見出し画像

祖父とマッチの火を初めてつけた日

私が8歳の頃だった。ある日、祖父が煙草を吸おうとした。いつもなら自分でマッチの火を煙草につける祖父だった。しかしその日は近くにいた私に「典子煙草に火をつけてくれ」と言った。当時ライターがあったどうか覚えていないが、祖父が私に渡したのはマッチ箱だった。私はまだマッチの火をつけたことが無かった。恐る恐る「マッチの火つけたことない」と答えた。祖父は厳しい顔をして「つけたことが無い⁈」と言った。そして私は恐怖におののきながら、マッチ箱からマッチ棒を取り出した。祖父や父がマッチを擦って火をつけている場面を思い出しながら必死でマッチ棒をマッチ箱にすりつけた。何本か失敗した後やっと火がつき右手に熱さを感じながら祖父の煙草に火をつけた。

その後のことは全く覚えていない。多分厳しかった祖父は私を褒めたりはしなかっただろう。今の時代の孫に甘々な祖父達を思い浮かべると当時の祖父は渋かったなって思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?