電力小売事業から撤退し、エネルギーマネジメント事業に注力します

昨年3月から新規事業として取り組んでいた電力小売事業から撤退し、エネルギーマネジメント(エネマネ)事業に注力することに致しました。Natureスマート電気をご利用いただいておりますお客様にはご迷惑をおかけして本当に申し訳ない気持ちで一杯です。撤退という結末になったこと忸怩たる思いです。今後は並行して進めていた戸建てのエネマネ事業に注力し、脱炭素化に貢献すべく頑張っていきたいと思います​​。

電力小売事業から撤退の背景

カーボンニュートラルの要となる再生可能エネルギーの導入量を増やすためには、電力の供給と併せて需要を制御する仕組みが必要という思いから、自ら電力小売事業へ参入し、市場価格連動型の電気料金プランやスマートリモコンNature Remoを使ったデマンドレスポンス(需要調整の仕組み)を展開して参りました。

しかしながら事業環境が大きく急変し、今回撤退の判断に至ったのですが、背景としては以下の通りになります。

①足元では、コロナからの経済復旧によるLNG不足、ウクライナ戦争、地震という出来事が立て続けに起こり、電力マーケット(JEPX)が電気代を数倍にあげないと採算が取れないような高値で推移している。Natureが、今の電気代のままを維持するために固定電源の調達や電力先物の活用などのリスクヘッジ策を検討していたが、根本的な解決に繋がらなかった。

②向こう数年間についても、発電所の限界費用ベースで入札価格が決定されるJEPXにおいては、現在のような高い水準で電力価格が推移する見込み(昨年12月にガス火力発電所の入札においてLNGスポット価格に基づく限界費用の算出が認められたことによる)

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③一方で、グローバルでカーボンニュートラルの流れによる家庭向け太陽光発電普及の加速、国内でのEVシフトの加速、4月1日からの計量法の改訂と戸建ての脱炭素化の方は流れが加速

④戸建ての脱炭素化は、ロードマップの次のステップとして計画されており、そこをしっかり取り組むためには、今、選択と集中が必要

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事業継続が困難な電力小売事業からは撤退するものの、スマートリモコンNature Remoを使ったデマンドレスポンス(DR)の仕組みは電力小売事業者へサービスとして展開していきます。

Natureが、電力小売事業まで自社で内製化したことで日本で初めて大規模にエアコンのDRを実現し、有効な結果が示せたことは大きな財産ですし、それは必ず今後の展開に活きると信じています。今後は、デマンドレスポンスの制御対象機器をエコキュートやEVステーションまで拡大していきたいと思います。

今後はエネマネ事業に注力

今後、Natureとしては自社の強みを活かせる以下のエネマネ事業に注力していく方針です。

①DRのサービス展開
②戸建てのエネマネ

①DRのサービス展開については、前述の通りです。②戸建てのエネマネについては、Natureのこれまで培ってきた強みとミッションを実現するために今何をやるべきかを再度見つめなおして辿り着きました。

Natureのこれまで培ってきた強みは、スマートホーム領域でのデザインを含めたユーザビリティです。

Natureの主力製品であるスマートリモコンNature Remoを発売したのは2017年10月でした。Nature Remoは、利便性・快適性を売りに発売から4年半で今50万台突破目前まで来ました。最近発表したApple Watchへの対応も好評でAmazonのRatingもここ2年間目指してきた4.3を今月超えました。この数字は、AmazonのスマートスピーカーのAmazon Echoの評価と同等です。

まずは、戸建て住宅の脱炭素化から貢献したいと思います。日本では、戸建て住宅の世帯数は全世帯の約半分です。2019年時点ではわずか9%だった戸建ての太陽光発電の導入率ですが、今後全世帯に導入されるのが当たり前になるでしょう。東京都では、すでに新築で太陽光発電設置は義務化されることも検討されていますし、米国のカリフォルニア州ではすでにそうなっています。

しかし、太陽光だけ導入しても発電と消費のタイミングがズレるので、自宅の太陽光で発電した電気のわずか30%程度しか使えません。そこで重要なのが、エコキュートやEVなどのエネルギーマネジメントリソースを合わせて導入することです。

そのためには発電に合わせた機器を自動で制御(Automation)することが必要になります。それをNatureのエネルギーマネジメントデバイスであるNature Remo Eで実現していきます。Nature Remo Eは、Nature Remoで培ってきた「IoT x Automation」の基盤技術をエネルギーマネジメントの領域に転用することで実現し、2019年末に発売したホームエネルギーマネジメント(HEMS)の商品です。

戸建ての脱炭素が実現できる環境は最近ようやく整いました。今では、太陽光発電システムを導入することで電気の利用にかかるコストを下げることができます。エコキュートは熱効率が良いので、ガスの給湯器から変えることにコストメリットがあります(機器の初期費用も回収可能)。EVは、自動車として購入されるのでエネルギーマネジメントとしての限界費用(その目的で使用するためにかかるコスト)はゼロです。

戸建ての脱炭素化に必要な役者はすでに揃いましたが、欠けているのはそれぞれのピースを繋ぎ合わせて最適制御する仕組みです。そこをNatureは、Nature Remo Eを活用することで実現しようとしています。

カーボンニュートラルを実現するためには、エネルギーミックスのうち太陽光発電と風力発電を合わせて50%以上に引き上げる必要があると言われています。太陽光も風力も発電量が変動するので、その変動を吸収する仕組みが必要です。Nature Remo Eが普及することで、繋がったエコキュート、EVなどを発電側の変動に合わせて制御することもできますし、将来的には電気を個人間で売買する仕組みだって作れるのです。

気候変動の危機が差し迫っている

足元の気候変動の課題は日増しにその深刻さを増してます。地球の歴史を振り返ってみても氷河期でと今の平均気温の差はわずか6度しかありません。だから、2度の温度上昇は地球規模で考えるととてつもなく大きい数字なのです。

そして、気候変動において最も権威のあるIPCC(国連と世界気象機関により1988年に設立され、世界中の2500人以上の科学者の気候変動に関する研究成果をまとめて、問題解決に必要な政策を示している組織)でもこれまでの研究から、気候変動は、既に世界中の人々、生態系及び生計に影響を与えている、と明言していますし、「1.5度特別報告書」の中で以下を提言しています(環境省により纏められたIPCC「1.5度特別報告書の概要」より)。

・工業化以降、人間活動は約1.0℃の地球温暖化をもたらしている。
・現在の進行速度では、地球温暖化は2030~2050年に1.5℃に達する。
・CO2排出量が2030年までに45%削減され、2050年頃には正味ゼロに達する必要がある。
・地球温暖化を2℃、またはそれ以上ではなく1.5℃に抑制することには、明らかな便益がある。

毎年温室効果ガスが510億トン(二酸化炭素換算)増え続けていて、内訳は以下の通りです(ビル・ゲイツ「地球の未来のために僕が決断したこと」から抜粋)。

1. ものを作る:31%
2. 電気を使う:27%
3. ものを育てる:19%
4. 移動する:16%
5. 冷やしたり暖めたりする:7%

このうち「移動する」「冷やしたり温めたりする」を中心としたエリアも電化が進みます。電気にしてしまえば発電を脱炭素にすることで温室効果ガスの排出を抑制できるからです。つまり、発電をいかに脱炭素化にしていくかが最重要課題なのです。

だから、今、「自然との共生をドライブする」というミッションを掲げるNatureとして(創業経緯:どうしてNatureなのか。)、発電の脱炭素化に貢献することで我々人類が自然と共生できる社会を切り開きたい。

ミッションに共鳴する仲間が集まっている

幸いにも、今、Natureには創業以来一貫して掲げている「自然との共生をドライブする」というミッションに共感してくれる強力な仲間がどんどん集まってきています。

関西電力、Panasonicを通して、電力インフラの領域で20年以上のキャリアを積み、Natureで世界の電力インフラのアップデートをしていきたいと今月からジョインしてくれた中務を筆頭に、優秀なソフトウェアエンジニア、デザイナー、プロダクトマネージャーの入社がどんどん決まっています。

電力小売事業としては撤退になりますが、しっかり戸建ての脱炭素化を実現することで「自然との共生をドライブ」していきたいと思います。Natureのミッションに共感し、我々と電力インフラをアップデートしたい方は、ぜひお気軽にDMください。

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