ペイパルの脱退は「蟻の一穴」になるのか~リブラの現状~

リブラ協会からの初の離脱者
10月4日、アメリカ決済サービス大手企業のペイパル(PayPal)が、フェイスブックが発行を計画する暗号資産「リブラ(Libra)」の運営組織であるリブラ協会から脱退することを正式に発表しました。メンバーの公式脱退表明は初めての出来事です。リブラとそのほかの暗号資産の違いは法定通貨による裏付けがあることやそれがもたらす価格安定性だとよく指摘されますが、このほかにも計画の

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分裂するECBの読み方~「調整型」ラガルドの本領発揮へ~

抗議辞任の行方
9月25日、ECBはドイツ出身のザビーネ・ラウテンシュレーガー理事が2022年1月の任期満了を待たず、10月末に退任すると発表しました。理由は明らかにされていませんが、同氏がECBスタッフに宛てた電子メールでは「現状を踏まえ退任は最善の行動」と記述されていたそうです。理由は示されずとも、間違いなく9月に多数決で強行突破して決定した政策運営への抗議辞任でしょう。

なお、同理事の後任

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「羊頭狗肉」化するマイナス金利政策

羊頭狗肉の様相を呈するマイナス金利政策
「見かけは立派だが中身はそうでもない」。立派な外見と中身が一致しないことを表現する「羊頭狗肉」という四字熟語があります。最近一部の先進国で追求されるマイナス金利政策の在り様を見ていると羊頭狗肉という言葉を想起してしまいます。マイナス金利を採用する国では導入当初、「そう長くは続けられない」という声が多かったはずですが、現在では「準備預金に階層化システムを強化す

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リブラを全否定したECB講演【民間通貨の難しさ】

リブラをターゲットにECBが講演

9月3日、フランクフルトで開催された会議でECBのメルシュ理事が『Money and private currencies: reflections on Libra』(貨幣と民間通貨:リブラの反響)と題した講演を行いました。日本のメディアでメルシュ理事が登場することは多くありませんので、名前を初めて聞いたという方もいるかもしれません(市場関係者ではさすがに名前

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2019年初めのフラッシュクラッシュは何故起きたのか

初めに、2019年初めに起きたフラッシュ・クラッシュを振り返りたいとお思います。

2019年1月3日7時頃突如暴落が起きました。

4円40銭程の暴落で多くの方が強制ロスカットにあいました。

一般的なフラッシュ・クラッシュの原因はAIによる自動売買により招いたという見解が一般的ですが、僕はこれに疑問を感じていました。勿論、AIによる自動売買と商いの薄い時間を狙った投機筋の仕掛けもあると思います

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自由貿易の本質は自国の経済体制の危機を外国に輸出すること

「ダグラスは、なぜ現代の政治家が二言目には貿易、貿易と言い、貿易が国際政治の主要な問題になるかを、すでに第二次世界大戦前に説明しています。現在の経済システムの構造的欠陥は通貨改革によってしか解決できない。通貨改革を拒んだ場合、国民の所得不足、企業の生産過剰、恐慌と言う問題に対する各国の対応策は、この欠陥から生じた矛盾や歪みのツケを外国に回すことです。いわゆる自由貿易の本質は自国の経済体制の危機を外

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リアルな通貨安戦争~1ドル=7.0元突破問題~

現実味を帯びてきた通貨安戦争
ドル/人民元相場が遂に1ドル=7.0元の節目を割り込みました。オンショア人民元(CNY)としては2008年5月以来、11年ぶりの安値、オフショア人民元(CNH)としては過去最安値となります。人民元急落を受け、2015年8月11日の「チャイナショック2.0」を想起する市場参加者も多く、金融市場は株・為替・債券の主要資産市場を中心に大荒れとなっています。元安に応じて為替操

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Modern Monetary Theoryの概説(note版)

こんにちは、私は望月夜、あらため、望月慎@motidukinoyoruと申します。(blog「批判的頭脳」、togetter、noteマガジン一覧)

今回は、立命館大学経済学会セミナーにて、望月夜名義で研究報告させていただいた、『Modern Monetary Theoryの概説』について、noteの形で紹介・解説させていただきたいと思います。

この報告は、後に論文(というより研究ノート)とい

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カードを無駄打ちしたパウエル議長

保険的なアクションは予想通り
7月30~31日に開催されたFOMCは、政策金利であるFF金利誘導目標を、「年2.25~2.50%」から「年2.00~2.25%」に引き下げることを決定しました。FRBの利下げは10年半ぶりです。また、米国債など保有資産の縮小(いわゆる「量的引き締め」)も、予定された9月末から2か月前倒しして終了させました。ここまでは概ね予想通りでした。量的引き締めの2か月前倒しは市

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リブラに通貨発行益はあるか?

1.リブラに通貨発行益はあるか?
 管理通貨制度の下では、中央銀行の紙幣は、返済が不要な負債である。ところが、資産の側では国債という利回りの高い(通常の経済であれば)資産に運用できる。
 これは、国家権力になって与えられた特権であり、「シニョリッジ 」(通貨発行益)と言われる。

 銀行の負債である預金についても、その1部は、定期預金という形で即座には払い戻す必要がない特権が認められている。このた

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