バイデン政権半年の成果と課題

1. 民主主義再建

ーバイデン政権半年経過
・7.20 バイデン政権発足半年経過。
・バイデン政権半年の成果と課題を、内政とりわけ経済社会戦略と外政とりわけ国際戦略にわけて考察、評価する。

ー民主主義復権への訴え
・アメリカの分断を深めた大統領選。アメリカ第一主義を唱えて国際協力を無視し、雇用機会の喪失に苦しむ労働大衆に、雇用を奪ったのは中国だと敵愾心を煽り、実際には大減税などで富裕層を優遇したトランプ氏。
・対して、バイデン氏はインフラ投資で雇用機会を増やし、労働者や中産階級への給付や教育で経済的地位の底上げを図り、国際協調主義を唱えて世界でのアメリカの信用回復をめざすバイデン氏。
・2020年の両陣営の選挙戦は熾烈を極め、最終的にはバイデン氏が8500万票を獲得して勝利したが、トランプ氏は7400万票の熱烈な支持者を獲得したとして敗北を認めず、民主党は郵便投票の不正などで勝利を騙し取ったと主張して、アメリカ分断を深めた。
・2021年1月6日、トランプ氏は国会議事堂まえで集まった暴力的支持者を煽って議事堂に乱入させ、国の内外から民主主義を冒涜させたと激しい批判を浴びたが、トランプ氏弾劾を試みた議会は共和党優勢の上院多数の反対で弾劾はできず。・そうした中で船出したバイデン政権にとって、アメリカの団結と民主主義の復活は至上命題。
・就任後100日直前という遅いタイミングで施政方針演説をしたバイデン大統領。
・この困難な状況下で、なんとか民主主義を守り、中国など専制主義国家のアメリカ民主主義批判が間違っていることを証明すると宣言。南北戦争で勝利したAbraham LincolnのGettysburg Address(of the people, by the people, for the people)を想起させる演説

2. CV対応 

ーCV対策
・アメリカは世界最先進国、医療も最先端の国、それが世界最悪のCV感染。私見ではその8割はトランプ氏の失政。CV感染の深刻さを無視、専門家を軽視、感染抑制対策無策6週間を浪費。致命的。しかも感染増大中に経済規制緩和、経済活動再開急ぎ、感染増幅。
・バイデン大統領就任時、感染者2500万人、死者50万人。政権の最優先緊急課題はCV対策。専門家糾合。大規模ワクチン接種の展開。4月末までに米国内2億回接種。7.4までに成人7割。
・実はトランプ政権も、CV感染の深刻さに気づいた。とくにCV対策が選挙民評価に直結認識。大規模な感染対策、失業者、家計、中小企業給付支援。2020年、4弾にわたり約4兆ドル。WERP PT:ワクチン開発と接種加速戦略はトランプ氏が開始。
・ワクチン接種拡大→国民の安心→経済活動活性化→GDP急回復→2020IV、CV前にならぶ。VでなくL字型回復の実現。B政策の勝利?

ーアメリカ救済計画
・バイデン大統領、3.11.Rescue Package:CV感染拡大に対応する1.9兆ドル(約200兆円)
・1兆ドル:一人最大1400ドルの現金給付:年収8万ドル以下。4000億ドル、全米家計1/4、失業者支援(失業保険給付に週300ドル上乗せ、)子育て世帯向け税額控除、1000億ドル
・4000億ドル:州・地方政府への財政支援、中小企業500億ドル
・4000億ドル:コロナ対策ワクチンなど、
・1000億ドル:最低賃金15ドルに引き上げ
・1400ドル現金給付は共和党支持層の40%が支持

3. 雇用と家族計画

ーアメリカ雇用(インフラ投資)計画
・2021.3.31.バイデン氏、8年間で2兆ドル(220兆円)インフラ投資提案
 ・運輸:      6210億ドル   道路、橋、鉄道、EV設備
 ・製造業:     3000 半導体など供給網強化
 ・研究開発     1800 AI、バイオなど
 ・デジタル     1000      高速通信網
 ・クリーンエネルギー1000 自然電力

ー主要財源ーバイデン増税案
1. 連邦法人税を21%から28%に引き上げ
2. 多国籍企業の海外収益への課税を従来の10.5%から2倍の21%に引き上げ
3. 大企業に限り、会計上の利益に最低15%を課す「ミニマム税」を導入。
4. 年収40万ドル以上の1%の最富裕層には最高税率39.6%:Fair sharem課税

ーアメリカ家族計画
・2021.4.後半に公表、大統領施政方針演説(4.28)に強調:4課題
  1. 良質な教育を受ける権利。
  2. 廉価なチャイルドケアを提供。
  3.最長12週間、有給の家族に医療休暇を提供。
  4.家族に直接資金提供。3月、子供全員を対象に税額控除を拡大、6500万超の子供を支援して貧困を半減。

・財源
 企業と富裕層への公平な負担で捻出。米国大企業の55社は、前年連邦所得税納税額がゼロ。法人税の改革で公正な負担。彼らのビジネスが恩恵を受ける公共投資に振り向ける。

4. 批判とインフレ

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島田晴雄が世界情勢を語る「しまはる塾」でお伝えしている様々な事象を、さらに詳しくペーパーで解説します。次から次へと”玉手箱”を開いて参りま…

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