夏休みの冒険

第一部の終わりとナミの告白

シンデレラパークでの長い一日が終わり、観覧車を出てから妙にしんみりするケイに、あえて雑な別れのあいさつをしたあと、いつものように『ウーーーーー』と来やがったパトからみんなで走って逃げた。その夜。

「いきなりだけどキャンプに行かねえか?」

 リビングのソファで、母さんが買ってきてくれたアイスを食べながらテレビを見ていたナミに俺は言った。

「は? きゃんぷ? なにそれ」

「野外にテントって小屋

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幕間5 ~ケイの独白~

それは、いつも通りの、まったく退屈な舞踏会だった。
 シンデレラパレスでコスプレできるってことで、けっこう期待していたんだけど、選んだ衣装は、結局いつものような、自分のキャラに合ったクールビューティな服。
 まわりからの反応もいつもの通り。綺麗ですね、美しいですね、女王様バンザイ。

 うんざりした気分でホールを抜け出し、扉を開けて、テラスに出た。
 いつのまにか日は沈み、パークは夜になっていた。

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5-4 真夏の雪と必殺キス

立ち上がりかけていたアイスクイーンが、見えない手で突き飛ばされたかのように、玉座にペタンと尻もちをついた。
 口はあんぐり、赤い瞳はぷるぷる震え、白い顔は真っ赤になっている。

「……あ、あ、あ、あ、あんたねえっ……! そ、そ、それがっ、フッた女に言うセリフかーーーー!」

「フッた女? なに言ってんだ? フラれたのは俺のほうだろ?」

「わ、私よ!」

「俺だっ」

「私だってば! このわからん

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5-3 仮装舞踏会と氷の微笑

外に出ると、シンデレラパークは大混乱だった!

「あ、兄貴! ここに居たのかーっ! とんでもないことになってるぞ!」

「ハヤトさん! 大変ですっ。遊具が暴走して止まらなくなってるようです!」

 シンジローとシモカワが駆け寄ってくる。その背後では、高速再生動画のような気味の悪い速度で、あらゆる遊具がデタラメに動いていた。

「ハヤトさん。えらいことになりましたなっ。パーク中が、悪意の反応であふれ

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5-2 星降るテラスとキミの笑顔

「いーくーぜーオラアアアァァァァ!!!」

「し、シンジロー! INABIKARI!  INABIKARI乗るばい!」

 火属性コンビはさっそくテンションマックスで犬のように駆けていく。
 対戦格闘ゲームのコスプレらしく、シンジローは改造学ラン、シモカワはよくわからんが白いハーフパンツの美少年風。歪んだ性癖のお姉さまたちが鼻血吹きそうな恰好だ。

「どら。天上で宇宙でも感じますな」

 なぜかブ

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5-1 シンデレラパークと招待状

その日の朝、カタギリ家に一通の招待状が届いた。
 ピンポンが鳴って、俺が外に出たときには配達人は消えていた。よほど足の速いヤツだったらしい。
 タイミングのいいことに、今後の方針を話し合おうとメンバーを招集したところで、カムラとカワハラ以外の全員がその場に居た。

「差出人は……【アイスクイーン】? なんだこりゃ……?」

「……微量の悪意の反応がある」ナミが固い声で言った。

「悪意だと? マジ

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幕間4 ~カムラ視点~

拷問のようだった福海大学の爆弾探しが終わり、なんで俺までと思いながら警察から必死に走って逃げたあと、ハヤトさんは「せっかくだからみんなで飯でも食いに行くか」と言い出した。

 俺とカワハラはこっそり離脱して、行きつけのゲーセン『大橋センチュリー』に逃げた。そんなのに付き合ってられるかっつーの。

「よーう。おまえらー。どうしたとやー? なんか疲れとるぜー?」

 大橋センチュリーの常連である『ジー

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4-4 福海大学【友情の炎護カスガ】

「む、無理だよ! 無属性にはなんの属性補正もない! 爆発の衝撃をまともに食らう! そんなことをしたら、本当に死んじゃう!」

 ナミが聞いたこともないような悲痛な声を上げた。

「ほかに方法がねえ! 俺の判断ミスでこうなった! 最初から全員を避難させるべきだったんだ! だから、俺が……」

 遠目に、音花火の筒が点火されようとしているのが見えた。音は聞こえない。変に静かだった。無音の世界で、ナミの

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4-3 福海大学 ~爆発寸前~

福海大学は、街区がそのまま敷地になったような巨大な大学だ。いくら総勢11人もの大所帯になったとはいえ、手に負える広さじゃない。

 ササハラの提案で、特に怪しい場所を中心に、渦巻きのように捜索範囲を広げていく手法を取ることになった。なんでもFBIの捜査手法らしい。
 コイツが来てくれて本当に助かったぜ。俺たちだけだと、間違いなく当てずっぽうに探しまわっていたところだ。
 渦巻きの中心は、当然、爆弾

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4-2 福海大学 ~捜索開始~

助教授の男によると、「大学を吹っ飛ばしてやりたい」という願望はずっと持っていたらしい。
 ポケットの中には、犯行声明のほか、複雑な化学式が書かれたメモと、爆弾の設計図の一部が入っていた。だが、肝心の『爆弾を仕掛けた場所』に関するメモは一切なかった。

 その記憶は、悪意に取りつかれていた男の頭の中にしかなかったのだ。
 そして、俺たちが悪意から解放したことで、それは綺麗サッパリ消失してしまった。

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