ関連の基金の中では1位の寄付総額なのではないかと思います(筆者調べ)。

今回のコロナでは緊急事態宣言が発令されたのちに、各都道府県が感染状況に応じて対応を取っていたことからも、自身が住む地域の状況をよくするために寄付をしようというインセンティブも働きやすかったかもしれません。

日本の寄付動向その2:「基金」をクラウドファンディングで集める形が広がる

海外の寄付情報をリサーチしている中では、今回のコロナに際してもNPOや財団の力が強い米国を中心に自社のサイトで寄付を集めている非営利団体や財団、基金がほとんどでした。

一方で日本では、財団とクラウドファンディングの事業者がタッグを組んで基金の立ち上げ〜寄付の募集を実施している事例が沢山生まれました。これによって従来では特定の活動への寄付が主なクラウドファンディングにおいて、より幅広い活動が可能な「基金」への寄付をする選択肢が出来たのかなと思っています。

クラウドファンディングで基金の寄付募集を実施している一例

新型コロナウイルス感染症:拡大防止活動基金(READYFOR)
ミニシアター・エイド(Mini-Theater AID)基金 (MOTION GALLERY)
舞台芸術を未来に繋ぐ基金=Mirai Performing Arts Fund (MOTION GALLERY)
ブックストア・エイド(Bookstore AID)基金 (MOTION GALLERY)
小劇場エイド基金 (MOTION GALLERY)
むすびえ・子ども食堂基金(READYFOR)
若者おうえん基金(READYFOR)
アーツ・ユナイテッド・ファンド(AUF)(CAMPFIRE)

日本の寄付動向その3:著名人による様々な形での支援

日本ではこれまで著名人が寄付を実施しても公表しないこともあったりと、どちらかというとひっそりと取り組むことが多かったと思いますが、今回は非常に多くの著名人がそれぞれの形で支援をされていました。

「新しい地図」さんは日本財団さんと共同で「LOVE POCKET FUND」を立ち上げられて、これまでに約2.7億円を集めています。(新しい地図さんとしても3000万円を寄付されています。)

寄付活動に積極的なYOSHIKIさんは今回のコロナに関連して、複数回の寄付を実施されています。(YOSIHIKIさんの呼びかけにより浜崎あゆみさんも寄付を表明していました。)

長友選手はひとり親家庭の支援をする団体への支援の呼びかけをするためにクラウドファンディングを行いました。

そのほかにも、日々著名人による寄付のニュースが盛んに取り上げられることで、多くの日本人にとってこのコロナの状況の中で自分ができる支援として「寄付」が選択肢に上がるようになったのではないかと思います。

寄付は自分の想いを伝え、届ける手段の一つ

今回のコロナによって、普段は中々「寄付」をしたことが無い人が初めて寄付をしてみようと思ってみたり、普段は寄付をしたことが無い領域の団体に支援をすることで新たな社会課題や支援すべき先が見えてきた人がいたりと、人それぞれに感じること、気づくことがあったのでは無いでしょうか。

私は、日々色々な寄付の形を見ていて、寄付は自分の意志や価値観の表明であり、自分と向き合う大事な機会をくれる行為だなと感じています。

ぜひ今回をきっかけに一歩を踏み出して、日々のちょっとした機会に世の中の課題に想いを馳せる人、そして寄付という形で関わる人が増えたら嬉しいです。

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ちょっとした告知その1

コロナの状況は現在少しずつ落ち着いて来たものの、確実にこれまでの世界からは変化が起きています。そして今も人知れず、変化した世界の中で懸命に課題に取り組む人がいます。

READYFORでは冒頭でお伝えした通り、現在も新型コロナウイルス感染症:拡大防止活動基金への寄付を募集しているので、ぜひご支援をいただけると嬉しいです。



ちょっとした告知その2

「なかなか日々の生活の中で寄付をしようとは思わない」「そもそも寄付はどこにすれば良いのかわからない」という人にはぜひ新しい贈与論というコミュニティがおすすめです。毎月寄付を実際にコミュニティメンバーと共同でしたり、日々寄付についてディスカッションをしたりしています。(私は運営で関わっています)現在4期の会員を募集中です!


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