母を5年前に亡くした。
突然、母は帰らない人になった。
最後の会話は
『ご飯が傷むから冷蔵庫に入れておいて。
　戸締りはしっかりね』
だった。
お中元を買いに行こうね。
って約束してたのに。
明日の夜は冷麦にしてね。
って約束したのに。
いなくなっちゃった。
生きることは永遠じゃないことぐらいわかってたのに。
いなくなっちゃった。
5年も経つのにいまだに寂しい。
この季節は特に寂しい。
朝起きるとお出汁の香りがしなくなったのも
包丁で何かを切る音もしないし
美味しい香りがイッサイしなくなったのも寂しい。
他愛のないおしゃべりができないのも寂しい。
優しい声で名前を呼んでもらえないのも寂しい。
そう、全てがさみしいのだよ。

母の名前をこっそりと呼んでみる。
一瞬だけ温かい気持ちになるのだけれども。
やっぱり寂しい。