探幻花 第六話 糾合

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 梅花繽紛、玉管叨々、二月の雨はしとしとで、障子にほんのり影が映り、廓の狭い庭の苔は、珠滴淖々、雨の夕陽に薄紅梅が潺湲とした濡れ色で、奇突怪兀、骨ばる幹と、演迤澹沱と濡れた岩に、離々点々と新粧零落。

 衡の街の西北の、わずかに窪んだ花街の、朱塀の曲がる その中に、飛花青楼という妓楼があって、朱華緑葉の衣を襲ね、蘭の香りを薫らして、

「では、いきますね

 白紵 白紵、

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探幻花 第五話 元宵

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 一月の望を元宵という。望と云っても月より明るいのはランタンで、燈市照灼、鼓笳喧々な、寒さがぼうっと濁る夜になる。海から離れた衡の街にも、荒波沫は寄せ来るか、ごうと硬い風が吹けば、元日には門戸を閉てた、街の上の家々も、今宵ばかりは女子衆も外に出させて、人影参差、満路の嬉笑に、道の隅は却って暗く、車の螺鈿がちらちら揺れて、ぼろの幡が燈りに透けて、旧情衰謝、新恨惆悵、馬がたて

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【マジックミラー(5)】

のボールの

 身体を起こすと、視線のさきに人影があった。陽が沈みつつあるのだろう、視界は薄暗く、覚束ない。目を細めて、凝視する。

「ちょっとお兄ちゃん。しっかりしてよね」

 はっきりと聞こえた声はどこか幻聴のようだ。

「ラウちゃん?」なぜか妹がそこにいた。「なんでここに?」

 それはこっちのセリフよ、と近寄ってくる。目のまえまでくると妹は立ち止まり、腰に手を当て、仁王立ちする。視線だけを

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【マジックミラー(4)】

❤ラヴ❤

 兄が森に入ると、GPSが反応を示さなくなった。

 きっとこの森の地形か、または地質に問題があるのだろう。磁場が狂うのか、なんなのか。詳しい要因は不明だが、どうやら圏外であるらしい。

 見失う前になんとか兄の姿を捕捉することに成功した。追跡を続行する。

 森のなかは薄暗い。

 防寒は重層にしてきたはずだが、身体が総毛立つ。寒さもさることながら、ここは不気味だ。

 不気味なのは

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【マジックミラー(3)】

❤ラヴ❤

 兄がなにやらスキップをしている。

「あいつ……アホか」自分のように恥ずかしい。

 自然と手にちからが入る。ファーストフードが、ぐしゅり、とつぶれた。

 GPS機能を参考に、兄が通過するだろう地点で待ち構えていた。商店街の一画で、小腹が減っていたこともあり、ファーストフード店で見張ることにした。お店が二階にあったから、通行人たちが、ごみごみ入り混じるさまを、アツアツのハンバーガー

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【マジックミラー(2)】

のボールの

「いつまでついてくるんだよ」半ば自棄になって投げかける。案の定、返事はない。「はいはい」と頭を掻きむしり、「捜せばいいんだろ」と足元を見遣る。

 童女が、ちょこちょこ、まかまか、とついてくる。こちらを見上げ、目が合うと、なにが楽しいのやら、唇を一文字に結んだままにっこりとほほ笑む。

 まえ髪を、ぱっつんと斜めに切りそろえてある。背は低い。ノボルの腰骨よりも低いが、容姿からは幼さを

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【マジックミラー(1)】

【あらすじ】

幼女に促され兄は石版を追う。異常な行動にひたはしる兄を追う妹は、そこでふしぎな光景を目の当たりにする。

※※※本編※※※(25000文字)

      ・プロローグ・

      ***

 またかよ、と男は思った。

 なんとなく、そんな気がしていた。そろそろ大きい厄が訪れるころ合いではなかろうか、と危惧してはいた。一方で、「まだ大丈夫だろう」といった怠惰な油断がどこかにあ

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探幻花 第四話 厲風

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  第三話へ

 街の真ん中を流れる川に曇り空、角ばった橋に舞っているのは繊々とした風花で、ふっと沈んだ水に落ちれば、すっときれいにとけていく。そんな衡の十二月は半ばを過ぎて、雪はまだ、少し降ったり、山からの乾いた風になったりで、水の少ない川底に黒い石がごろごろと、東をみれば城壁は高く、盤鬱として山陂の歪みに添う坂で。その横にぼっこり盛り上がるのは古い墓、短い草に覆われて、ほこほことした

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これからもおもしろいものが書けるようがんばります!
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探幻花 第三話 無明

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 今朝よりは神無月、刈った稲藁吊るしたのも、雨から朝の寒風に、凍てぬまでも漸く霜で、辺り一面がさがさ きらきら、そんな中、衡の街は、暗い空に高楼苕々、背山巍々と、まりは店の用事で外に行った帰りに、南の裾野にむかってどんより曇った空の下、もう薄暗い道を下る。

 この間、街の外に出たときは、いつしか寺で眠りに落ちて、気がつけば南の水門にひかりに背負われて戻っていた。あれ以

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