崎谷実穂『ネットの高校、はじめました。 新設校「N高」の教育革命』(2017)

出版大手のカドカワと、その子会社であるIT企業ドワンゴが新設した通信制高校。2016年4月の開校から2000人を超える生徒が入学、2018年9月現在で7000人以上に急増中。ちなみに通信制で最も生徒数が多いのはクラーク記念国際高校の11000人ですが、こちらは1992年創業の「老舗校」で、いかにN髙の勢いがあるかが分かる。


僕は高校時代、入学して最初の授業で、英語の先生が「この学校は、1年生で文法をすべて終えます。後の2年間は、受験勉強」と断言した。その時、思ったんです。(んじゃ、単位制でよくね?)(2年生以降は、教科書使って文法習う必要なくね?)って。高校時代の僕は外面は生意気、でも中身は実に素直な子でしたから、言われた通り「大変だ! 1年生でマスターしなきゃ!」と思って英語だけは1年間だけ、ガチで勉強しましたから、2、3年の英語の授業は正直退屈でした。授業をサボって弘前城の桜を見に行ったりしました(でも授業抜け出すって思ったより心細くて罪悪感に襲われて、一回きりでやめたw)。


要するに、カドカワの川上量生社長がこの本の中で言っているように《一斉授業って学習効率が悪すぎるんですよ。時間も場所も制約があるし、生徒一人ひとりの理解度にも合わせられない》。


そもそもN髙の魅力は、発起人である志倉千代丸さんの《様々な分野の専門的な授業(声優になるための発声、小説家になるための書き方、プログラミングなど:長谷川注)を少しずつ、つまみ食いしながら、体験しつつ、高校卒業資格も取得できる》というメリットに尽きると思う。ただ、若い内って、本当にやりたいことしかやりたくなくて、僕も理系科目に全く興味なくて夏休み明けの物理の学力テストで3点取っても屁とも思わなかったけど、今になって、モーメントアーム(物理)とか、マグネシウムの効能(化学)とか、白血球のはたらきとか(生物)、大事だし仕事はおろか、人生においても必要な知識だったなあと思ったりする。だから、未知なことを体験することは大事。そういう意味で、N髙は沖縄本校へのスクーリングとか、マタギやイカ釣りの(あえてアナログな)職業体験とか、一大イベントのニコニコ超パーティーとかを用意しているんだと思う。自分の人生でやるべき、「あ、これだ」っていうモノと出会う、落雷に打たれるチャンスの幅を広げてあげてるだんなあと。


最後にもう一度、川上さんの「教育方針」を引用して締めましょう。とてもわかりやすくて素敵です。


《「子どもは明るく元気がいい」とか「おもいやりが大事」とか、教育っていろんなイデオロギーがありますよね。でも僕らは、そういう抽象的な表現は一切やめました(笑)。そういうの、言葉は立派ですが実質がよくわからないじゃないですか。…(中略)…そこで、N髙はイデオロギーではなく、具体的な結果を重視することにしました。…(中略)…結局、「仕事に就ける」「大学合格」この2つでしょう。なので、N髙の課外授業プログラムは、この2つが得られるよう注力しています》。

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