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情を手なずける技としての演劇・美術:「あいちトリエンナーレ2019」パフォーミングアーツ・プレトークin東京

8月頭に開催が迫った愛知県などが主催する国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019(あいトリ)」のパフォーミングアーツの見どころを紹介するトークイベントが東京でありましたので、足を運んできました。見どころもつかめた気がしますので、ラフに共有させていただきます。

日時:2019年6月20日(木)19:00〜21:00
会場:ゲーテ・インスティトゥート 東京ドイツ文化センター(東京・赤坂)
登壇者:
相馬千秋(「あいちトリエンナーレ2019」キュレーター(パフォーミングアーツ))
市原佐都子(Q)(「あいちトリエンナーレ2019」参加アーティスト)
小泉明郎(「あいちトリエンナーレ2019」参加アーティスト)
高山明(Port B)(「あいちトリエンナーレ2019」参加アーティスト)
モニラ・アルカディリ(「あいちトリエンナーレ2019」参加アーティスト)http://aichitriennale.jp/event/preevent.html

共同体の感情を扱うメディアでテーマに応える

まずは相馬キュレーターより、経緯と概要の説明。
あいトリの芸術監督である津田大介から直接依頼を受け、感情の時代(後に「情の時代」となる)というテーマの元に企画を進めてきたそうです。

われわれは、情によって情を飼いならす(tameする)技(ars)を身につけなければならない。それこそが本来の「アート」ではなかったか。

という津田さんのステイトメントを引用して、そのコンセプトを紹介していました。

演劇は共同体の感情を扱うメディアであることを改めて認識し、カタルシスにも、批評にも偏ることのないアプローチを目指したこと、人間・近代・男性中心という視点を少しずらす作品を意識したこと(話題のジェンダーバランスについては、あまり意識することなくそうなった)などをお話しされていました。

これまでのあいトリの現代パフォーミングアーツは、どちらかといえばダンスが多目でした。今回は演劇、そして演劇と美術の間を更新するようなプログラムが多いことが特徴だそうです。

特に印象に残った作品紹介

サエボーグ
ラテックス製のボディスーツを着用してパフォーマンスをしている。家畜という生態系の最底辺にいる生き物のリビングルームとしての空間をつくり、観客に長時間滞在してもらえるようにする。これまでに発表してきたキャラクターもたくさん登場する。中肉中背の女性パフォーマーの募集もしている。

ネイチャーシアター・オブ・オクラホマ
タイトルにある「幸福の追求」とは、ベースを置くアメリカ(ニューヨーク)で権利としてうたわれている言葉。トランプ政権誕生前後にダンサーと共につくられた作品で、アメリカの空虚さを表現している。文語的な台詞と、動きにズレがあり滑稽な面白さがある。

劇団うりんこ+三浦基+クワクボリョウタ
東海地方で育った方は、子供の頃にほとんど、青少年向け劇団であるうりんこを見ている。うりんこは定期的に外部の演出家を呼んで作品をつくっていて、今回は三浦基。さらに舞台美術として、アーティストのクワクボリョウタのコラボレーションを見ることができる。

小泉明郎
ギリシア劇「プロメテウス」を元にした新作。VRを活用し、どうしても客観性が残るビデオによる鑑賞体験とは異なり、自らの身体性を拡張するような主観性の強い鑑賞体験を提供する。装置としては疲れるものだし、身体の不自由さを感じさせる作品を過去につくっているが、今回は快楽を味わえるような内容にしたい。(本人談)

市原小都子(Q)
新作の音楽劇。ギリシア劇の「バッコスの信女(しんにょ)」を元にする。ギリシア劇を扱うのははじめてだが、人間のコアな部分を書いているから、創作に行き詰まった時などに読むことはしてきた。登場人物をウシ人間や元家畜人工授精士に置き換えて制作している。キャストは全て女性になる予定。城崎アートセンターでワークショップを行い、歌をつくるなどしている。(本人談)

高山明
ギリシア劇「嘆願する女たち」をやろうとしてかなり準備していたが何かが違うと思いやめた。そして「アリストテレスの詩学、弁論術、アジア主義者たちのテキストを演じる方法を探る演説スクールを開校する」という今の告知内容の方向性で進めているがどうなるかまだわからない。ブレヒトを扱ってきたということもあり、感情というテーマに対して、珍しいくらいに右往左往しながら準備を進めている。(本人談)

エクステンション
パフォーミングアーツの中で、美術展の作品を経験してもらう枠組みを特別につくった。展示されている作品が活動の場を拡張して、レクチャーパフォーマンスや作品に関する議論・共有体験の場をつくっていく。ドラ・ガルシア、キンチョメ、田中功起、藤井光、ドミニク・チェンなど。

いつ、何を見に行けばいいか?

もちろん好みが分かれますが、美術畑である自分としては、まず8月のオープニング週に美術展をしっかり見ておくのと、展示空間に介入してくるらしいドラ・ガルシア(エクステンション)は体験してみたいと思いました。

9月は3連休のところに豊田で2作品あるので、美術展の豊田会場も残しておいてここで一気に見るというのも良さそう。

そして10月の3連休は市原、小泉、高山はじめ5作品見れるので足の運びがいがあり。高山さんも、お話されていた感じだとオープニングよりもこちらの方がどうなるのかわからない期待感があります。

また、あいトリから少しひろげて考えると、例年おすすめしている港まちづくり協議会が進めている「アッセン・ブリッジ・ナゴヤ」が9月7日〜11月10日の開催なので、9,10月の三連休のところをうまく使うと、こちらにも足を伸ばせるはずです。


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