スタートラインへようこそ。

※この物語は、とある青年が、ふと手にした誕生日占いの本に「貴方には文才があります!」と書かれていたのをいいことに、本当に文才があると勘違いして紡がれていく、ノンフィクションっぽいフィクション作品です。


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友人と最高の時間を過ごした翌日、ぼくはプラモデル屋さんの前に立っていた。目の前に広がるカッコいいパッケージの山。それが見れるだけでもう何もかもが良くなってしまうくらい胸が高鳴る。棚にはガンダムの作品ごとにプラモデルが並べられていた。だいたいの作品には目を通していたぼくにとって、棚の列の全てが宝物に見えてしまう。ゴールドラッシュが止まらない。どれにしようか。手にとっては「これもいいなぁ!」「あぁ、これも作りたい、、、」を繰り返す。


今回は友人とぼくがこの企画の参加者なのだけれど、お互いにプラモデルを作るのは久しぶりだ。だから、あんまりがっつり作り込むよりは、キット自体はお手軽に作れて各々改造したりオリジナルの色を塗ったりしたいね!ということになった。1/144というサイズで縛るルールが決められた。しかし、さっきから店頭に並んでいる1/100というちょっと大きめのサイズのプラモデルが気になって仕方ない。ぼくはこのサイズのガンプラが大好きなのだ。



理由は「コックピットが開いて、操縦席が見えるから」である。たったそれだけだ。その理由のためだけに、当時リトルなボクは、おばあちゃんから貰った500円玉10枚ほどをポケットに突っ込み、ジャラジャラさせながらお店の釣り銭トレーに並べていた。今思うと、明らかに店員は「ご、500円玉??お札じゃないの??」という顔をしていたに違いない。今回はそうはいかない。500円玉を並べないし、コックピットも作らない。選択肢から外れていくプラモデルたちにそっと「もし次があったら、考えとくね!」と念を送っておいた。



「Zガンダム」という作品の棚の前に立ち止まる。昔作ってみたかったけど、結局作らなかった奴らがボクを見つめた。ぼくが昔からキット化を切望していたモビルスーツが、とうとう商品化されたらしく、いっぱい積んである。その子に気がいく。値段を見る。高い。赤貧のボクにはNGだ。その下の列を見る。そこに並んでいた「HG ガブスレイ」に射抜かれた。これはぼくが作ってみたかった、しかも二機揃えたかったのだ。今回はこいつと心中しよう(作るのは一機だけど)。そう決めた。レジに進む。人生で初めて少年がブランドものに手を出すが如く、震え気味で「こ、これお願いします。」そう伝えた。女性の店員さんがニコヤカだった。キットを手に入れたぼくは胸がドキドキしていた。



とうとう買ってしまった。ここから引くに引けない戦いが始まる。ただ作るだけではない。素人が素人なりに本気でガンプラを作るのだ。宣戦布告ともとれる連絡を友人に入れる。「買っちゃった」と。さあ、スタートラインには立った。「思い出になったらいいね〜」と、ゆるく余力を残しながら時間が経つのか。それとも自分の持てるもの、アイデアを、童心を、要するに全てを注ぎ込むように突き進むのか。この企画をいい方向に転がすのも、意味のない時間へと退化させるのも、全ては自分次第である。今、自分が試される時が来た。

位置について、よーいどんっ。


つづく。




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MajiでGunpraする5秒前

世間体を気にして距離を置いたガンプラを、8年ぶりに作る青年たちのノンフィクションっぽいフィクション作品です。
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