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『地獄先生ぬ~べ~』アニメ版第1~2話感想 原作から大胆な構成改変、あと19時半からエロあるよ(笑)


◆地獄先生ぬ~べ~

『地獄先生ぬ~べ~』がめでたいことに生誕30周年を迎えたという。

ぼくは当時の世代ではないのだが、クソガキ時代に何らかの機会でアニメ版を視聴した記憶がある。原作も「河童と鉄棒」の回(ジャンプコミックス版1巻収録とのこと)だけは従兄弟から借りたのだったろうか、何故か読んだ記憶があるのだが、「あれっ?アニメとまんがおなじやんけ」と不思議に思っていた。
なにも知らない幼少期は「アニメも漫画家が作っているんだ!スゲー!」と勘違いしていた人は多いのではないだろうか。絵柄が原作に忠実なアニメならそんな勘違いは猶更あるあるだと思う。是非共感されてほしいあるあるです。

実は不思議なことにジャンプ漫画だとは全く意識していなかった。ジャンプの要素がどんなものなのかまだ分かっていなかったからかもしれない。あとは、ぬ~べ~が成年済の教師だからとか、バトルよりもホラー寄りの要素だったからなのだろうか?「えっ!?お前ジャンプ出身だったの!?」と後々驚いた漫画ランキング№2なのは間違いない。ちなみにバリバリ最強№1は『ラッキーマン』である。素でコロコロ連載だと思っていました。

そういうわけで、この30周年という機にアニメ版が最強ジャンプチャンネルで毎週木金配信となった。『ぬ~べ~』はそこまで多く語れないのだが、以前告知されたときはこりゃあラッキークッキー八代亜紀というわけで結構楽しみにしていた。やはり面白かった。で、せっかくだから原作もどんなものか読んでみた結果。

これアニメと原作全然違うやんけ!!!!

◆第1話「恐怖の新学期!謎の鬼の手」

●90年代らしいホラーの雰囲気

物語はぬ~べ~こと鵺野鳴介が童守小学校5年3組担当として赴任されたところから物語は始まる。一方、クラスのひとり・広はどこからか囁く悪霊に悩まされているのもあってか、ドジをかますぬ~べ~への初印象はあまりよろしくなかった。

広は小学生組におけるもうひとりの主人公、リーダー的存在だ。
そのヴィジュアル通り、サッカーが似合うとても明るく活発な少年として振舞う印象が強かったのだが、このアニメ版第1話では悪霊の事情もあってか、あまり明るさを露見していなかったのがすごぶる意外だった。最初はこういうやつだったのか…

それにしても初回から独特な雰囲気があるアニメだ。
BGMがそこまで流れていないとか、校庭のくだりから既にホラーを予感させられる不穏な雰囲気だとか、セル画の色使いだとか、当時土曜19時半放送だったのが信じられないくらいに、ちょっとだけアングラティック。そんなにジャンプアニメっぽくない。同時期に放送されていた『エヴァ』に通じる、鈍色の雰囲気がある。
これは最初ぼくがジャンプ作品だと気付かなくてもおかしくないと思う。終盤の一転攻勢展開は如何にもジャンプやっているが。

初回としては「どんな作品なのか」がストレートに分かる。
バトル展開はそこまで面白くはないのだが、クリーチャーはちゃんとヤバいし、なによりそいつがどこにいるのか分からないのが恐怖を煽らせている。見えないってのはこえーなあ。

●原作との違い

原作第1話では広が転校生になっていた。
「超問題児」と呼ばれるほどお元気ボーイ。これだ。本来ぼくのイメージ通りだった広だ。転校生からスタートなのも意外な事実だったが。逆にぬ~べ~は既に童守小学校5年3組担当となっている。

個人的にはアニメ版のほうがしっくりくる導入だ。
ぬ~べ~が「謎の教師」としてしっくりくるからなのだろうか。いざ教室に入ればドジかますし、すごぶる気さくでとっつきやすい先生だったのだが。
とはいえ、原作の広が転校生という設定でも全然アリだ。読者は広視点でぬ~べ~のことを知り始めるという見方ができる。また、既に赴任している=他のクラスメイツはぬ~べ~のひみつを知っている、信頼を置かれ受け入れているという安心感も提供されている。ぬ~べ~の鬼の手はかっこよくあるのだが、禍々しさもあるからなあ。

しかし、『ぬ~べ~』って思っていたよりもコミカルなシーンが多いんだな。ホラー色はそこまで強めではない。ジャンプあるある退魔系漫画に近い。第1話時点だとコメディ:バトル:ホラー=4:3:3といった感じ。エッチ要素はまだない。

設定も展開も全く別物だ。敵が「九十九の足の蟲」から「肝狸」になっている。これは一体どういうことなのか?ジャンプでアニオリは別に珍しくないのだが、初回からフルスロットルだとは珍しい。ううんどういうことだ。

●ぬ~ぼ~

それもそのはず、読切版となる『地獄先生ぬ~ぼ~』がアニメ第1話の原作となっているのだ。

「ぬ~べ~」ではなく「ぬ~ぼ~」。
同名のお菓子ないしキャラクターが存在していたから名称変更されたのはファンの中では有名な話らしい。なんで「ぬ~ぼ~」という脱力感あるネーミングなんだろうか。キー坊みたいな語感?

読切版は2作あるのだが、そのうち2作目(ジャンプコミックス版は3巻収録、文庫版・電子版は2巻収録)が原作となっている。

連載版ではリサイクルされなかったのが勿体ないくらい脅威となっている。

オチはかなりコメディ。アニメ版もオチが「いやなんでパンチパーマねん」と視聴者にツッコませるものだったが、本来のホラー色を損なわせないように改変したのだろう。

何故アニメ第1話は読切版から持ってきたのだろうか。
別にその判断で全然構わない。ぼくは読切版から輸入された設定とかキャラとかそういうのが好きだし、なにより古参ぶれるからな。もう15年前になるアニメ版『鉄のラインバレル』も最終話で読切版とのクロスオーヴァーやっててニヤリとさせられたし。
まあ、上述した通りぬ~べ~とは初めてでの出会いのほうが視聴者も食いつきやすいのかもしれないなあ。

当時のジャンプのアニメのページには第1話予告カットを添えつつ「原作とは違うストーリーになるウワサが…!?」みたいなアオリがついていたのかもしれない。

◆第2話「トイレの花子さんが出たぁ~っ!」

●作劇の幅広さをアッピル?

第9話「散歩する幽霊の巻」が原作となっている。
い、一気に飛んだなあ…

『ぬ~べ~』は基本一話完結形式なので、話はシャッフルしても構わないのだろう。放送リストを確認したところ、この後にまこと回(上述した「河童と鉄棒」のやつ)が放送される。

何故この回を持ってきたのか。
ひとつが、広の更なる掘り下げだとぼくは考えている。第1話では意外と暗いキャラだったのが、今回オチも含めて歳相応に調子に乗って振舞っている。「主役はぬ~べ~だけじゃないぞ!」と、視聴者に更なる印象を付けたかったと言えるかもしれない。

もうひとつが、作劇の幅広さアッピル。
原作はこの第9話に至るまでは悪意的存在がほとんどなのだが、敵意を持たない悲しい過去を持つ地縛霊というのは意表を突いてきた。
もうここからは完全にぼくの私見なのでてきとうに流してほしいのだが、「霊はわるいヤツだけじゃない」「バトルだけではなく人情ものもやれる」と主張したかったのかもしれない。
人情ものからバトルものへシフトした『幽☆遊☆白書』の逆パターンっぽい気がする。

第1話よりも面白かった。なによりオチが秀逸。
サブタイトルがめちゃくちゃ東映アニメーションらしいのだが、主役はトイレの花子さん…と思わせてまさかの地縛霊だったというミスリード案件。
とはいえ、「あれっ?花子さんは?」「ごめーん出すの忘れちゃった」とトイレに水を流すような猿空間行きにはせず、最後にマジで花子さんを出してサブタイ回収していくプロットが秀逸。しかも花子さんマジこえーよ。びっくり映像だよ。

●悲劇を彩る原作昇華演出

第9話のみが原作。よってページ数は週刊連載特有の19ページ。とても短い。だからと言って引き延ばしを確信させられるダルさは不思議にも全然なかった。
本アニメ版のテンポは遅すぎず急ぎすぎず、比較的ゆったりめなのだが、これでも全然丁度良かった。ホラーものはあまりテンポを意識せずに見られるからなのかなあ。話がぐだぐだしていれば別問題だが、丁度良い。

アニオリと言える追加シーンは多い。最も顕著たるものが、地縛霊に悲しい過去だ。
この子は頭巾をつけていた時点でどんなバックボーンを背負っているのか察せられるのだが、やはり戦争の被害者だった。原作では2コマ(1ページの上半分)のみで、ぬ~べ~が説明していたのだが、アニメ版は戦争当時の惨事を丁寧に映像化していた。

これは極めて正しい判断だ。
空襲の中、学校のトイレに逃げ込むも、不幸に燃え尽き死んでしまった。しかも地縛霊となった今は「あかないよ…」と苦しむ。こんな悲しい過去と有様を見せられたら「ぬ~べ~救ってあげて!」と素直に感情移入できるつくりになっている。
勿論原作は序盤中の序盤だけにこういった細かいシーンに数ページ割く余裕なんてなかっただろうし(『ぬ~べ~』はアニメ化決定前はガチで打ち切りスレスレだったらしいからなあ)、二次創作とも言えるアニメで原作昇華してくれるのは愛されたアニメ化の証拠だ。

というわけでホラーと思わせて良い話・人情回だったわけだが、そうだと分かる前はちゃんとホラーのつくりになっている。特に夜の学校の美術背景は地味に押さえておきたい。
セル画ならではの妖しさ、普段通っている学校が別の世界と化したようなコワイ雰囲気になっているのも、アニメならではの見所さんだ。

また、原作者・真倉先生が作中に登場。
普段は自画像だなんてあまり気に留めていないのだが、この前『すすめ!ジャンプへっぽこ探検隊!』のぬ~べ~回を読んだので「真倉先生じゃん!!」と解釈通りだった。原作者が作中に登場するのは、『スラムダンク』におけるDr.T(≒井上雄彦先生)もだな。最近そういうのめっぽう少なくなっちゃったな。

●19時半からパンツ

トラウマホラーとジャンプパイレーツ出張余裕なエロが『ぬ~べ~』を支える…ある意味"最強"だ。

というわけで、『ぬ~べ~』のエロ要素は序盤から出ている。EDはB'zが歌う「ミエナイチカラ」と共に流れた映像にミズーギィが映っているので見ていて変な気持ちにさせられたわけだが、このアニメ版第2話でも原作同様郷子のパンツが映っていた。

…………え、、あ、の、その。
これマジで19時半に流してたの??
お茶の間フリーズ案件じゃねえの?PTAとBPOがピーポー通報案件なんじゃねえの??よく流せたなあ…と感心するばかりである。
まあこの後の地縛霊救済がとてもいい話なので「まあいいか!!よろしくなあ!」の精神で流せられたガバ対応だったのかもしれない。「注目すべきはこの人情話ですよ!」と説得できそうだし。

***

この記事を上げる頃には既に3・4話も配信済。
なのでそれらは(文字数4000オーヴァーしちゃったし)割愛しよう………と思ったのだが、第4話がとても面白かったので別記事としてまとめることにする。もっと言うなら、当時アンケが取れたのがすごぶる理解できる回だった。

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