オレはスナイパー

オレとしたことが、昨晩はアラームを掛け忘れちまったぜ。

 だが、今朝は寝坊せずに起きた。

 炊飯器から吹きだす蒸気の音でな。

 スナイパーとして培われた能力を発揮したってわけさ。

   タイマーセットしていたわけだが、炊き上がりの音楽で起きるくらいじゃスナイパーの素質はないぜ。

 さて、今日も獲物を仕留めて来るとしよう。

 今日の獲物は、奴だ。

 太めで引き締まった体格。

 鋭い目

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7. moon

ウィリー
今日は満月だよ

こうやって僕たちは月を見上げているけれど
月からしたら
僕たちを 世界を
見下ろしているんだよね

きっと月は
何もかもをお見通しさ
この世のあらゆることを見ているんだから

楽しいことも

悲しいことも

全部知っているんだ

もしかしたら
アンデルセンの童話は
本当かもしれないよ

ウィリー
君の居場所も

月だけが

知っているのかもしれないね

『”僕”とウィリ

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[掌篇集]日常奇譚 第50話 裏返し

何かに憤ったことが一度もないのではないかと思うような女性が知り合いにいて、そのことについて少し話をしたことがある。
「もちろん怒ることはある」と彼女は言った。「ただ、それをすぐには出さないようにしているだけ。まずいろいろ考えることにしている」
「なにを?」
「いろんな可能性」
「可能性……?」
「思いこみや決めつけが多いと思うんだよね。人間の感情や考えって。あいつが悪い。あいつが犯人だ。でも実はそ

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ありがとうございます。また読んで下さいねヾ(*≧∀≦)ノ゙
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【創作小説】王子様の趣味

死んじゃった時はどうなることかと思ったけど、あの日あの時、彼が通りかかってくれて本当に助かったわ!

おかげで私はなんとか息を吹き返すことができて、意地悪な継母への復讐も果たせて、命の恩人である彼とはめでたく結ばれ、豪華なお城で暮らすことができるようになったんだもの。

誰もが羨む完璧なサクセスストーリーにうっとりとしたため息を漏らす私の横で、彼は言った。

「おっと、もうこんな時間か。長くはここ

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雨音

聞こえてくるのは、静かな雨音でした。

 穏やかで美しい音色は、やがて正体をなくし、私の血脈へと注がれていきます。

 流されていく愚かな思惑。

 この場所は、思い描いたものとは程遠く、険しいばかりです。

 悲しみで湿った土を砕き、撒いた種を見失うばかりです。

 たった一人で歩いてきた道のり。

 振り返れば、足跡は雨で流されていました。

 私はまた行方不明になるのでしょう。

 稲光、轟

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掌編「待合所。一人。」

突然の雨に濡れた髪を拭く術も持たず、逃げ込んだバスの待合所のベンチに腰掛ける。スマートフォンを取り出し、我が身の悲運を訴えようとしたが画面に写る自身の顔が清められた塩で出来た監獄に10年は閉じ込められるであろう、懲役刑に値する物の怪のそれだったのでスマートフォンはカバンに放り込んだ。全身から水が滴る。雨音が重い。家まで5km。絡みつく梅雨を引き摺って歩くような陽気さは持ち合わせてはいない。自販機で

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[掌篇集]日常奇譚 第49話 コックリ

「ねぇ、コックリさんで決めない?」と唐突に持ちかけてきたのだという。祥子という若い女性だった。
 笑っちゃうでしょう? とその話をぼくに聞かせてくれた知り合いの女性は言った。「ええぇ、なにそれ? と同僚の女性たちはいっせいに声をあげて、なかには笑いだす子もいたのだけど」
 設計課に誰が書類を持っていくかという話だったらしい。設計課は下品な課長のもと、無遠慮な男たちの巣窟となっていて、女子社員は誰も

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【創作小説】レンジでチンなんか大嫌い

レンジでチンなんか、嫌いだよ。

だって、ごはんをレンジでチンする時は、たいてい父さんや母さんが家にいない夜だ。

普段は父さんのガハハという笑い声や、母さんの優しい声が聞こえるこの家も、誰もいない夜はものすごく静かで、放課後の図書室みたいに不気味だった。

レンジの中でオレンジ色の光を浴びながら、くるくると回るサランラップのかかったお皿を、ぼくは黙ってにらんでいた。

聞こえるのは、ブーン、とい

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地面は黒く濡れていた

「死ねばいいのに!」
 女はそう言って1人で手を叩いて爆笑していた。IPAのクラフトビールからはじまり、角ハイボールを3・4杯、その途中に僕は合流した。それから赤ワインを2杯、そして今は日本酒を飲んでいた。刺身の盛り合わせやポテトサラダ、あん肝などがテーブルには並んでいた。料理にはさほど興味がないようだった。僕は大して面白いことを言ったわけではないのに、女は1人で笑い出し、1人なのに爆笑していた。

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『車窓』(超短編小説/400字)

母は、そわそわしていた。

   意味もなく花瓶の位置を変える。目的もなく台所をうろうろする。押し入れで何かを探すふりをする。

   今日、僕は東京に行く。

   初めて実家を離れることの意味を考えていた。それは母にとって、初めて子供を送り出すことであり、子供中心に生きてきた18年間が終わるということを意味する。

   今日、旅立つのは僕だけではない。母も旅立つ。僕という子供から。

「じゃ

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ホントにありがとう。伝わったってことですよね。
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