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【劇評285】新しい時代をはじめるには、町をまっさらにするしかないのか。うさぎストライプ『かがやく都市』の深い思い。

 うさぎストライプの『かがやく都市 The Radiant City』(作・演出 大池容子)は、謎めいた世界に観客を誘い、魅惑にあふれている。

 高校の教室、選択授業の「都市計画」で、学生服姿の松崎(宝保里実)と佐々木華(安藤歩)が、教師の石野(伊藤毅)を待ちながら、心理テストやなぞなぞで時間を潰している。
 石野はかつてこの町に、モニュメントなどがなにもない広場を設計したことがある。華の兄、佐々木譲(亀山浩史)は、高校で同級生だったが、今はひとりで工場を運営している。そこにスカーフをかぶり、サングラスをかけた謎の女(小瀧万梨子)が現れ、猫についてのアンケート調査を、松崎に持ちかける。

「静かな演劇」の命脈を継いだ作風で、この町に何が起こったかは、周到に隠されている。
 核心にあるのは、「あの工場」で、カフカの『城』のように、そこには怪しげな秘密があるかのように語られる。佐々木譲は、みなを案内するが、この劇ではその謎は解明されずに終わる。

 ジュリアン・グラックの小説『シルトの岸辺』や『アルゴールの城にて』が思い出されるが、直接的には、劇作家・演出家 如月小春の『工場物語』や『MORAL』が参照されているように思われた。

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年々、演劇を観るのが楽しくなってきました。20代から30代のときの感触が戻ってきたようが気がします。これからは、小劇場からミュージカル、歌舞伎まで、ジャンルにこだわらず、よい舞台を紹介していきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。