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なるべく上等な劣等感日記

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誰も劣等感を脱ぎ捨てることはできない。人生はけっして素晴らしいものではないが、どうせ生き続けなければならないのなら、なるべく上等な劣等感を身につけた方がいい。 ──吉行淳之介
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2018年4月の記事一覧

スピードが、優しい貴方を鬼にする

降りたった山形県の庄内空港は小ぶりで、だけれど市街地からも近くて、使い勝手はそれほど悪くなさそうだった。窓からの景色は一面に、次の秋を待つ田んぼが続いていた。

公私ともに、ちょこちょこと飛行機に乗る機会があって、たった数時間のうちに「誰かにとっての玄関口」に降りたてるのはすごく楽しい。働いてる人も、流れてる空気も、ここを行き来する人の姿も、日本にいるみたいなのに外国みたいな「よそ者」感がまだまだ

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結婚とストロングゼロと生きる価値

友達づてに、元カノが結婚したことを聞いた。

結婚そのものも喜ばしいことだし、友達と元カノの関係性が続いていることもよかった。

ぼくは恋人ができると、割とすぐ友達を引き合わせることがあって、なんやかやでぼくと元カノの関係が事切れたあとでも、付き合いが良く継続していたりするのを聞くと、自分にも人生で何がしかの役割を担えたのかもしれなくて嬉しくなる。

ぼくを通じて出会えたこと、言い換えれば遠い点を

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なぜラガーマンはVネックを着て、ベトナムで働けないし、産後3週間の心得を知る

ここ最近、人から聞いて、日記のネタ用にメモしておいたことをまとめてみる。

もともとラグビーをプレーしていた人が飲み会にいた。ラガーマンは首まわりが太くなることもあって、丸首シャツがキツイそうだ。よくVネックを着ているイメージがあるのもこのためで、むしろVネックでも詰まり気味のことさえあるらしい。

ちなみに、ふつうのYシャツは首が閉まらず、首に合わせてシャツを買うと、胴体がブカブカになる。だから

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振り向きざまに毒で殺せます

恋人が寝起きにお菓子を口へ入れてくる。なんの前触れもなく指先がそろそろと向けられることもあれば、振り向きざまに何かを差し出してくることも。ぼくは疑いもせず口を開ける。

たいていは、ラムネとか、チョコレートとか、ビタミンCのタブレットとか、あとはたまにサプリメント。

「嫌がったりしないよね」と(自分でしておきながら)恋人は不思議がるけれど、それはもちろん、君がくれるから嬉しいのだよ、という気持ち

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思いわずらうことなく愉しく生きるためのMacBook Air

「定期的におしりを触ってもらえないと愛情を確認できない」と恋人が言うので、寝転んでいるときとかにふいに手を伸ばしてみているのだけど今だに正解なのかわからない。

物言いが面白い人なのでジョークかもしれないけれど、ぼくは馬鹿正直に信じて行動するほかない。

というより、過去の恋愛のアレコレで、すっかり猜疑心が強い性格に育ってきているがゆえに、「信じようが信じまいがダメな時はダメだから、だったら信じて

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中途採用で落ちて恨み節のメールをもらう

先週の水曜日には、大学の同窓生ふたりと久々に会う。ふたりとも職場も仕事も変わっていて、実に2年半ほど会っていなかったことがわかる。

ふたりの外見がそれほど変化がないようなので、ぼくまで大して変わりないように思うけれど、体重がぜんぜん増えている。ふたりは優しみで言葉にしなかったけれど。

Mさんはいま人事に関わっている。彼女の会社は中途採用がメイン。飲みの席なので「過去にあったすごい応募者」なんて

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草津よいとこ一度はおいで、いやいや二度も三度も行きたいです

仕事のち音声収録のち仕事、という土曜日を乗り越えて、待ちに待った日曜日。ここしばらくの半死半生は全てこのためと思えるほどの、朝10時すぎ。草津温泉へ行くために恋人と待ち合わせる。

水玉の襟の、ワンピースを着てきた恋人は、なぜかぼくの目にはいつもよりくっきりと映った。過度な飾りや柄がない、さらりとした服がよく似合う人だ。それはぼくの意識が集中しているせいもあると思うけれど、たくさんの人がいても恋人

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右の口角が上がるときの彼女は

朝から取材を2件すませてから、戸田真琴さんを訪ねて所属事務所へ。お会いするのは2月末の写真展のとき以来。

その間にも、ピンク映画大賞の女優賞を取られたり、DMMアワードのノミネートがあったり、She isへのコラム寄稿があったり……そのほか、水面下でも動きが様々あるようで、まさに「精力的」という感じ。

戸田真琴さんは、相変わらず自分のファンの素敵さ、かっこよさを語って聞かせてくれて、ぼくは、う

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物事がつまらないのは自分がつまらないから

火曜日から木曜日までの記憶は有るようで無い、というくらいに瞬いていて、目を閉じるときは眠るとき、開いているなら仕事、というくらいの半死半生で過ごしていく。

こんなふうにしたくないから日記をつけているのに、と思いながら、取り返すことも難しいのでまとめてしまう。

たしか水曜日、前々から約束していた飲み会で、祐天寺の「もつ焼き ばん」で飲む。相手は若き編集者的なる男子で、もっと真面目な話とかするかと

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六度寝の朝にトリュフバターごはんを

4月が始まったけれど4月の趣はフリーランスには特に関係がない、というのが今年の発見だった。Twitterのタイムラインで、やたらと「新社会人へ」的なコメントがあふれてるなぁ、みんなどうしたんだろう……と不思議がって、あ、4月か、と気づく。

日曜日の昼間は「若柳宮音筆の会」第2講で、インタビューの奥深さをまだまだ知って、うんうんと唸っていた。この時の話は、またあらためて音声配信の『編集したい系の僕

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死ぬこと生きること、夜中の富士そばが食べられないこと

長くて濃い、3月31日の土曜日だった。

公私ともにお世話になった料理家さんが急逝され、いわゆる「偲ぶ会」が開かれたので足を運ぶ。

彼女は死期を悟った後、親族に「後悔するような人生は送ってこなかった」と告げたそうだ。その言い切りの良さも含めて、なんて「らしい」のだろう。ぼくは、どうか。どうすれば、そうできるのか。

今思えるのは、生きている限り、やっていて性に合うことで社会と接し、誰かに還元でき

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好きになる能力が高いほど仕事は広がる

30日の金曜日のこと。4ヶ月ほどアシスタントとして仕事を手伝ってくれていた奥岡けんとくんが4月から会社員になるので「お疲れ様」と飲みに行く。

ぼくが色んなジャンルの仕事を受けているせいか、奥岡くんもそれまであまり触れてこなかったタイプの仕事があったようで面白かった様子。それはなによりだなぁ。

仕事をしている自分を外側から見るっていうことがないので、一緒にインタビューしたりとか、原稿のフィードバ

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