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「チャリTフェス」のトークから見えた被災地のエネルギー

「チャリンコ(自転車)のTシャツを着て、チャリティー(西日本豪雨被害支援)に参加するプロジェクト。Tシャツの販売、イベントで得た利益は被災地支援金に。」と銘打って開催された「チャリTプロジェクトフェスティバル」に行ってきました。主催者は、生活介護事業所 ぬか つくるとこ(岡山県都窪郡早島町)などを営む株式会社ぬか。ハイライト?となったトークイベントの様子などを勝手にレポートします。
※トークの発言を引用したり、参考に書いていますが、不正確な部分がある可能性のあることをご了承ください(ご指摘があれば反映します)

会場となったのは、Johnbull Private labo Okayama(岡山市北区問屋町)2Fのジョンブルホール。公共交通機関でのアクセスがあまり良くないこともあり、問屋町自体にはじめて足を運びました。名前の通りの旧問屋街の様相を保ちながらも、卸というよりは小売のお店や雑貨、カフェなどが多く並び、イベントの有無にかかわらず、普段から若い人がたちでほどよい活気があるだろうことが伺い知れるまちの様子でした。

フェス会場の雰囲気

1Fがショップで2Fがイベントスペースのジョンブル。11:00にオープンのところ私が着いたのは13:30頃だったと思いますが、会場はすでに出店者(10組程度)やお客さん(50席+スタンディング100〜200人くらいか)でいっぱいでした。ジョンブルは今回のプロジェクトを全面的に支援している様子で、このプロジェクトのTシャツ制作も担当しています。服飾関係の会社やお店がこのような場自体を持っていて、普段扱うファッションというジャンルにとどまらずカルチャーに幅を広げて活動を受け入れ、支援し(あるいは自ら取り組み)、そこに自然に人が集まり楽しんでいる様子は、岡山ならではの風景だなと思いました。

ホハルの滝沢さんへ早速ご挨拶して、被災したおもちゃのパッケージやこの日に合わせて制作したであろうレポートなどを拝見。売り切れそうな勢いのTシャツ、小腹が減っていたので「下山さんちのお茶」とコラボした「山田村のお茶漬け」を手に入れ空いたテーブル席を確保。お茶漬け(冷たいお茶で美味しくいただきました!)を食べ終えるとトークが始まりました。

進行は、3日前に役まわりを振られたという西村洋己さん(岡山県社会福祉協議会)と、ぬかの中野厚志さん。真備町で被災したものの、前向きに活動に取り組んでいる多田伸志さん(NPO岡山マインド「こころ」)、滝沢達史さん(放課後等デイサービス ホハル)がトークという設定でした。

真備のまちで当事者が暮らす

まずは、多田さんが「こころ」の活動と被災後の状況を紹介。NPOは、精神障害のある方々が正会員のかたちをとり、毎週火曜日に当事者会を行い、全ての活動を一緒に考えながらやっているそうです。真備町に点在する23部屋を借りてグループホームを運営(6部屋が水没)。作業所は小規模型にしていて、当事者のペースで活動できるように運営(去年建てたものが2階までつかり全壊)。ビールの醸造所とビアホールも運営しているがこちらも部分的に被災し、ビールの在庫は約850リットルだけ残ったそうです(全滅仕掛けたが、冷蔵庫がなんとか持ち直し救済。会場や他のチャリティイベントなどで販売)。

復旧活動は早く、お知り合いの人たちがたくさん手伝いにかけつけてくれたこともあり、8月1日には活動を再開することができたそうです。自分たちの拠点に関わる活動だけではなく、集まってくる方々をボランティアが必要な近隣に振り分けるマッチング活動も行っていたそうです。

まちに人がいないと意味がない

また、多田さんがしきりにおっしゃっていたことが、まちに人がいることの重要性でした。当事者の方たちが、3週間の病院生活を我慢して戻ってきてくれた時の喜び。現在のまちは日中こそ片付けやボランティアなどで賑わっているけれども、夜になるとまちの中に人がいなくてとても寂しいこと。当事者の方々が、いわゆる病院や福祉施設ではなく、地域で暮らせるようにということで活動してきたけれども、そのまちに人がいないと意味がない。

だからまちを元気にしなければいけない、という気持ちでボランティアのマッチングや、まちの人が集える月1の機会づくり(地ビールと音楽の夕べ)などをやっている。被災した皆さんはいま、まちを出るか、残るかの決断に迫られている人もたくさんいる。その時にお金というものも、どうしても必要になる。

ものづくりと学習を結びつけたい

続いて滝沢さんによる、ホハルの活動と被災後の状況紹介(先のエントリもご参考ください)。4月に父・母・弟とスタッフ1名でスタートしたばかりの場所。小学生から高校3年生まで、障害があったり、無くてもサポートが必要な子どもの、放課後の学びの場を提供している。

自分の本業がアーティストであるということもあり、ものづくりと学習を結びつけたい。体験の中から学習を獲得してもらいたい。自分も勉強が嫌いだったから。

ガソリンの匂いがすごかった

滝沢さんは、水が引く前からまちに入ろうとしていたので、たくさんの写真を使って復旧活動だけでなく、被災時の様子を説明していました。ヘリコプターが、救助要請をするので待機してくださいとアナウンスだけして去っていく。井原線の高架上から見たまちの、ガソリンの匂いがすごかった。ホハルの中に、子どもの靴やおもちゃが散乱していて痛々しかったなど。

現地のリアルを伝え、周りの元気につなげる

そして復旧までの話。ホハルのオープンにあたって、自己資金はもちろん、借金もしていてそれをもう1回というのは無理だと思った。行政は混乱をしているので、どのような支援が出るかわからないし、保険もあてにならないとうことで、クラウドファンディングを立ち上げた。ただし、単にお金をくださいとか、リターンを過剰に用意するというのもやりたくない。無価値をどう価値に変えるか、いい意味でどう楽にやるか。被災したおもちゃを見ながら、地の人が一番手に入れられない現地のリアルを伝えるということ考えてリターンを考えた。

8月11日に再オープン。セレモニーで岡山フィルのバイオニストが来てくれたり、流しそうめんをやったり。周りはまだまだ復旧できていない状況の中で複雑な気持ちだったけれども、子どもが来て笑っている姿は元気がもらえるので、やってよかった。自分たちが元気でいることが、周りの元気につながるといいなと思っている。

前向きで、笑いのある活動

中野さんより、このトークの企画意図についても補足がありました。多田さんには被災後に声をかけてもらい訪問、そこでとにかく前向きに、まちの活動までしていることに触発されて、このチャリTフェスを企画するきっかけをもらったようなもの。ホハルもとても前向き。自分たちも4月に子ども向けの「アトリエぬかごっこ」というのをはじめて、見学させてもらっていた。被災後は、とにかくそれぞれを訪問しただけで何もできなかったけれども。

滝沢さん、多田さんはそれでも、すぐに来てくれたこと、笑いをもって来てくれたこと。それだけでも嬉しかったとのこと。とにかく日々、人からエネルギーをもらっていて幸せ。いいことばかり起こっているという感覚だそうです。

西村さんからも、社会福祉協議会の仕事で様々な地域の調整業務をしているなかでも、ボランティアセンターの窓口はつないでいくだけで、なかなか明るいムードをつくり難い。49日も過ぎたところだし、ムードをつくれるのはとても大事なことだという視点が提供されていました。

物事を生み出す新たなエネルギーが生まれている

他にも、復旧の過程で保護者、子ども、大家さんなど様々な方と関係性が育まれたり、活動拠点をみんなの手でつくりなおすことができたこと、被災していても、前を向いて物事を生み出す新たなエネルギーが生まれていること、バカみたいに行動しているといろんな人が集まってきてくれること(会場に集まった人も同じようにバカやっている仲間だ笑とのこと)、井原線も高架化されているし真備全体をかさ上げして空中都市にしちゃえばいいのではなど、印象的な話をたくさん聞くことができました。

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