なぜ、口コミ代行サービスを使ってはいけないのか?
先日、Twitterで、「おすすめの口コミ代行会社があれば教えてほしい」という支援会社の方のツイートを見かけて、驚いてしまった。
「推奨されないのは理解している」と説明されていたが、「口コミ代行サービス」は、非推奨ではなくて違反行為だからだ。
なぜ、口コミ代行サービスを使ってはいけないのかを、ガイドライン・有効性・エコシステムの観点から、解説していきたい。
そもそも、口コミ代行とはなにか?
口コミ代行ビジネスとは、Googleや食べログのような口コミサイトやポータルサイトで、指定した店舗への口コミを代わりに投稿するサービスだ。
1件単価は、8,000円〜10,000円前後と言われている。代行会社は、投稿用のアカウントや端末を多数所持し、依頼主の指定の口コミをそれらの端末から投稿する。
例えば、Googleのクチコミ代行の場合、
レビュースコアが低いので、高評価を増やして点数を操作したい
低評価クチコミが目立つので、クチコミを増やして目立たなくしたい
紙や他サイトでの口コミを転載したい
競合店舗に悪いクチコミを増やして、集客を妨害したい
口コミを増やすことで、サイト上やGoogle検索での表示順位を上げたい
というような目的で利用されている。こういった口コミ代行は、各サービスで禁止されている行為であり、ステマにも当てはまるスパム行為に当たる。
依頼主がクチコミそのものを用意するケースもあれば、依頼主が「○○について書いて欲しい」と指定して、業者側が用意するケースもあるらしい。
サジェスト対策や風評被害対策を提供している会社が、一緒に提供しているケースが多い。
Googleの口コミのガイドラインでは、投稿代行は禁止されている
Googleのクチコミ代行は、ガイドラインの禁止事項「詐欺的なコンテンツの"虚偽のエンゲージメント"」に該当する。
Google マップに投稿するコンテンツには、このようなガイドラインがある。
「虚偽でなければいいのか?」という疑問を持たれる方もいて、過去に「紙でもらった口コミを、Googleにも転載しているだけだから、虚偽ではないからOK」と、主張するサービスの相談をされたこともある。
しかし、これは、「場所の評価を操作するために複数のアカウントから投稿されたコンテンツ」に該当するので、違反対象である。そもそも、それを「事実かどうか」確認することができない点でも、問題があると言えるだろう。
「嘘ではない口コミ」だったとしても、それは、ユーザーの信憑性と体験の信憑性の両方が紐づいている必要がある。ユーザー・体験それぞれが虚偽ではなかったとしても、それが切り離されてしまった時点で、その正当性を証明できなくなる。
ただ、残念ながら、口コミ代行を支援したり、希望している会社は案外多いようだ。冒頭で紹介した「Googleマイビジネスのおすすめのクチコミ代行サービス教えてください!」にも、「教えます!」「紹介します!」というリプがいくつか付いていた。
費用対効果の面でも、口コミ代行をおすすめできない理由。高まるGoogleのスパムレビューへの体制
Googleは、こうしたスパムに力を入れて対策をしている。その結果、年々、疑わしい口コミや恣意的な投稿は表示されにくくなっている現状がある。
【Tips】「クチコミが表示されない」という相談が急増していることについて - Google Business Profile Community
「口コミ代行に予算を使ったのに、クチコミが増えない」ケースも、以前より格段に増えているだろう。実際、そういった相談(「クチコミ代行を頼んだのに、あまり件数が増えません」)をされ、調査したこともある。そのケースでは、契約に入っていた件数の1/8しか、実際には表示されていなかった。
加えて、仕組み以外の対策も進んでいる。
Googleは、「Googleの偽のレビュー購入サイトの運営会社を訴訟した」というブログを、2022年11月に公開した。
クチコミ代行サービスは、施策としての有効性がそもそも低いだけでなく、ペナルティやレピュテーションリスクも年々高まっているということだ。
口コミ対策は、根本的に低評価が生まれる原因を解消すべき
さらに、短期的にうまくいったように見えたとしても、長期的にはマイナスが多い。
Googleに限らないことだが、口コミ代行や削除などのスパムは一度始めると引き返しにくくなるし、ギャップを感じたユーザーから低評価をつけられやすくなる。
口コミで来た方は、当然、クチコミを書きやすいユーザーでもある。
参考にしたクチコミと、実際の体験とにギャップがあれば、それは「負の感情」につながりやすい。何も情報がない状態での来店よりも、もっとネガティブなことを書かれやすくなる。
「口コミをないがしろにする」「オーナーにとって都合の良い状態に操作する」のは、このような負のスパイラルにハマってしまうことになる。
店舗ビジネスとウェブビジネスの違いは、市場の小ささ、そして、一度ついたイメージの回復しにくいさにある。
悪い評判がついてしまった店をリニューアルするのは、Webサービスの数倍の手間とお金がかかる。
口コミ代行を検討された方に、少し話を聞いてみたところ、「競合もやっているようだ」「競合と自店舗の点数を比較してしまって焦る」というのが、きっかけだったようだ。「ズルい」という気持ちは、理解できる。
そんなビジネスオーナーさんには、この3つを伝えるようにしている。
競合ではなく、お客さんを見るべきです
お客さんをないがしろにした、騙しの施策は短期的にうまくいっても、長期的にはうまくいかないです
競合や点数を気にしすぎるのは、やめましょう。きちんとサービス改善を続ければ、地域の人やGoogleはきちんと評価してくれます
レビューに真剣に向き合っていくことが、PMFにもつながっていく。そして、実際にそうした改善の結果、レビューや点数、顧客満足度の改善につながっている事例はたくさんある。
レビューに真剣に向き合うことのメリット
スパムサービスを利用するよりも、「なぜ、低評価口コミが入ったのか」を分析し、改善する方が、確実で持続もする。サービスとしての質も高まるからだ。
「口コミをどう分析・改善するか」の具体的な手法については、以前書いたnoteをご覧になってほしい。
ただし、低評価クチコミについては、業界によっては、「同業者からの嫌がらせ」も多いと聞く。これに関しては、かなり悩ましいが、よほど多い場合は、業界全体の自浄作用や法的な取り組み、「嫌がらせに反論するための取り組み(例:サイトに反論情報を載せる)」が必要となってくるだろう。
口コミ代行は、Google検索のみならず、インターネット市場の信頼性・エコシステムを壊す行為
昨今よく言われる「Googleマップを店選びに使うユーザーは多い」という話。
口コミ代行のような、レビューの信頼性を壊すような取り組みが増えると、ユーザーは、どんどんインターネットの口コミを信頼しなくなる。きちんとやってきた店舗の集客にも、悪い影響が出てくる。
場合によっては、「よそがやっているなら、うちも…」とさらにスパムが広がっていく可能性も高い(実際、それを相談されることもある)。
口コミ代行は、ブラックハットに手を染めるリスク・店舗にとって有益ではない取り組み・インターネットのエコシステムを壊すという3つの負の面を持っているサービスということだ。
もし、そういったサービスや会社を見つけたら、サードパーティポリシーの違反報告フォームでの報告をして欲しい。
ビジネス プロフィールのサードパーティ ポリシー: 違反を報告する
3/1:Twitterで興味深いコメントをいただいたので、補足。
口コミ代行は規約違反だが合法では?
→個人の見解ではあるが、不当表示にあたり、違法になる可能性はある。少なくとも自分なら「合法です」という説明を、顧客や社内にはしないと思う。
Googleが禁止=やられると"効果がある施策"であることの証明では?
→たしかに、実行されると短期的には効果が出てしまう。実際、数年前は口コミの審査が緩かった。なので「効果がないように」対策をとっているという説明が、審査フィルターや訴訟のくだり。
なお、こういう記事を書くと、「そうはいっても、○○は、このやり方で成功しているみたいですよ!」というコメントをいただくことはある。個別具体に見たとき、例えばクリニック系で「上手くいっている(見える)」店舗も、実際にあるだろう。ただ、それでも、マクロで見た時にこうした施策による費用対効果は格段に悪くなっているし、レピュテーションリスク(「この口コミは嘘です!」とTwitterで話題になるなど)は高まっているので、「見た目ほど」うまくいっていないはずだ。ハイリスクローリターンになってきている。
いつもサポートありがとうございます!サウナの後のフルーツ牛乳代か、プロテイン代にします。「まあ頑張れよ」という気持ちで奢ってもらえたら嬉しいです。感謝。