世界インフレ・利上げ下、日銀・政府の対応と課題

Ⅰ. 「日銀で日本は大丈夫か?」

ー世界の利上げ進展と日銀の対応
・世界は利上げ趨勢。FRB3月利上げ、2022年3~4回、23年3回、2%視野、ECB22年中に利上げ、新興国など30ヶ国利上げ実施、計画
・日本、日銀は金融緩和維持の方向堅持。利上げによる混乱防御?
・米欧利上げを契機として、世界の景気変動パターン歴史的転換。長期繁栄から長期不況へ
・日銀の保守的対応は、世界経済転換への積極的対応の機会を逃すことにならないか。

ー日銀、1月決定会合の議論
・1.17~18、日銀金融政策決定会合。企業物価指数の急激な上昇などふまえ、22年度の 物価上昇率見通しをこれまでの0.9%から1.1%に↑。
・資源高や円安輸入物価↑は顕著で、春先にはCPI 2%上昇の可能性も。しかし、賃上げ進まず、持続的な2%物価上昇にはまだ時間がかかると判断、大規模な金融緩和は現状維持とした。

ー日銀指し値オペ発動
・日銀2.14朝、長期金利上昇抑制のため「指しオペ」(利回り指定の公開市場操作)を通知。10年物国債を0.25%の利回りで無制限に買い取ることで長期金利制限。銀行など投資家は0.25%以上(より安価で)で債権を売るメリットがないので0.25%の指し値で長期金利は落ち着く。指しオペの通知は連休前の2.10. 通知ふまえて民間投資家は2.5%以上では売り控える。
・この方法で、長期金利を0%近辺に抑え、利上げ期待を抑制する。

ー金融引き締め(金利上昇)の影響
・世界は米欧途上国など物価抑制のため金融引き締め(利上げ)に移行。日銀はなぜ緩和持?
・利上げは、政府の巨額負債の金利負担増。財政悪化。低金利に慣れた企業が適応できない?

ー金融緩和(低金利)方針維持の影響
・3月以降、米金利は急速に上昇。世界金利上昇趨勢。
・円レートは低下。輸入物価上昇、賃金上がらず、実質賃金↓

ー景気変動パターンの歴史的転換
・世界は2008→2021まで安定的繁栄持続、通常の景気変動なし。CV後、過大財政、資産P↑
・2022インフレ高騰、インフレ退治の利上げ、米欧、途上国は防御利上げ、米欧:景気後退スタグフレーションの可能性、途上国通貨↓利上げで経済縮小。世界大の長期不況か?

ー緩和維持の影響と日本の貧困化
・緩和維持=低金利維持→巨大財政赤字維持、ゾンビ企業維持=構造改革停滞、日銀資産超巨額=出口なし、未来志向の財政資源配分困難→生産性低落、実質所得低落、日本の貧困化、庶民の生活防衛→教育の劣化、日本の弱体化。
・利上げ、金融引き締め、構造改革強力推進すべきではないか

Ⅱ. 「政府と日銀が日本経済を壊す1:補助金と低金利が問題」


ー岸田首相、「物価高緊急対策」を指示
・3.29.午前、岸田首相は物価高への緊急対策をまとめるよう関係閣僚に指示
・緊急対策「原油価格・物価高騰総合緊急対策」
  1. 原油高
  2. 食料・資源高
  3. 中小企業支援
  4. 困窮者支援
・財源は、CV対策の5兆円を含む5.5兆円の予備費から拠出。予備費は閣議決定で実施できるので、内容の精査がおろそかになる懸念あり。

ー原油高対応
・原油高に対しては石油元売りに補助金を支給する3月末までの激変緩和措置を4月末まで延長
・ガソリン税を一時的に下げる「トリガー条項」の凍結解除(税を下げて良い)など検討

ー食料・資源高対応
・小麦や畜産・水産物など食料。調達先の多様化や飼料価格上昇の緩和策。

ー中小企業支援
・円滑な価格転嫁や賃上げの実現、資金繰り支援

ー困窮者支援
・セーフティネットの強化や孤独、孤立支援。

ー物価高緊急対策の特徴
・世界の脱炭素戦略やウクライナ戦争など外的要因で起きている原油高を元売りへの補助金で対応するのは”焼石に水”で税金の無駄づかいで財政赤字増加、国民負担をふやすだけの愚策。
・食料品も、物流・温室コストの根底には原油高。家畜飼料に補助金は愚策
・中小企業や下請けに価格転嫁や賃上げを促すのは良いが、需要がなければ実施は困難

ー日銀の対応:金融緩和と低金利の維持
・日銀は、米欧などで高い物価上昇がつづき、日本にも物価上昇が波及し、米欧など世界で利上げが本格化している状況下でも、日本は賃上げや消費拡大が乏しいので、低金利と金融緩和を維持しつづける姿勢を堅持。

ー金融緩和
・企業活動の活発化や消費の拡大を期待して、まだ金融緩和をつづける対応を維持。
・3.30. 金融緩和強化として、中期・長期国債2.3兆円買い入れ。2013.4月以来の大規模購入。

ー低金利の維持
・日銀は、2月14日に長期金利を0.25以下に抑えるために指値オペ(公開市場操作)を実施したが、3月28日にさらなる強硬策として「連続指値オペ」を実施。債券売りで高まる金利上昇圧力を指値オペを3回くりかえしてなんとか0.25に抑え込んだ

Ⅲ. 「政府と日銀が日本経済を壊す2:補助金は毒薬、低金利は麻薬」

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島田晴雄が世界情勢を語る「しまはる塾」でお伝えしている様々な事象を、さらに詳しくペーパーで解説します。次から次へと”玉手箱”を開いて参りま…

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