見出し画像

仏教とアイアンマンと2024年の目標

早いものでNatureも創業して、10年目に入ったのだが、会社を経営する上でのこの数年間の僕の最大の関心ごとは、「知覚と反応の間」をどう生きるかということに集約されているんじゃないかと思う。

仏教では、「心による行為」を以下の4つに分類し、苦悩を生み出す、渇望や嫌悪の連鎖を断ち切ることで解脱することが説く。

1. 知覚(意識)
2. 認識(評価・識別)
3. 感覚(快・不快)
4. 反応(好き->渇望、嫌い->嫌悪)

些細なことのようでこの知覚と反応のわずか一瞬をどう生きるのかということが、人の運命を左右するくらい重要なテーマではないかと思う。知覚から反応という自分の生態反応はその後の思考に強く影響を与える。それが運命を左右するほど重要なテーマであることは、マザーテレサの有名な以下の言葉でとてもうまく表現されている。

思考に気をつけなさい、それはいつか言葉になるから。
言葉に気をつけなさい、それはいつか行動になるから。
行動に気をつけなさい、それはいつか習慣になるから。
習慣に気をつけなさい、それはいつか性格になるから。
性格に気をつけなさい、それはいつか運命になるから。

マザーテレサ


人間という生物は悲しいかな自己という幻想に閉じ込められてしまいがちではあるが、一度その外に目を向け観察者の視点を持ち始めると、知覚に対する反応というものがその人の宇宙という全体のつながりの中での個としての価値なのではなかろうかと感じ始める。

これは釈迦のみならず、アインシュタインはシュレーティンガーのような超一流の物理学者さえも説いている。

ティール組織やソース理論でも提唱されている通り、組織のリーダーの振る舞いというのは驚くほど組織に伝播する。このことを肝に据えて、組織構造やビジョンも大切ではあるが、ここ数年間は自分の反応を磨くことに挑戦してきた。

特に力を入れてきたのが、「瞑想」と「有酸素運動」であり、日課として継続してきた。これはストレスをうまくマネージし、心の状態を安定させるための手段だと思っていた。

中村天風の哲学


中村天風という方をご存知だろうか?

彼は、波乱の人生を生きた明治生まれの思想家で松下幸之助や稲盛和夫など戦後の名だたる起業家にも支持されてきた。最近では、メジャーリーガーの大谷翔平も高校時代の監督に薦められて中村天風の本を読み、それ依頼大きな影響を受けているという。Wikipediaでは、中村天風という人は以下のように紹介されている。

学生時代に喧嘩で相手を刺殺、日清日露戦争当時は軍事探偵として活動する。戦後結核にかかり、ニューソート作家の著作に感銘を受けて渡米し、世界を遍歴。インドでのヨーガ修行を経て健康を回復し悟りを得たとされる。日本に帰国後、一時は実業界で成功を収めるも、自身の経験と悟りを伝えるために講演活動を開始。

Wikipedia

僕は、電力会社の役員の方からのご紹介で中村天風という人を知り、彼の「運命を拓く ~ 天風瞑想録」という本を読んだ。

「実在意識」により「瞑想」と「有酸素運動」を習慣化させることは、心から雑念を追い払い「潜在意識」を安定的に機能させることにつながる。天風思想では、これが実は宇宙という全体と自分をしなやかに接続する行為であるという。

アイアンマンへの挑戦


毎日の有酸素運動を習慣化させる中で、何か目標を持って取り組んだ方がやり甲斐も保てて、継続性があがるのではないかと思って、トライアスロンを始めることにした。

最初は目標にすることも憚られていたが、スイム、バイク、ランの練習距離を少しずつ伸ばしていくうちに自分でもアイアンマンに挑戦できるんじゃないかという気持ちが生まれ始めた。

そう思ってからはもうひたすらにトレーンングを継続した。水泳の距離を少しずつ伸ばして3km泳いだり、バイクでも広島の実家から愛媛の道後温泉まで300km近い距離を往復したり、フルマラソンにチャレンジしたり、下準備はできる限り実行した。

おかげで、トライアスロンを始めてから10ヶ月になる今年の6月に無事にケアンズでアイアンマンレースを完走することができた。

かなり時間はかかってしまったが、目標としていた完走を達成できたので自分としては満足な結果だった(アイアンマンの参加者の平均的なトレージング時間が15~20時間/週であるのに対して、僕のトレージング時間は5~6時間/週程度。これはアイアンマン完走に必要な最低ラインのトレーニング時間と言われている)。

でも、甘かった。

翌日の筋疲労は想定よりはずっと軽かったのだが、バイクの練習不足が顕著で初めて180kmという距離を連続で完走した結果、腰のインナーマッスルを痛めてしまい、完治に1ヶ月以上かかってしまった。やはり、スイム3.8km、バイク180km、ラン42.2kmというコースを1日で完走することで身体に与えるダメージは小さくなかった。

Ironman Cairns 2023 (June 18, 2023)

完走直後の夜は、交感神経が活性化され、身体が極度の緊張状態にあり一睡もできなかった。

アイアンマンとそのためのトレーニングを経験することで、有酸素運動の心地よさを心底経験し、人間の身体の持つポテンシャルには感服する限りではあったが、「潜在意識のコントロール」という意味では、過度な運動がいかに自律神経を乱すかということがわかったくらいで「瞑想体験」のような深い学びは得られなかったように思う。何事も程々が肝要だということだろうか。

それ以上にいちばんの驚きは、バイクの180kmを完走し終えた時にはもう限界という感じだったが、意外にもランは快調にスタートできて、使う筋肉がここまで違うものかということだった。

観察することの重要さ


やはり、潜在意識のコントロールには、意識、認識、感覚、反応という自分の心の動きを客観的に観察し、渇望や嫌悪の連鎖を断ち切ることが需要だと痛感した。その点において、瞑想は非常に有効な手段だと思う。

瞑想を日常に取り入れることでの自分にとっての大きな変化は自分の状態を積極的に観察する習慣がついたことだ。

これまで意志の力で現実をねじ伏せようとなんともスポ根魂の思考をすることが習慣化されて生きてきていたのだが、肉体のピークを超える年齢に差し掛かり、どんなに強い意志も宇宙(物理)の法則には抗えないことを痛感する中で出会ったのが、「瞑想」だった。

それまではマッサージにいくたびに胸鎖乳突筋の異様な凝りを指摘されてばかりいたんだが、瞑想をすることで少し身体に変化が起き始めたのだ。毎週通うマッサージでその変化を他人にも実感してもらうことで、自分の思考の変化が肉体に影響し始めていることを明確に確認できた。

人間には調子の波があるが、それは必ずしもその個人が怠惰であることが原因ではない。自分が自然に感じる調子というのは身体からのシグナルなのだ。自分の身体を観察し、その因果を追求していくと自分のどういう行動がどういう身体的な反応に結びついているのか少しずつ見えてくる。

早起きして、瞑想の時間をしっかりとり、ランニングとストレッチまでしっかり行えば身体的には非常に良い状態で1日を過ごすことができるし、それが知覚と反応の間にゆとりを生む。そして、周りに対して大らかな気持ちで接することみ繋がる。

アルコールの怖さを痛感


そんなことを考えながら、瞑想と有酸素運動の日課をこなしていたが、昨年の後半から明らかに運動のパフォーマンスが低下し、体調にも異変が生じていた。

最初は、アイアンマンでのダメージが蓄積されていて、運動の強度自体は落としているものの肉体的に疲労が蓄積されていて、いろんな不調和を起こしているものだと思っていた。数年間風邪を引くようなことはなかったのにそれが半年の間に2度も起きたり、他にも足腰などの身体中に不具合が起きてトレーニングを予定通りこなせない日が何度もあった。

自分の体調に大きな影響を与える要因を分析したところ、僕の場合は、明らかに、①仕事の忙しさ、②運動の強度、③アルコール摂取量、が影響していることがわかった。

仕事については、これまでの社会人経験を振り返っても体調を崩すほどのハードワークではなかったし、運動についてもアイアンマン以降は過度なトレーニングは控えていた。唯一、昨年の後半にかけていて増えていたのはアルコールの摂取量だった。

最近、まさに「自然との共生」の産物とも言えるワインの面白さに目覚めて、余市町を訪れたり、ティスティングイベントに足繁くかよったり、気になるワインを買って一人で飲んだりと、飲酒の量が増えてしまっていた。さらに良くなかったのが、カロリーをコントロールしているせいでカロリーの高いアルコールを摂取する日はみっちりトレーニングをしていたのでダブルで肝臓に負担がかかっていた。

余市にてDomaine Takahikoの曽我さんと

2024年の目標


なんとも、瞑想修行にアイアンマンと挑戦し、自律神経を整えて、自分の精神状態を安定させようとこれだけの労力と時間をかけてたどり着いたのが、「過度なアルコール摂取は控えましょう」という誰でもわかっている結論で笑えてしまうが、飲み過ぎに注意しつつ、「瞑想」と「トレーニング」のルーティンを初志貫徹で3年間継続して(今年の9月末で丸3年になる)、昨年末に申し込んだ9月のアイアンマン@北海道(なんと8年ぶりでの日本開催!)では12時間台で完走したい。

幸いにも瞑想とトレーニングのルーティンは習慣化できているし、アイアンマンも申し込み済みなので、今年の目標は「飲み過ぎない!」としたい(笑)。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?