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なんでNature Remoを作ったのか。

スマートホームを簡単に実現できるスマートリモコンNature Remoを最初に作りたいと思ったきっかけは、実は電力の需給調整だ

電力の世界は、あまり馴染みがない方も多いかもしれないが、僕は前職の三井物産で電力の事業開発をやっていた。途上国に長期出張で張り付いて、現地でどっぷり仕事をするTHE商社って感じの仕事だった。

投資銀行とか国際弁護士とかと事業のストラクチャーを作るというかなり理詰めの仕事をしながら、現地の政府関係者とか電力会社のキーマンに会うためにバティック(インドネシアの正装)着て部屋の前で何時間も待つというかなり泥臭い仕事をするというバランスがとても絶妙で、仕事はめちゃくちゃ楽しかった。

再生可能エネルギーのシフトを目指して

そういう電力の事業開発の仕事で、2011年3月にインドネシアの石炭鉱を小さなセスナ機で訪問する機会があった。その時、空から見た景色を今でも鮮明に覚えている。

ひっそりと佇む小さな村、その横に夥しいスケールで地面をえぐりとって広がる石炭鉱があった。現場では、想像を超えた規模の掘削機や輸送機が横たわっていて、小人のように見える炭鉱で働く人々がそれを操っていた。

この光景を見たとき、大きな違和感を覚えた。今まで、当然のように使っていた電気はこんな大きな犠牲があって生まれているのか。本当にそれでいいんだろうかと。

ホテルに帰ると、福島原発の事故のニュースがどこのチャンネルからも流れていた。そう、震災の直後だった。

石炭火力発電と原子力発電という今の電源供給の主力となっている供給源に疑問を持って、世の中がもっと分散化されたクリーンな電力にシフトできるようなビジネスを立ち上げたいと思ったのだ。

スタートアップとしてできること

でも、僕は子供の頃から自分で会社をやると決めていたし、ベンチャーで発電事業をいきなり手がけるのは現実的ではない。一方で、将来起業をする勉強のために総合商社に就職を決めたのだが、それまでは日本、アメリカ、スウェーデン、インドといろんなところでコンピューターサイエンスの勉強やインターンをしていた。

当時、特に興味を持って追いかけていたのはユビキタスネットワークだった。今の、IoTだ。

そういう背景もあって、電力の供給側の会社をいきなり立ち上げるのは難しいけど、IoTの製品を作って、需要側を制御することだったらベンチャーでもできるのではないかと着想した。エナノックというボストンのスタートアップがデマンドレスポンスという電力の需給調整サービスで成功していたことも知っていたのも大きかったと思う。

そこで、単一プロダクトで最大限の電力消費にアクセスできるものは何かと考えたときに、エアコンに行き着いた。

特に、日本のエアコンはほとんど赤外線リモコンが付いているので、それを代替できればほとんどのエアコンを操作できるはずだ、と。しかも、それは日本だけではなくて世界中で使える。

アメリカでスマートスピーカーに出会って

しかし、単純に需給調整の都合で商品を売ろうとしても、コンシューマーには響かない。このインターネットに繋がるスマートリモコンで何ができるのか。そこには明確に、2つの大きなベネフィットがあった。

1つは、家の外からでもエアコンを操作できること。僕は、自分が寒がりなので特に冬場にエアコンを外からつけて、暖かい部屋にかえることができれば最高だと思った。もう1つは、スマートスピーカーと家電をつなぐブリッジになること。

前者は、徐々に商品としては出始めていたが、UI/UXに課題があった。後者は、2014年の当時では、Amazon Echoが発売したばかりでまだそこまで話題にもなっていなかった。

僕は、MBAでボストンに留学していて、Amazonに就職が決まっていた友達が、当時知る人ぞ知るAmazon Echoを絶賛していた。僕は、Amazonのスピーカーについて酷くバカにしたあとで、でもやっぱりちょっと気になったので試しに買ってみた。使ってみると、なんと!音声認識が秀逸で驚いた。しかも、Belkinのスマートコンセントを使ってAlexaで操作したところ、かなり未来的でワクワクした。

そのとき、この流れは、世界的にくると確信した。赤外線だとコンセント以上にいろんな操作ができる、と。こうしてNature Remoのプロダクトのアイデアが生まれた。

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