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随筆 レモン

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現在創作についての考えと理系生活と執筆の両立について語るエッセイ発売中。駄文は承知の上、しかしあえて価格をつける。良質な作品が安価で買い叩かれる世の中への問題提起の一作
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人間とはなにか

人間とはなにか

態度がはっきりしなくぼんやり生きてた私と、チャキチャキ手際のよく頭も回る父の関係は、常に緊張状態にあった。

私のノロマさが父の許容範囲であるときは束の間の平穏があり、それをひょんなことで超えたときは私が一方的に怒られた。

モゴモゴと思ったことをハッキリ言えなかった私は押されるばかりで言い訳も言えず、そんな姿を見て父はさらに苛立ちが募ったに違いない。

ところで、その父が死んだ。私が大学四年生に

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児童文学とか絵本とか🦊

児童文学とか絵本とか🦊

児童文学だからといって、理解するに易しいとは限らない。刻一刻と成長する子供たちに、限られた時間の中で質の良い作品を触れさせてあげたいと、厳選されて作品が教科書には載せられているだろうと推察する。

今話題になっているごんぎつねの話をしようと思ってヘッダー画像も作ったが、実のところあまり覚えていない。償いをしようと高齢男性の家の前にどんぐりとかを持っていっていた狐がすれ違いによって撃たれた話……もは

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もやもや。

もやもや。

最近の若者の流行を知りたいと呟いたら、流行ばかりに囚われる人はやっていけないとか、流行りに乗っかって何でも書けばいいもんじゃないとありがた〜いアドバイスをいただいたんですけども。

え? 創作者の皆さんって流行の研究そんなにしないの?

エンタメだってお仕事なんだから、なにが世間一般に受け入れられているか知らないことには始まらなくはないですか。知ってから自分の作品に取り入れるか入れないか決めればい

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レモン -25

「月が綺麗ですね」がなぜ「好きです」になるのか考えてみた言わずもがな、月が綺麗というのは発話者の主観である。ただ、主観とはいえ、「え、今日の月はそんなに綺麗じゃないのでは?」とか「そもそも曇ってて月見えないやん」というツッコミが入る可能性もあるので、主観のなかでは客観的に検証可能な部類だと思う。

一方、「(あなたが)好きです」というのは主観も主観……というか、発話者からお相手にベクトルが向いてい

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レモン -24

レモン -24

芸術には確かにパトロンが必要なのかもしれない幸いなことに人脈に恵まれ、憧れの同人誌デビューなどを果たした昨年。いのしし年の今年は私は飛躍できるだろうか。

文理両道を掲げて走ってきたけれど、どうも気持ちが揺らいで落ち着かない。私は元来要領の悪い、不器用な性格である。「何事もこなす人」という大学に入る前の私への人物評は、私のころころ変わる興味に割ける時間がたっぷりあったからであって、一人暮らしは楽じ

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レモン -23

レモン -23

物書きが猫好きになるのも道理だな、と思ったりする。
今回はちょっと過激なことを言うので以下から課金制とする。

文学とは、文芸とは

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レモン -1

完全な球体ではないレモンの形をどうやって描写すべきか迷う。幾何学的に述べるべきか、ふらっと席を立ったときになんとはなしに揺れる独特な不安定さを述べればいいのか。

そういえば、レモンを生で見たことは最近あまりない。スーパーで見たかもしれないが、キャベツを買いたい私に黄色くてちいさいそれが何らかの意味を持って目に映ったかはわからない。

レモンティー、飲みたくなってきた。普段はミルクティーがお気に入

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レモン -2

レモンティーはお預けで餃子を食べてきた。人間は忘れるのも早い。

楽しみにしていたレモンティーを忘れ、ふいに入った予定で友人と餃子を作ってはブログにあげ、一人になりその楽しさが段々フェードアウトしていくと立ち上がってくる嫌な予定日。

私は留年してしまうのだろうか。宣告されるまでもう一週間もない。

現実逃避に小説を書くことにした。場所は、元々行くはずだった喫茶店。そこでレモンティーを頼もうと思う

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レモン -3

もうやめにしよう。どうも私は、予定をたてるとそうではない行動をとってしまう性(さが)らしい。

レモンに関してだらだら書き連ねた駄文に価格設定をしたのは単なる気まぐれである。

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レモン -4

口呼吸ができるのは人間だけと聞いたことがある。

サルは言語を理解する能力はあるが、声帯を器用に震わすことができないから言語を”話す”ことはできないそうだ。

口呼吸は進化なのか退化なのか……というのも鼻が年中詰まっている私にとって、寝起きの口の渇きは本当に問題だ。せっかくの快晴でも気分が萎える。

引っ越しの準備を徐々に進めていかねばならない。三年ものあいだ掃除という掃除をサボってきたつけを払わ

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レモン -5

創作者にとって他者の言葉はどれだけ聞くべきだろうか。

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レモン -6

レモン -6

キャンペーンで当たった商品が届いたので飲む。お酒である。

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レモン -7

モモという本を読んだことがある。

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レモン -8

回想
いつだったか覚えていないのだが、家族でキャンプにいったときにえらく空が近かった光景を見た。星が砂粒のように一面に広がっていながら、それら一つ一つが瞬いていた。

それ以降私は天文学に興味を持った。法律を勉強した父が社会の仕組みを教えようとして小さい私に課した「一日一回疑問を見つける」という課題に、私は自然の「何故」ばかりぶつけた。

父は農学博士でもあったから、理系の質問にも答えようとはして

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