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大久保寛司のあり方塾@東京7期 第1回ゲスト 吉田南美さん(前編)


はじめに 〜「あり方塾」とは〜

(寛司)はじめましての方もいるので、この場について少し説明すると、世の中には様々な学び場がありますが、ここは極めて「テキトー」で(笑)、毎回、よく言えば「ひらめき」、悪く言えば「思いつき」で、場によって空間によってモードが変わって何種類もあります。これは、来ていただいた方に、少しでも学んでいただけるように、毎回、オートマティックに変わっていく感じです。
あくまでも「勉強する場」と言うより「学ぶ場」で、「学ぶ」というのは、受ける側が主体的になることです。教える、教えられるだけでは身に着かないというのが、私の感覚なんですね。
この「あり方塾」は、一人で喋ることもあれば、ゲストに来てもらうこともあって、今回も、先日、久しぶりに会った方を、急きょ、ゲストにお招きすることにしました。

私の「軸」を変えた人・南美さん

(寛司)人は何のために学ぶか。それは間違いなく、幸せになるためです。何かを知る、何かを出来るようになるというのも、幸せになるためのアプローチですが、私は、何かの縁があって来て頂いた方に、幸せな生き方を選択してもらえるように、そのヒントを提供できたらと思っています。

私は、今から24年前に会社を辞めて、主にいわゆる大手の会社の部長以上の研修を、いわば、非常に狭い範囲でやっていたんですが、どうも、幸せに生きている人が少ないなと言うのが実感としてありました。
自分の命を発揮していない人が数多くいるなぁと。
個人的には常識もあるしマナーもわきまえているけど、楽しそうじゃない人が結構いる。「生きてないな」と痛感することが結構あったんです。

今日のゲストの吉田南美さんとは、11年位前に京都のあるフォーラムで知り合いました。私はメーン講師で、彼女が司会を担当していたのが最初の出会い。最初は、カンボジアの支援をしているということだけしか知らなかったんです。
それで、後日「ちょっとゆっくり話を聴かせて」と声をかけて誘ったら、なんと、5時間くらい話が終わらなかったんです。彼女がカンボジアと出会って、今何をやっているか。そして、彼女の話を聞いて、私の中で、大きな軸が変わったんですね。

「人間性」は地位も肩書もキャリアも関係ない

生きることによって価値を生み出していることについては、年齢もキャリアも全く関係ないと教えてくれたのが、彼女でした。
年齢と人間性は何も関係ない。
精神性と人を思いやる力は、年齢には関係ないんです。

私は、人間性が豊かだということのひとつの指標が「思いやる力」だと思っていて、それは年齢とも地位とも肩書とも、全く関係ないと痛感し続けています。それで、そういう思考回路を身に着けることで、だんだん自分自身も幸せになってきていますが、あらためて、そう確信するきっかけとなったのが、今日のゲストである南美さんとの出会いでした。

カンボジア支援に見る「本質」

(寛司)なぜカンボジアを支援し続けたのか、簡単に自己紹介と、どうやって支援しはじめたのかを教えてもらえますか?

吉田(加藤)南美(1991年三重県四日市生まれ)
株式会社NATURALVARUE代表
認定NPOGLOBEJUNGLE理事
バックパッカーの旅の途中、カンボジアの子どもに出会い国際協力の道へ。2021年にNGOを株式会社化し「たのしイイ世の中・おもしろイイ世の中」を実現のため奮闘中

南美さん当日資料より抜粋

(南美)20歳からカンボジアで活動し始めて、今は、カンボジア半分、日本半分で生活しています。息子は1歳8カ月ですが、既にカンボジアに5回渡航しています。
カンボジアはみんなで子育てする文化があるので、向こうではみんなが助けてくれます。そこで、今は仕事と子育てを両立しながらやっています。

カンボジアでしていることは、NPO法人GLOBE JUNGLEでは「くっくま孤児院」という孤児院の運営、学校建設プロジェクト(公立学校41校建設)、学校に通うまでの応援(パパママ大作戦)、そのほかにも夢カナエルプロジェクト、フリースクールなどですね。
カンボジアは50年前の内戦で、多くの方が亡くなって、学校もなくなってしまったし、貧しい生活が続いていました。国内で学校を建てても、お金がかかるので、学校が目の前にあっても通えない子供がいっぱいいたんです。

それを支援する制度が「パパママ大作戦」。これは、顔の見える親子のような関係性を築くことが特長で、ひとりの子どもにひとりの親(大人)が関係するという支援の形をとっています。日本からカンボジアの我が子に会いに行くツアーもあったりして、親子の絆を育みながら支援していただいています。

(寛司)学校があっても使われていない状況などを常に分析して、本来の学べる場にするために彼女は工夫し続けている。つまり、大事なのは「何のために」という目的を常に再確認しているということ。

学校に来てもらうのが目的か、学ぶことが目的か、確認しながら、GLOBEJUNGLEでは、その都度プロセスを充実させていった。その結果、既に3万人の卒業生を送り出してきたんですよね。

(南美)国のナンバー2が、設立した学校にお祝いと見学に来たこともあって、その時のことは語り草になってます。日本の支援者樣のサポートで1年生から6年生まで通える一貫校を建設した時で、黒塗りが50台くらいやってきました。市街地から3時間くらいかかるのに、数10メートルごとに警備員が立っている物々しさでしたね。

(寛司)僕がカンボジアを訪ねた時は更地だった場所に学校が建って、さらに、子どもたちが制服を着て通えるようになった。国のナンバー2が来るなんてこと、普通はないわけで、ある意味、国から認められたわけだね。

毎日、往復5時間(250キロ)をバイクで通った日々

(南美)最初の支援は、孤児院でした。当時、カンボジアでは孤児院に対するルールが急に変わり、孤児院が解散しなくてはならない状況になりました。でも、住所録などが保管されてなくて、概ねの住んでいるエリアと写真を手がかりに、子ども達を探し回りました。

そして、やっと探した子ども達が、育児放棄を受けていたんです。さらに、不衛生な環境での暮らしと栄養不足で、身体の一部がただれて大変なことになっていました。そこで、その子たちに毎日水浴びさせるために、250キロ、毎日往復5時間、バイクで通ったんです。

ただ、通うだけでもとてつもなく時間がかかるし、なかなか関係性も深まらなくて、いつしか村人に混じって、寝泊まりするようになりました。
そのうちに徐々に村人たちとの関係性が出来て、なまずを捌いたり(笑)色々教えてもらったりして、やっていくようになったんです。

(寛司)ここがポイントですね。「関係性を築く」ということ。なかなか懐には入れてくれないから、住むことにする。その目的は関係性を築くこと。半年以上通ったんですよ、片道250キロも。

もうひとつ、南美さんは、絶対、あきらめないんですね。僕も行ったからわかりますが、スープの底に砂利が溜まっていたり、普通、日本人なら考えられない生活に、入っていったんですね。一緒の食べ物を味わって、一緒に生活するわけです。
そこから「本気だな」と思われるようになって、子どもたちから寄ってきて、お母さんたち、そして男たちの信頼も得るようになっていくんです。

関係性の基本は「いかに信頼されるか」

(南美)次に、不衛生な生活環境を変えるために、日本で支援を募って、井戸を掘ることにしました。でも、突然やって来た日本人です。中には警戒する村人も多くて、すぐには受け入れてもらえませんでした。それでも、野ネズミを焼いたのを一緒に食べたり、ため池の水で水浴びするうちに、だんだんと仲良くなり、受け入れてもらえるようになっていったんです。

(寛司)ここにも本質がありますね。正しい事を言って、正しいことをやるからといって、人は受け入れてくれるわけじゃない。
「信頼」と言うベースがないと、受け入れられない。まさにそういうことなんです。
人間の関係性においての基本は「いかに信頼されるか」に尽きる。信頼されていない人は、何を言ってもやっても無駄なんです。
相手は見てくれないし、受け入れてもくれない。

考えてみてください。日頃、生活している中で、自分が「信頼される」という無形の資産を、構築する生き方をしているか。
「信頼」が厳しいのは、積み重ねるにには時間がかかる一方で、壊すのは一瞬ということなんです。企業も一緒です。築城3年、落城1日。いかに信頼が大事かなんですね。今のちょっとした話もですね、南美さんが、相手の心の中に少しずつ少しずつ入っていって、その信頼から、井戸が掘れるようになったということが、わかるんです。

(南美)活動していると、現地の役所の許可が必要なことがあるんですけど、日本と違って「テーブルの下のお金」が必要になることもありました。でも、そんなお金はそもそもありません。だから、あの手この手で、関係性を築いていくうちに、今では、困っていると助けてくれるようにまでなりました。

(寛司)そういう数々の事を乗り越えて、その地域のためによくなる活動をし続けた。学校も着実に増えているんです。さらに、仕組みも素晴らしくて、日本からカンボジアのツアーに参加することで、それが支援になっているだけでなく、カンボジアに行った人が激変するわけです。親と離れて子どもだけを預かって、カンボジアツアーに連れて行くこともあるんだよね?

子どもも大人も「変わる」学び場

(南美)はい。GLOBEJUNGLE(認定NPO法人)では、毎年、カンボジアツアーを企画しています。中でも人気があるのは、子どもサマースクールです。カンボジアに来ていただくからこその学びが、そこにはあります。
空港で親御さんからお子さんをお預かりして、カンボジアに渡航します。すると、日本では居場所が見つけられない子たちも、カンボジアではものすごい輝きを放つことがあるんです。これまでの最年少は4歳だったかな?そんな瞬間に、私たちは沢山、立ち合ってきました。

選択肢は一つじゃない。学校に通えていないことなんか、なんの問題でもありません。そんなメッセージをカンボジアは教えてくれるんです。

(寛司)これも僕がいつも言っていることだけど「人は正しい事を言って、変われ」って言って変わるもんじゃないし「君は幸せなんだよ」と声をかけても全く無力。状況を体感させないとわからないんですね。そこに身を置くことで初めて「なんて自分がわがままだったんだろう」とわかる。体感しないと、いかに自分たちが恵まれているかと言うこともわからないし、そして、忘れてしまうんです。3.11もそう。人というのは、繰り返してしまう。それを繰り返さない人が、賢者じゃないかと僕は思っている。

南美さんとカンボジアに行くと、大人も子どもも人生観が変わって戻ってくる人がいっぱいいるんです。

企業研修なんかやめて、南美さんの所に2週間送り込めば、絶対、人間性が高まる。間違いない。カンボジアの子どもたちの目の輝きは桁が違う。何にも物がなくても、みんなHAPPYな顔している。その顔をみるだけで、涙を流している人もいる。彼女に預けたら絶対安心なんです。ものすごい気配りです。だけど、気配りだけじゃダメ。彼女には知恵があるんです。

(南美)カンボジアでは、初めての人にも現地の人が愛情を示してくれて、人と大地が自然に教えてくれるんです。
そうそう、支援をお願いに行ったある建設会社の社長さんが、社員への不満をこぼしたので、じゃあ、社員をカンボジアに連れて来てほしいと言ったら、役員5人と社員数人が本当にカンボジアに来てくれて、ありのままの村を体験してもらったことがありました。
そこで、皆さんに企業紹介をしてもらったんです。でも、子どもたちにはチンプンカンプンで、サッシもトイレもわからない。じゃあ、何か子どもたちが喜んでくれるお昼ご飯を作ろうとなったんですが、お米を炊くにしても、井戸に何度も水を汲みにいかなくてはならないし、肉が必要な時には、鶏を捕まえてさばかなくちゃならない。
そういう現場で「何も当たり前のことはないんだ」と勝手に感じてくれて「仕事があるのは当たり前でないことが分かった」などの感想をシェアしてくれました。こんな風に、体験を通して勝手に考えるようになる。このあとこの会社の皆さんは、新入社員研修の一環として、衛生指導をしてくれています。さらに、独自の支援プロジェクトが生まれたりしています。

(寛司)学べる場をどう提供するかが大事ということがわかります。教えても学べない。自ら学べる場所を提供することが大事なんですね。自ら学べるような場に身を置くこと。学べる場には「環境」「条件」「状況」をつくることが大事だということを、彼女はわかっているわけですね。
沢山のお話がありますが、次は「かご」の話をしてもらえますか?

女性が働きながら輝ける工房をつくろう

(南美)はい、最初は子どもたちの支援をしていましたが、なぜか?と考えた時に、村に仕事がないことが原因だと思い立って、工房を作ることにしました。女性支援・環境支援・村支援という3つの支援の柱があったので、水草を使った「かごバッグ」を作ることにしました。

村には、農業以外にお母さんたちが働ける仕事が少ないんです。だから出稼ぎに行くしかない。すると、親子が5年以上、離れ離れになってしまいます。仮に子どもを帯同しても、子どもは学校に通えず、教育機会を失ってしまいます。
だから、村のお母さんたちに働いてもらいながら学べる環境をつくりたいと思いました。文字の読み書きができるようになってほしかったんです。なぜなら、薬の名前が読めないと、子どもの命を守れないからです。

工房は、給食当番を回して食育を学んだり、文字の読み書きを学ぶといった「お母さんの学校」の役割も果たしています。
かごバックづくりの技術も、隣村まで行ってノウハウを教えてほしいと直談判しましたが、当初は門前払いでした。手を変え品を変え、毎日、しつこく半年くらいアプローチしてやっと教えてもらて、今は、16人がその技術を継承しています。

後篇に続く 後篇はこちら
【あり方塾  2024年3月28日開催リポート】

【大久保寛司さん】
1973年に日本IBM入社。業務改革推進本部を経てCS担当となる。
顧客重視の経営革新、企業の体質改善と仕組みづくり、
社員の意識改革などに尽力し、会社の風土改革、体質改善に奔走してきた。
お客様満足度向上委員会の事務局長としても活躍。
2000年の退職後は「人と経営研究所」を設立、
所長として“人と経営のあるべき姿”を探求している。
全国から指導・講演依頼が殺到しており、企業はもとより、
医療機関、自治体、教育関連団体からの要請も多い。
相手の立場を大切にする分かりやすい説明には定評があり、
特に気付きを引き出す合宿研修は「参加者の意識が大きく変わる」と絶賛されている。
2024年4月には、日本IBM時代のエピソードをもとにした小説「会社は変わる」(園田ばく著 エッセンシャル出版)をプロデュース。

「あり方塾」
多くの学びが焦点を当てる「やり方」ではなく、自らの「あり方」をみつめ、整えることを大事にする学び場。企業風土改革の第一人者である大久保寛司さんから「あり方」を学び、ともに考える勉強会で、隔月1回の開催(リアル&オンライン)が基本で、開催翌月にZOOMによる復習会もあり。

文責)あり方塾塾生:橋本恵子


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