無題

前置きに時間をかけてどこまでも曖昧にする 何がこわいの

人知れず泣くのだろうな君のこと忘れないまま死ぬのだろうな

不器用で立ち止まれない人間の約束ばかり集めた新書

後悔はしないと決めた夜のこと 思い出せない嘘のきっかけ

うたかたのハードボイルドだれひとり死なない予知夢いくつもの黒

最初からずっと他人でいたかった 知らずにいれば痛くなかった

2019/01

#tanka #連作

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神様のアルバイト

トロリーバスはきっと淋しい顔をして青い隧道往ったり来たり

橋脚が受け止め続けた重力を夜毎解いてゆく海の熱

ビニールが指にくい込む 街頭の時計のひとつ狂いっぱなし

水面にぶち上がる魚あれほどに何かを為したことがないまま

暗闇に手を差し延ばすそこにあるはずの灯りの紐の、頼りな

抜け落ちた睫毛が痛いニッポンに誰のものでもない土地はない

神様の仕事みたいだ朝靄へスワンボートを迎えに行

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#25 Green Your Eyes

守るより守られていた いとしさが永遠になる夢を見たんだ

どうすればよかったのかな結末を変えられなかった光の中で

さよならはずっと言わない魂はいつでも君とともにあるから

安らかに眠れ この先もう二度と苦しまないでいられるように

どこまでもどこまでも碧 君の手をライ麦畑でつかまえて泣く

2018/12

『BANANA FISH』にどっぷりとハマり、アニメ最終回を観たあと気がついたら連作がで

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はじまりのうた。Side. 凪人

蝉、うるさいな……。
そう思いながら歩いていた。
まだ夏季休暇に入ってはいないけれど、連日の暑さに負けた教授達は、ほとんどの講義を終わらせるか休講にしてしまっていた。
そんな中、今日も元気だ夏バテ知らずの教授約一名は、この猛暑にもめげず何故か唯一クーラーのない教室で講義をして下さっている。
そして現在、俺はその講義を中抜けしてキャンパス内をうろついている。理由なんて立派なモノはない。単なる気分。

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第三回円錐新鋭作品賞★落選展

猫の部屋

冬の朝のスーパーがすき奥へゆく

審査員席のうしろのみなマスク

ペンギンが絵本の主役冬あおぞら

漫画家の自画像笑う日向ぼこ

冬夕焼け本引き抜けばゆれる棚

心臓に集う柚子湯の柚子むっつ

アウトレットモール迷宮抜けて雪

植樹待つあいだは斜め冬の星

はつ夢を忘れてとおい雨のよう

さよならをする七種を言い終えて

うさぎ座の触れあわぬ耳冴返る

きさらぎや切手に金のさくら透く

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【短編】旅人集う #05-02-02

五 新たな旅人が物語る、

 皆さん。

 皆さんにはたくさんの物語を聞かせていただきましたから、わたくしからも少しばかり、なにかお話することにいたします。
 皆さんのように語ることができるかもわかりませんし、この場にふさわしい話であるかもわかりませんが、ひとつ。

 ご存知でしょうか、あの花のこと?
 あの花野に咲いていたあのささやかな花のことです。

 ええ、そうです。あの花野。
 皆さんご存

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【短編】旅人集う #05-02-01

五 新たな旅人が物語る、

 皆さん。

 皆さんにはたくさんの物語を聞かせていただきましたから、わたくしからも少しばかり、なにかお話することにいたします。
 皆さんのように語ることができるかもわかりませんし、この場にふさわしい話であるかもわかりませんが、ひとつ。

 ご存知でしょうか、あの花のこと?
 あの花野に咲いていたあのささやかな花のことです。

 ええ、そうです。あの花野。
 皆さんご存

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はじまりのうた。Side. 波人

あー、あっぢぃなぁ全くよぉ。
しかも突然休講ってのはどういうことだ? んっとに。
まぁ、どうせ休講なんてねーだろとか思って掲示板をチェックしてなかった俺も俺だけど。
今は夏季休暇直前。講義はほとんど終わってっから、キャンパスにも人はまばらにしかいない。
そんな中、補講があると思って慌てて来たっつーのに、見事に休講だった。「補講」の意味。
暑い。暑い暑い。暑い暑い暑い暑い…………。
っていうか、こん

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【短編】旅人集う #05-01-02

五 新たな旅人が物語る、

 皆さん。

 皆さんにはたくさんの物語を聞かせていただきましたから、わたくしからも少しばかり、なにかお話することにいたします。
 皆さんのように語ることができるかもわかりませんし、この場にふさわしい話であるかもわかりませんが、ひとつ。

 ご存知でしょうか、あの花のこと?
 あの花野に咲いていたあのささやかな花のことです。

 ええ、そうです。あの花野。
 皆さんご存

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君と僕との最終戦

もしかしたら
もう恋をすること、以外
手段は残っていないのかもしれない

かたん、と西日が傾き
はずみでふれてしまった予定外に

速度を増して橙色から赤

長く伸びてくその夕刻

君が言った

「決着を、つけなくちゃ、」