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Start of Leather(後編)

この物語は、実際にあったことを脚色しすぎながら進んでいく、「ノンフィクション風」ストーリー(にしてくつもり)です!

※前回までのあらすじ

ナレーター『机上の空論に心踊らせたまま、足りない道具と、生地を手に入れるため、彼は東急ハンズへと足を運びました。たどり着いたその先で、あまりにもややこしい革の世界と立ち向かわなければいけない事になるとは、知りもせずに、、、』


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(無機質な空間に1人)

ナレーター『今までやったことがないことをするとき、皆さんはどうやって取り組み始めますか?

「えいや!」と、とりあえず新たな環境に準備なしに自らをぶん投げますか?

もしくは、ググりにググって、「こ、これだけ調べればいけるだろう、、ガクブル」と思ってから門を叩きますか?

私はどちらも良いと思うのです。ただ、いつも同じ方法ばかり取り入れていては、つまらなくありませんか?あなたにはいつもと違う自分を発見する勇気はありますか、、、?』


(池袋にある東急ハンズ。革コーナー。)


僕『な、なんなんだこれは、、、』


ナレーター『目の前に現れたのは、訳の分からない言葉の羅列。「コードバン」「ヌメ革」「ヌメ革タンロー」「オイルヌメ」「ドラムダイ 」などなど。彼は、作り方こそYouTube でしっかり見てきたものの、革それ自体は全くと言っていいほど知りませんでした。』


僕『ど、どれ使ったらいいのかわかんないんだけど、、、(様々な革を手に取る)』


ナレーター『丸まっている大きサイズの革、A4サイズぐらいに切ってある革、めちゃくちゃ柔らかい革。あーあ。もう迷宮に迷い込んだも同然ですね。さて、いったい彼はどのようにしてこの状況と向かい合ったのでしょうか?少し覗いてみましょう。(暗闇に消える)』




僕『やばいマジでわかんない頭パンクする何コレもう今日のところは一旦帰ろうかな』

(自分によく似た男が現れる)

もう1人の僕(略してモク)『おい、ここまできて帰るのかい?』

僕『モク!』

モク『本当に。毎度のことながら、君はお金が絡むと一気に縮こまるね。千円ほどの損失がそんなに嫌なのかい?先行投資として千円なら安いもんじゃないか。それにどんな革だって綺麗に作ればなんの問題もないはずさ。』

僕『そりゃ、僕だって思い切って、パーン!と買いたいよ。たしかにちょっとのお金も損はしたくないよ?でもね、それ以上に、もうこの訳のわからない言葉の方にやられちゃってるんだよ。謎のカタカナは勿論、牛とか豚とか、そういうのも全然何が何だかだし、とにかく、頭の中がうわーってなっちゃってるの!』

モク『じゃあいつも通り、なにも手にせずにまた家に戻って、グーグルで調べて、それっぽく理解してからやるのかい?それもいいだろうさ。そうやって安全圏からチョビチョビ手を出して、気づいたら数ヶ月経ってた、なんてことにはまさか、ならないよな?』

僕『、、、』

モク『はーっ。ちょっとだけ、背中を押してあげようか。

どんな素材を買ったって、初めてなんだから上手くいくかどうかなんて分からないさ。でも分からないまま前に進んでみたらどうだい?恐い?そうだよ、その感覚だよ。まずは何でもいい。一歩踏み込む。しっかり分からないことと向き合う。それから分からない部分を調べていく。経験しながら前へ。そうしていけば、自分の力で考え、物事を先に進めることができる。折角なんだから、いつもとは違うやり方でやってみればいいじゃないか。』

僕『そうだね、ここで帰ってもまた机上の空論を並べるだけ、、、わかった。一歩踏み込んでみるよ。しっかり「分からない」と向き合う!』

(結果、ドラムダイ という革を手にレジへ並ぶ)




ナレーター『彼はいつもとは違う選択をしたようですね。うむ。分からない事に真正面から向き合うのも良いですね。

さて、よく分からないながらにも、革を買うことができてウキウキの彼。自宅に戻ったようですが、何を作るんでしょうか?』

僕『何作ろう?まずはポーチかなー?インスタで検索してみよー!』

(「ドラムダイ 」と打ち込む)

僕『あれっ、なんか思っていたのと違うぞ。もっと、こう、オシャレな感じだと思ってたのに、なんとも言えない、、、ヤッパリ違かったのか、、、』

ナレーター『惜しい!ドラムダイとは柔らかくて色もカラフルな革。ただ、ザ・レザークラフトというので使われているのはヌメ革というもの。もっと革らしい革な感じが出るのはこっちだったのです。なにやら鞣しかたが違うんだとか。タンニンなめしとクロムなめしがあって、それから、、、あっ!知ったかぶりしちゃいけませんね。実はわたしもこっそりググってきちゃっただけの人なので。ふふふ。

そんなこんなで彼の革とのファーストコンタクトは、上手く行ったんだから、行かなかったんだか。ただ、新たな一歩を踏み出したことには違いありません。』


僕『ま!買えただけいいのさ!ありがとうモク!君のおかげでしっかり、訳わからないや!ははは!でも何とかここから頑張ってみる!』

モク『随分上機嫌じゃないか。良かったね。じゃ、俺はこの辺で。(去る)』

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