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ペリカンのスーべレーンと樋口可南子さんの思い出。

 手紙や葉書を書くときは、できるかぎり万年筆を使うようにしています。

 ウォーターマン(フィリップ・スタルクデザインのもの)やモンブラン(太軸 マイスターシュテュック)も控えに用意しているけれども、今、頻繁に使っているのは、ペリカンのスーべレーン(緑軸 M600)です。外出に連れて行っては、紛失を繰り返しているので、今、手元にあるのは恐らく四代目です。

 気分をかえるために、ペリカン社のエーデルシュタインのインクを求めて、万年筆とともに写真を撮ったら急に思い出が蘇ってきました。

 この万年筆を使うようになったきっかけを生んでくれた稽古場の思い出です。 

 時代は前の世紀。一九九九年にチェーホフの『かもめ』(岩松了翻訳・演出)が上演されたとき、私はめずらしくも、恵比寿にあったシアターコクーンの稽古場にまぎれこんでいました。
 アルカージナ役を勤めていらしたのは、樋口可南子さんでしたが、台本に覚えを書くときに、さりげなくスーべレーンを取り出したのを、まざまざと覚えています。

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年々、演劇を観るのが楽しくなってきました。20代から30代のときの感触が戻ってきたようが気がします。これからは、小劇場からミュージカル、歌舞伎まで、ジャンルにこだわらず、よい舞台を紹介していきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。