バケーションって、そんなに必要なんだろうか? Where to Invade Next〜マイケル・ムーアの世界侵略のススメ〜を観て。

根性、努力、不屈の精神!といえば日本人の専売特許のようなもので、昨今では努力することや、諦めないこと、自分の人生の全てをそこに捧げて闘うことが、まるで時代遅れの自殺行為のように揶揄されてしまっている気がしてならない。『社畜精神』とか、そういう言葉は、最近ではもう使い古された伯母さんのストッキングなみに古臭い趣があるし、日本人の長時間労働・低生産性が嘲笑の対象となって久しい。

Where to Invade Next〜マイケル・ムーアの世界侵略のススメ〜という、マイケル・ムーアの映画がある。アメリカの政治的、社会的、軍事的に悲惨な現状を鑑みて、(ペンタゴンからムーアが派遣された、という体をとって)ヨーロッパ諸国に”侵略”して素晴らしいところを持ち帰ろう、というのが映画の趣旨なのだが、なかなかにして興味深い作品だった。

特に印象的だったのが、ヨーロッパ勢の仕事とバケーションに対する考え方。よく言われることなのだけども、本当にバケーションというものを大事にしていて、バケーションがあるから生産性があがるんだ、という意見のもと、例えばだがイタリアなんかは、実に8週間もの有給休暇があるらしい。

映画の作り方として、いいところだけをピックアップしているから、というのもあるんだけれども、なんだかこのバケーションのゴリ押し、に私は違和感を覚えたのだ。

個人的な意見だけれども、8週間のバケーションって長すぎないかwビーチに座ってるのだって、3日もやれば飽きる。バケーションとってないと、オワコンwみたいな変なプレッシャーがあったりするのだろうか。そういえば欧米人は色白を嫌がる。海にバケーションにも行けない可哀想なヤツ、というレッテルを張られるからだそうだ。そんなこと言ったら沖縄で毎日歩いているために真っ黒な私なんて、ビリオネアだ。

映画の中で、ドイツの”中産階級”の鉛筆工場の社員たちがインタビューされていて、午後2時半に仕事が終わるそうで、そのあとはどうしているのか、と聞かれたところ、

「特に何も。」

「カフェ行ったり、散歩したり、人生をエンジョイするのよ!」

との返答が帰ってきていた。

特に何もって!w

いや、いいんだ。彼が特に何もしないことで人生をエンジョイしているのなら。そしてそういう人生も悪く無い。

でも、でもだよ!特に何もしてないんだったら、生産性のあることしたって、いいんじゃないのか。そして毎日カフェに行くのか。カフェにいって、一体どうするというのだ。コーヒーだって、そんなに午後2時から何十杯も飲むわけではないだろうし。飲むのか?

あの映画の趣旨はヨーロッパがいかに社会福祉的な観点から見た時に進んでいるか、ということを伝えたかったんだと思うけれども、私はむしろ、映画全体を貫く、仕事に必死になることを良しとせず、働く時間は少なければ少ないほどいい、とでも言わんばかりの雰囲気に、少し白けてしまった。

無職歴が長くなってきた私が断言するが、自分の没頭できる仕事のない人生って、(特に仕事にやりがいを覚えるタイプの人間にとっては)ものすごくつまらないのだ。もちろん過労死するまでぶっ通しで働くのを肯定しているわけではない。でも、人間の中には、仕事イコール楽しみ、もしくは仕事と楽しみが一緒になっている人というのがいるのだ。そういう人に、バケーションがいかに大事か、なんて力説されても、「お前ん中ではな!」としか言えないではないか。

Kobe Bryantというバスケットボールプレイヤーがいる。

もう引退してしまっているが、数々の伝説を残す、元ロザンゼルス・レイカーズのスーパースターで、マイケル・ジョーダンと並んで称されることが最も多い多い選手としても有名だ。彼はその練習量の多さ、妥協のない姿勢でもよく知られており、骨折していようがチームメイトの誰よりも早く練習に来、やりたい、と思ったら朝の4時からだって練習を開始する。

コービーがバケーションもなくっちゃ、プレイできないwなんて言うだろうか?練習が午前中に終わったら、あとは特に何もしないでカフェでまったり幸せ…なんて言うだろうか?彼の不屈の精神は、果たして彼の残した偉大な功績とは無関係だろうか?

ああいうのは一定数しかいない天才のやることだから、常人にはできない、関係ない、なんて言ってしまったら元も子もない。彼だって人の子だ。彼に持てる気概が、同じ人間である私たちに持てないはずはない。(注:ここでは気概の話をしているのであって、人間誰でもNBAのスーパースターになれる、という話ではありません。3cmしか飛べない私には無理です。)

生産性が低いのは戦略的アプローチに問題があるからで、必死にとりかかる事自体を否定する理由にはならないと思う。私にとってこの仕事は大マジなんだぜ!と言う人を断罪する権利は誰にもない。

人間の人生で、没頭できる、とはこれ以上ない幸せな状態だと、私は思う。それはビーチで日焼けしたり、ナンパされたり、女の子をひっかけたり、っていうのとは比べ物にならないスリルがある。そしてそれが見つかったときには、不屈の精神で、諦めず、努力をし、本気でぶつかっていくことが、自分が地上に置かれてる理由を見つける唯一の方法なんだと思う。

というわけで、仕事仕事〜♪

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