僕たちはマジックアワーを生きていたのか

秋葉原の夜19時はマジックアワーで全部が薄紫色に包まれていて、それはなんとも「欲望の街」という雰囲気を描き出す。目の前を、スーツ姿でリュックを背負った男性が、キックボードで過ぎていった。好きだよ、そういうの。缶ビールが熱く胃におりる。

福岡で傷ましい事件が起きて、すっかり心の平穏をやられてしまっている。吉行淳之介の小説に倣って「心の平衡をとる」ために缶ビールを飲んだけど、なんとなくまだ治らない。ぐらぐら、している。

あれについて思うことを表立って書くことはできなくて、それは誰かを何かしらの形で傷つけたり不快にさせたりするだろうことを漠然と想像してしまうからで、ぼくは仲の良い身内だけのFacebookグループに「ネットがたいへんなんだ」と投稿した。

グループのメンバーはやさしくて、みんな各々のコメントを残してくれて、ぼくはその事実をすごくありがたく、うれしく思う。ぼくだけじゃなかった、という確認ができた、たったそれだけのことなんだけど。

「インターネット」の概念は、90年代あるいはゼロ年代テキストサイト育ちの自分の頃とはすっかり変わってしまったと自覚しなければいけないし、それは進化とか退化とかじゃなくて、ただの変化だ。生き残りたいなら、変化には上手に適応しなければいけない。

ぼんやりコンビニの前で日記を書いていたら、マジックアワーが終わってしまった。もしかしたら、かつてインターネットにあった不思議な理想の時間も、マジックアワーみたいなものだったのかもしれない。これから夜がきて、朝がくる。

もう一本だけ缶ビールを買って、仕事に戻る。

#日記 #コラム #エッセイ #インターネット大好き


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