トリッキン

【戸惑いと舞い(7)】

予選が開始する。予選からピックアップされた十六名がさらに優勝をかけて戦う。優勝すれば日本代表を決定する本戦に出場でき、それに優勝すれば今度はアジア大会、そして世界大会へとコマを進める。

 私は予選をあがり、そして一回戦目で、元日本代表のダンサーとあたり、ベスト16で敗退した。呆気ないほどの展開に、思考がついていかない。現実はただ過ぎ去る笹船のようだ。

 二回戦がはじまるまで、ほかのダンサーたち

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【戸惑いと舞い(6)】

まあ、気になるよなふつう。

 偽る必要はない。

 どこにいるだろう。

 螺旋階段をぐるっと回ると、シモベはまさにその螺旋階段に腰掛けていた。

「なにしてんの」下のほうから声をかける。

「休んでた」シモベは言った。夜空と同化している。動く気配がない。

 すこし考えてから階段をのぼり、二段下に腰掛ける。「バトルやってるよ」後ろ手に体重を支える。「でないの」

「きょうはいい」

「いつもは

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【戸惑いと舞い(5)】

殴ってやってもいい場面かな、場面だな、と手のひらをぐーぱーさせる。それはそれとして、リーダーがこんなこと言うのはおかしいな、といった引っかかりも覚える。リーダーの口調からはどうにも演技がかった、如意棒ぶんまわすなんかすごい猿を手のひらのうえで転がすような、軽薄を軽薄で塗ったくったような響きが感じられた。

「もしかしてだけど発破かけてるつもり? やめてほしいんですが」

「お、敬語になった。怒って

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