耀綺 夜空(かがやきよぞら)

🛍️真っ白な何もないところに文章を綴り表現する。そうやって情景が浮かび、共感をどれだけし…

耀綺 夜空(かがやきよぞら)

🛍️真っ白な何もないところに文章を綴り表現する。そうやって情景が浮かび、共感をどれだけしていただけるだろうか。 そしてみなさんの文章を読むと、時間を忘れるくらいに楽しいです!

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【小説】月が見えますかvol.3

 シャワーを浴びて、一息ついてスマホを見た後に、タバコを吸った。  そんな時、ソファの上に置いたスマホが少し振動した。  梶木翔馬は、スマホの画面を開いた。 「horse woodさん、はじめまして。 コメントありがとうございます。 そうですね、女性の主人公もそうですが、好きになってしまった男性も繊細で優しいが故にという思いがありますね」と、コメントの返事が届いた。 horse woodは、梶木のユーザーネームだ。  モフールンというそのユーザーネームから届いたコメントの返事

    • 【ショートストーリー】お姉ちゃん

       春は蝶々を捕まえて、夏は虫網で蝉やバッタを捕まえて、秋はコオロギを捕まえて虫ケースに土を入れて玄関に置いてコオロギの音色を子供心に楽しんでいた。  近くに同じくらいの子供がいなかったから。  幼稚園に通いたかったのに、引っ越して来たのが4月も過ぎていて入園をのがしてしまったらしい。だから友達は自然に住む生き物たちだ。でもこちらが何をしても痛いだの、どうだ?とも、当たり前だけれど喋ってはくれない。  妹がほしかった。  たまに、日曜日になると母の妹が家に来ていた。 息子を連れ

      • 2024.4.14

         朝6時半に目が覚めた。  休日だというのに。  というのも部屋が変わってベッドも変わって、あの旅行に行った時の疲れているのになかなか寝れない、そんな感じに似ている。  それに、使い始めた置き時計の音が妙に気になって深夜だというのになかなか寝付けなかった。  何度も目が覚めて気づくとカーテン越しに朝日が眩しくて眠気が覚めた。 「そっか、この窓東北東向きだからだ」と呟く。  朝は、トーストに目玉焼きとレタスをのせて、温かいコーヒーといただいた。  昨日に前日から1日を細分化して

        • 学生服

           今朝は、先日と10℃も低い気温で、もう着ないだろうと、少し奥に掛けていたジャケットを手に取り家を出た。寒くて慌てて着る。  車に乗って仕事に向かうと、一つ目の信号が赤になった。  道沿いには大きく枝を広げ豪華絢爛に咲き誇る桜は、先日夕方に見た白い桜と昼間に見るピンク色に今朝の白と少し濃いめのピンクのコントラストになって、時間によって色が違って見える。  そんな桜の下で信号待ちしている自転車に乗った男子高校生の制服と鞄が新しくまだ馴染んでない感じが初々しい。  そういえば、高

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        【小説】月が見えますかvol.3

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        • 三都メリー物語
          23本
        • 『綺麗に並べるということ』
          5本
        • 相手のことを知ると言うこと
          11本
        • 『私の時間』
          16本
        • 『あのこたちは、どこに』
          18本

        記事

          桜道

           朝6時に起床。少し肌寒い。 ベランダの窓から外を眺めると、湿った空に強い風の中、優美な薄ピンクの満開の桜が大きく揺れていた。それは、厳しい冬を耐えぬいた力強さを見せているかのようにも思えた。  車で仕事に向かった。時々強風で車が揺れた。道には風で飛ばされて三角コーンが道の真ん中にあったりする。少し運転がこわくなって 「こんな状況なので、休みます」 なんてありえないか、そう心の中で呟いた。  仕事場に着くと、 「この前、◯◯の店で食事してたでしょ」と、あまりプライベートの話

          【小説】好きの方向 vol.14

           その日のアスファルトの道路が白く、歩道に生えている草も霜が降りて真っ白になっている。2月の冬の朝は、氷点下2℃の気温だ。  午後になって陽が差しかかっても気温は5℃にしか上がらなかった。  滋田桜子がアルバイトをして働いているこの倉庫の中も、コンクリートが敷きすめられて地面からの冷えが、氷の上を歩いているかのような冷たさだった。ボーリング場のレーンのような長い棚が相変わらず幾重にも並び、この日も寒さに耐えながら桜子は、皆から遅れをとるまいと気にかけながら作業に取り組んだ。

          【小説】好きの方向 vol.14

          体力はいかがなもの

          今年は10月12日の朝の8時頃ツバメたちが電線に集まり一斉に飛び立ったと記事で読んだ。  案外夏が過ぎてもいるもんだなと思った。ツバメの姿をいち早く見ると、夏が来たなと思う瞬間があるから。  最近読書をすることが自分としてなくなってきている。そんなこともあって、休日電車に乗って読書をすることにした。するとその本のストーリーにどんどん入っていける。スマホなんて全く手に取らず。  駅に降りて、オシャレなパン屋でスコーンを買って、少し歩いてまた駅で電車を待つ間に読書をする。  コー

          【ショートストーリー】フォローしているんですよ

           川沿いの生える草にススキが目立つようになった。その光景は店内の大きなガラス越しから見えた。店内にも陽が差して、須磨田ルナは、眩しいと思った。 「いらっしゃいませ」アイビーのスリーピースのスーツを着た七三分けのツーブロックでパーマをかけた若い男性が対応した。 「株を現金化しにきました」ルナが言うと、 「分かりました。では、こちらの方にお掛けください」とその男性が席を案内した。  その男性の少しかすれた声に特徴があった。この声って聞いたことがある。  そうだ!最近人気急上昇のア

          【ショートストーリー】フォローしているんですよ

          お疲れさま

           仕事の休憩時間に女性ロッカーで、入り口近くのロッカーがあるその女性は、いつもそこに座ってスマホをみている。 「お疲れさまです」いつもそれだけ、私は言うと、 「お疲れさまです」と明るくそう言って返してくれる。  そんなに話しはしないが、彼女の方が若くそして先輩である。    仕事中、上司が 「〇〇さんが、今日で辞めるから、次から〇〇さんの仕事に入って」と、隣の女性に言った。  〇〇さんってロッカーで挨拶する女性だった。  その日も 「お疲れさま」と挨拶をした お疲れさまの声が

          月、自販機、猫

           残業を終え、外を出ると夜の空になっていた。  車に乗ると、夏のムッとした空気と違って冷たい。  エンジンをかけて走らせ窓を開けると、冷たい風が車の中を爽快にする。そんな風は少し湿度を含んだ秋の香りがした。  この時間は、赤信号に合うことが少なく走れた。  一度だけ信号が赤になって止まっていると、ヘッドライトが前方の車体に反射してフロントガラスが明るかったのか、カメムシが止まった。カメムシはフロントガラスの真ん中に歩いていく。  運転中のど真ん中、カメムシが気になって運転し

          【小説】好きの方向vol.13

           歩道を歩く人々は、今の空のように黒く分厚いアウターを着て寒いせいか身を屈めるようにして歩いている。そんな人々が、忙しく歩いているように見えるのは年の瀬も近いせいだろうかと滋田桜子は、バスの窓越しから見て思った。  バスを降りて、電車の改札口を通ってホームに上がると、同じ軽音のサークルの宇田が待っていてくれた。 「店の予約は、里中先輩がしてくれてるんだよね」 「そうだよ」  電車が来たので、乗った。次の駅なので座らなかった。  電車は、次の駅についた。  改札口を出ると、里中

          【小説】好きの方向vol.13

          2023.9.28

           昨日、仕事が終わって家に着くと、家の猫が出迎えてくれた。洗濯物を取り込んで、植木に水を与え終えると、前足を揃えてちょこんと座って、こちらを見つめてかまってほしいなアピール。  「うん、わかった。お腹空いてるよね」と、言いながらテレビのリモコンを片手に持ってスイッチをオンにして、 「ご飯だね」と言って猫を見ると、またもや前足を揃えてちょこんと座ってこちらを見ている。その目の様子がいつもと違っていた。  片方の目が痛そうにしていた。  大変だー。とにかく猫に餌を。食事欲はあった

          【ショートストーリー】梨と上司

           仕事をしている時、別の部署の女性の上司の鎌本さんの実家が梨農園ということで少し安くなるらしいので、 「どうですか?」と、訊かれた。  先日スーパーで売っている梨の値段が高くて、「夏の終わり」と頭に思い浮かべる物で甘くてみずみずしい梨は、今年は食べずに終わってしまうのかと岸野華絵は思っていた矢先のことだった。  仕事なのにそんな仕事以外の話を。上司だから出来ることかな。  ある日、 「またそんな事を言って、勘弁してくださいよ」華絵の担当の上司は、頭が上がらないようだ。電話

          【ショートストーリー】梨と上司

          【小説】好きの方向vol.12

           近くを通る店のほとんどは、ハロウィンの飾りからクリスマス仕様に塗り替えられていた。  時々吹く風は、滋田桜子のアイビー色のロングコートの裾をなびかせた。  大学を通う駅の改札口を通って、駅のホームで電車を待った。  あの手紙を里中先輩は、読んでくれたのかな?    軽音部のサークルの部費を渡す時、桜子は封筒の中に部費のお金を入れるのと一緒に手紙もいつも中に添えていた。「好き」や「愛してます」的なことは書かないと自分なりに心に決めていた。    あれ出来たらいいのにな〜って、

          【小説】好きの方向vol.12

          【ショートストーリー】そんな日が来る

          まるで白く長く伸びたベールが、天高い空になびいているかのようにみえる。もう、夏ではないことを知っているのか桜の葉はやや赤みを帯びて、風が吹くたびにその数枚の葉たちが落ちていく。 柏台みりが出勤するのに運転する車は、信号が赤になって停車中だ。この信号にひっかかると、この先の三差路で渋滞にあってしまう可能性が大きい。 信号は、青になって少しスピードを上げた。 やはり渋滞だった。ブレーキを踏み続けてもう、15分が経つ。みりの車の前方を走る高級車に見覚えがあった。 確か

          有料
          300

          【ショートストーリー】そんな日が来る

          2023.9.21

           今朝、強い風でベランダの窓からピューピュー音がしていた。  台風でもないのにこんな風が強いのは、もしかして冬の訪れを知らせる「木枯らし1号」かと思ったが、調べてみると「木枯らし1号」は、その年にもよるが、おそらく10月半ばから11月末なのだそうだ。なんだ、ただの風だったのか。  しかしながらこのところ厚い雲に覆われて、一時期すごい豪雨だったりする。  桜の葉は、徐々に散り始めていると言うのに、この前の日曜日にはまだツクヅクボウシが鳴いていた。  朝は、つい時間がない。ならル