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果たして「会社は変わる」のか?

「会社は変わる」

私の「ありかた」の師匠のひとり・大久保寛司さんがプロデユースし、園田ばくさんが上梓した寛司さんの自伝をベースにした小説だ。
ご縁あって、構想段階から出版までのプロセスを垣間見ることが叶い、一足早く「ゲラ段階」で読むことが出来た。

タイトルが決まった瞬間も、オンライン編集会議に混ぜてもらっていたのだが、ゲラに目を通しながら、ふと蘇ってきたのは、組織にいた頃感じていた苦さだった。

「この苦さの正体とは、果たしてなんなのか?」

そんな問いをもちながら、読後のリポートを書いてみよう。

新卒からテレビ局で28年、まだまだ男性優位の組織の中で働いてきた私にとって、会社と言う組織の壁の高さ・厚さに、何とか立ち向かおうとしてきたものの、最後まで抗い切ることは出来なかった。
50歳で会社を卒業したのにはいくつか理由があるけれど、この小説の主人公である永田誠一が、どんな困難にもぶれずに自分を貫く強さと、私とは、一体、何が違ったのだろう?
 
読み進めるうちに、こう思った。

ああ、私に足りなかったのは「知恵」であり、「情熱」もやや過剰気味で、それが、「推進力」を妨げていたのかもしれないと。
「嘘がつけない」性格で、ただやみくもに体当たりしか出来ていなかった。

そういえば、アナウンサー・ニュースキャスターとして現場を飛び回っていた20代は、「そう突っ張るな」とか「もっと肩の力を抜け」と、よく言われた。突っ走ったことにも意味はあったと思うが、今、私が「当時の私」をマネジメントする立場だったら、同じように声をかけるかもしれない。
 
抗い切れない、大きな出来事もあった。当時担当していた夕方のニュースの冒頭で、男性キャスターと並んで、視聴者に頭をさげた。
「県民と喜怒哀楽を共にする」ためにアナウンサーになりたいと志願して、やっとのことで入社した会社だった。様々な想いが交錯する中で、永田だったら、あの時、どうしていただろう?私には何も出来なかったのか?
当時忘れていた気持ちを、思い出しもした。
 
この物語を読んでいると
「自分だったらどうするか?」
「何をしたか?」
「何が出来るか?」と、自然に問いが湧いてくる。

「本当のことばで話せているか?」
「何のための仕事なのか理解できているか?」
「本当に大切なことは何なのか?」。

主人公の永田が、どんな時も、どんな力にも屈せず、真っ直ぐ相手に、そして、自分に問い続けているからかもしれない。生き馬の目を抜くような厳しいビジネスの世界に、私自身は身を置いたことはないけれど、それでも、メディアで働く中で味わった数々の試練を、もう一度振り返り、気づきを「これから」に活かそうと思えている。
 
目の前に様々な場面が浮かんでくるようなストーリー展開で、夢中になって読んだが、元キャスターとして興味深かったのは、「伝える」ことに永田がこだわり、社長にプレゼン指南する場面だ。
進度も深度も違うとはいえ「伝わらないアナウンサー」という忸怩たる思いから、もう30年以上「伝わるの実現にはどうしたらいいか」と、自らに問い続け、探求してきたことは、間違いのない事だと確信することが出来た。

また、どんなことがあっても、人は「本当のことば」と「嘘偽りのことば」をかぎ分けることが出来て、だとすればやはり「本当のことば」を語り続けるために、自分のあり方を問い続け、磨き続けることを諦めてはいけないなと、心に刻むことも出来た。
 
永田が社長に伝えた「ことば」のひとつに「明るく、楽しく、前向きに」がある。大事なのは「あ、た、ま」というのは、いみじくも私自身が、場を創る時には、とりわけ大事にしていることを言い当てていて、驚きとともに嬉しくもあった。

念願の報道記者から、裏方に異動になり、子連れ転勤や出向など、思いもよらないことが沢山あった28年の会社員生活も、たとえどんな状況でも、楽しいことを見つけようと思えば、見つけられると信じてやってきた。
それは、間違いじゃなかったのかな?と思えた。

そもそも組織の中で、道を外されていたから「評価」という魔物に囚われずにいられたことは、結果として良かったのだろう。
最初から待遇も悪いし評価もされないから「何でも出来た!」というわけだ。永田のように、そういうポジションを「知恵」で戦略的に取ったわけでは決してないけれど、結果的に、私は「自由」だったな。

大事なのは「自分の評価」でしかなく「自分で自分に〇をつけること」だということに、早いうちから気づけていたのは、ラッキーだったとも思う。

テレビ局の表舞台から、放送データを作成する縁の下の力持ち部門まで、あらゆる部署を行き来しながら、都度、懸命にやってきたことを、永田も見ていてくれたのかな?
そんなカン違いが励みや勇気になる‥‥
読者の中には、そんな私のようなちょっと不器用な(元)企業戦士も、いるかもしれない。
 
 私の「ことば録」の中に、「何食わぬ顔をして戻って来られるように、戻ってきてほしいと言われる人であり続けなければならない」という、福山雅治さんの「ことば」がある。
永田が退職後も日本ARKに求められたように、私自身も、どんな形であれ「戻ってきてほしい」と言われる人であり続けたいという思いが、最後に、ふつふつと湧いてきた。
物理的に戻るというよりも、後輩たちにとって、求められる生き方のひとつの見本として、あり続けたいなぁと、ちょっと欲張りかもしれないが、思っている。
 
園田ばくさんの情熱ほとばしる筆致に、そこから浮かび上がる確かな本質に、力を頂いた3時間の「リアル半沢直樹」を超える「会社は変わる」

退職して5年の節目に、あらためて自分の来し方行く末を考える時間を、小説を通して得ることが出来たことに感謝だ。

ご興味ある方は、ぜひ。

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