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新芽の名前を調べると、やりたいことが増えていく

八ヶ岳の家の庭は、かっこよく言うとナチュラルガーデンです。要は、ほとんど何も手入れをせず、自然の野草が生えるままにしているのですが。
さて、芽吹きの季節です。植物判定アプリを片手に、パシャパシャと新芽を撮影しながら、植物の名前を勉強していました。

この木、なんの木?

ちょこんと生える新芽が可愛い

この新芽は何でしょう?
分からなかった方、大丈夫です。私も1年前まで全く知りませんでした。この植物の名前すら、認識したことがありませんでした。

正解はカラマツですね。
八ヶ岳は、かなりの数のカラマツ林に囲まれています。でも、日本中でカラマツが育つのは北海道、東北、信州だけ。私自身、八ヶ岳に来るまでは意識したことがない植物でした。
名前のとおり松の仲間ですが、カラマツは秋になると黄金色の葉に変わった上で落葉するのです。一般的な松(クロマツ、アカマツ)は常緑で落葉しないのに、不思議ですよね。高緯度地域に適応し、暗くて寒い冬に適応するためのようです。
また、一般的な松ぼっくりに比べて、かなり小さな松ぼっくりを作ります。1cm程度でしょうか。そういう可愛い松ぼっくりが、森の中に無数に転がっています。
そのうちの一部がうちの庭に転がってきて、発芽してくれたんでしょうね。
少し引いて全景を撮ると、こんな感じ。

精一杯、四方八方に枝を伸ばしている

と写真のキャプションを書いたところで、昔覚えた詩の一節が頭に浮かびました。
「精一杯枝を張り 許された高さまで 一生懸命伸びようとしている」
何の詩だったかな。調べてみて納得。星野富弘さんの詩でした。

飯島 節子 | 星野富弘詩画集ネット (tomihiro.net)

この詩は合唱曲にもなっていて、それで一連の言葉が私の頭に刻みこまれていたのでした。手足の自由を失った星野さんがどういう思いでこの詩を書いたのか、高校生の頃の私は何も分かっていませんでした。

去年、入笠山(にゅうかさやま)の山野草を見に行ったときに、麓のスキー場の売店に星野富弘さんの本がたくさん置いてあったことも思い出しました。
調べてみると、今年も5/2から展覧会を開催されるようです。去年は時間がなくて入らなかったのですが、もったいなかったなあ。今年はぜひ行こう。

星野富弘 花の詩画展(長野県富士見町・5/2~6/16開催) (shigaten.com)

この草、なんの草?

やわらかい葉が、くるくると巻き付きながら出ている

これは、食用の野草です。
道の駅とかにも、同じ種類のものがよく売られています。

正解は、ウルイですね。
正式には、オオバギボウシと言います。植物判定アプリの結果には、ムラサキギボウシと出ます。確かに、去年の夏には紫色の花がたくさん咲きました。

ウルイと似た植物に、バイケイソウという毒草があります。
何度も調べたのですが、この2種類の見分け方にはナカナカ難しいものがあります。特にまだ成長しきっていない新芽の段階だと、自信を持って区別することができません。
ウルイは、成長すると中央に太い葉脈ができ、そこから左右に細かな葉脈が伸びる形になります。一方、バイケイソウは根元から並行に葉脈が伸びます。でも、写真のように新芽の段階だと、中央の太い葉脈を確認できないんですね。

両者の花は全く違う形をしているので、去年はウルイの花しか咲いていないことも確認しました。ただ、それでもこの段階で食べるのは躊躇してしまいます。
まあ、一口かじったのですが。ウルイなら生食できるので。
そして、味から考えてもきっとウルイに間違いないとも思ったのですが。
でも、もう少しウルイらしい形になってから、天ぷらにでもしようと思います。

この花、なんの花?

今度も、ある程度有名な花です。
この花の名前が分からなくても、名前はきっと聞いたことがあるはず。

まだ、花が咲く前の段階なので、下を向いている

この植物は、全体を食用にできます。
花や葉は湯通しして、お浸しなどにして。
そして、根っこというか、鱗茎と呼ばれる球根部分は、デンプン質を多く含んでいるので片栗粉の材料に。

そう。もう答えを書いてしまいましたね。カタクリです。
ほんとの昔は、カタクリの球根を集めて片栗粉を作ったらしいですが、1つ1つの球根はとても小さいので、ものすごい労力だったと思います。
いまの片栗粉は、ジャガイモなどを材料としています。

うちの庭では、1輪だけ満開のカタクリを見つけることができました。

トチの大樹の陰で、ひっそりと咲いていたカタクリ

このカタクリの花は、どこからやってきたのでしょう。
どうも、アリによって運ばれてくるらしいですね。
このメカニズムは面白いので、「エライオソーム」という言葉で検索してみてください。カタクリの種に、アリが好きな物質(エライオソーム)がついています。アリはその種を巣まで運び、巣の入り口でエライオソームだけを外して、種を放置するのです。

なるほど。今度、カタクリの群生地を見つけた時の楽しみができました。
アリを探せばいいんですね。せっせと種を運んでいるアリがいないか、目を見開いて探してみようと思います。
他には、スミレやニリンソウも、同じ仕組みでアリに種を運んでもらうようです。

アリと言えば、八ヶ岳で見かけるアリって、なんか大きいんですよね。
とにかく強そう。しかも、真ん中の胸部分が赤身を帯びていて、甲冑で固めた武士みたい。
調べてみると、きっとこれです。ムネアカオオアリ。
都市部の公園にはいないのですが、森の中で朽木に巣をつくるとあります。きっと、八ヶ岳の森の中を絶好の住処(すみか)にしているのでしょう。

最後にちょっと難問

植物に詳しい方には簡単なクイズが続いてしまったので、クイズの最後はちょっと難易度を上げましょう。
この植物は、何でしょうか?

ツブツブのものが内部に見える

まだ芽を出したばかりで、とても小さいです。
葉っぱの形は、ウルイに似ていますよね。でも、真ん中にあるツブツブが気になります。
植物判定アプリをかざしてみます。

判定結果は、「マイヅルソウ」とのこと。
私は植物図鑑で見たことがありましたが、庭にも生えていたなんて。去年は気づきませんでした。
白い花がたくさん咲くのですが、それぞれの花が羽を広げた鶴のように見えるので、マイヅルソウ。美しい名前のとおり、美しい植物です。
6月には花の見どころを迎えるようなので、これは要チェックです。

マイヅルソウ - Wikipedia

やりたいことが増える

家で植物図鑑を眺めるのも勉強になります。でも、左から右に流れてしまうというか、頭の中にあまり残らないんですよね。
その点、実際の植物を目の前にすると、自分自身の印象と感動が違います。

それに、発見した植物のことを色々調べると、今度やってみようと思うことが増えますよね。
星野富弘さんの展覧会にも行きたいし、カタクリの群生地で種を運ぶアリも見たいし、6月のマイヅルソウも見たい。
こうやって、やりたいことを無限ループのように増やしながら、少しずつ自分の知識も増やしていけるのかなと感じています。

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