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なるべく上等な劣等感日記

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誰も劣等感を脱ぎ捨てることはできない。人生はけっして素晴らしいものではないが、どうせ生き続けなければならないのなら、なるべく上等な劣等感を身につけた方がいい。 ──吉行淳之介
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#恋愛

恋の終わりの終わり

半年かけた某プロジェクトが終わりを迎える。プロジェクトというか、自分で設定した目標数値をとにかく毎月なんとか完遂する、という類のもので、頭の片隅にいつもあってプレッシャーを受けていたらしい。心底、ほっとする。

この半年は、ただひたすらに自分のことを点検しているような日々だった気がする。整備不良をどこかに見つけ出さねばいけないようだった。最初からそんなものなかったとしても、「ぼくには壊れている箇所

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しゃべる保湿クリームこと恋人との電話

水曜日のこと。

ここ最近、スーパーの野菜取り放題のごとく、そんなに伸びないビニール袋にぎゅうぎゅうに仕事を詰めてしまっていて、破けちゃう…破けちゃうよ…とか思いながら仕事をしている。そうならないためのフリーランスのはずなのに、すっかりビヨビヨになった己のキャパシティのなかで、どうにか歩を進める。

とかく前日から絶望的な低気圧が到来していて、心身に影響を受けてしまうぼくにとっては、ひたすらにつら

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このホットチョコレートは恋も悲しみも救う傑作だ

「冬が寒くってほんとうに良かった」と歌ったのはBUMP OF CHICKENの藤原基央で、なぜなら「君の冷えた左手を、僕の右ポケットへお招きするための理由になるから」だった。

冬の寒さはたいてい嫌われ者だけれど、それを「良い」と感じられるときがあるのは、そんなふうにくっついていても怒られないし、むしろ心地よいと思えるからだ。今日も心地よくて、目が覚めるたび恋人にくっついて、そのあたたかさに何度も

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昼間に裸でマクドナルドを

たしか新世紀エヴァンゲリオンのマンガ版のワンシーンだったと思うのだけれど、葛城ミサトと加持リョウジが付き合っている頃に、ふたりして何をするでもなく、ずっとベッドにいて裸のまま触れ合っていることが幸せ……っていうエピソードがあった、はずだ。

年端のいかないぼくは衝撃を受けたらしく、そのちいさなコマの描写がつよく残っている。たしか、貞本版エヴァだったんだけど、ちがったらすみません。

そのシーンは憧

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新しい恋は、新しい街を知ることでもある

前日のボルダリングにより、上腕部に筋肉痛。一日くらい遅れてくるかと思いきや、しっかり翌日にいらっしゃった。年齢をかさねると痛みが遅くなったりするものだから、からだの素直さに嬉しくもなる。ペットボトルのキャップをあけるのに顔をしかめたりもするけれど……。

恋人と連れたって、高円寺を散策する。ぼくはずっと高円寺駅南口の商店街っていうのはアーケードの部分で終わりだとおもっていたのだけど、いやいや、そこ

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恋と料理の相乗効果

難易度の高い対談構成の仕事があって、うんうんと頭を使いながら、洗濯機を回したりして、そわそわと過ごす。夜に、すこし久しぶりに恋人が家に来てくれる。会えてうれしい。といっても、10日くらいぶりなんだけど、ぼくはそれを「久しぶり」とすんなり書いているところは、どうにも胸がよじれる。

だれかのために料理をするのは、とてもたのしい。あれこれと献立を考えるのは、日常にある知的な喜びのひとつだ。

寒いから

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恋愛体質は、わるいことばかりでもない

毎日まいにち、恋人のことを思って暮らしている。それはただしく「恋」なんだろうか、という不安がいつも湧いてくるのを、本で覚えたばかりの方法でなだめながら、半額だった鳥手羽元を焼き付け、きざんだ玉ねぎとしょうがを炒め合わせて、きのこを加えて、水を注いで塩で味付けたスープをつくった。まだちょっと、うまく馴染んでいなくて、熱い。

恋は、自分自身の思ってもいない明日へ、あっという間に連れて行ってくれるから

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17歳の僕は「セックスがわからない」って日記に書いていた

2枚セットで売られていたオージービーフの牛サーロイン150gの2枚目を、夜中に焼いて食べた。ほんとうはぼくが食べるはずのなかった2枚目なので、すこしだけさびしいけれどステーキは美味しかった。一食分だけあまった葱と三つ葉の味噌汁をあたためて。美味しく食べることと、微笑むことは、たぶんどこか似ている。

ちなみにステーキは、オージビーフの公式サイトで焼き方が載っていて、とってもわかりやすかった。肉を3

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