霧の世界 ななじゅう

9日目の朝、謎の霧は現れた時のように、唐突に消え去った。景色が明るく照らされていた。道路や建物、草木の輪郭が鮮明に見える。快晴だった。頭上には、ほとんど雲のない青空が広がっていた。人々は建物の外に出て、呆然と空を見上げた。歓声を上げる者もいた。霧がないなんて変だとでも言う者もいた。

霧が晴れた翌朝。
未幸は自宅で食事をした。サンドイッチと野菜ジュースを飲んでいる。近所の公園で行われた配給で貰った

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女性と快楽を味わう。

いつもいつもは会えない、彼女の肌が恋しい。洋服越しにでも触れた瞬間、体温と一緒に伝わってくるあの感覚はなんなんだろう。

車の助手席で彼女の肩を抱いて、首筋に温かさを感じながら、おでこにキスをすると、あまりの心地よさに何度もせがまれてしまう。

ほっぺにもう一回。

まぶたにもう一回。

反対側も。

彼女は自分から顔を差し出してくる。優しく笑いながらキスをしてあげた。彼女はがまんができなくなって

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ゾンビつかいの弟子 5章4-1

これまでのあらすじ:全国でテロを繰り返してきた「人型のヤツラ」はいったん鎮圧され、その大半は全国の収容センターで眠らされている。
さんざんな受験生活を送った主人公だったが、この地方で一番有名な「T大学」に入学する程度の能力を示す。サークルは「漫画読書会」に所属。

目次と詳細なあらすじはこちら
https://note.mu/toma_mori/n/nac0d603b1a53

4.

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夜が来る(5)

初夏のあの日が忘れられない。庭の隅にある水道のそばにしゃがみこんで、まだ幼い未奈が、なにかをじっと見つめている。白いブラウスには汗のしみが浮き上がり、しっとり濡れた肌はつやつやと輝いていた。
 幼い僕は少し離れたところで、妹を見つめて立ちすくんでいる。

「おにいちゃん、だんごむし」

 僕がいることに気づいた未奈が、声を潜めて手招きする。我に返って、足音を立てないようにそっと近づいた。

  未

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ライゼン通りのお針子さん~新米店長奮闘記~10

第四章 踊り子さんからの招待状
 アイリスが店長になってから初めての夏が訪れた。そしてこの日仕立て屋に新たな客がやってくる。

「こんにちは」

「いらっしゃいませ、仕立て屋アイリスへようこそ」

たどたどしい片言の言葉であいさつした客は顔立ちも体格も整ったほっそりとした女性だった。

お客が来店したことを知らせる鈴の音で店頭へと出てきたアイリスは美人な女性にしばし見ほれる。

(うわ~べっぴんさ

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#4 オリジナル小説

前話はこちら

第一話はこちら

「忘れ物じゃなかったのね」

ヨルガはぽつりと言う。ギクリとした。洞窟の湿っぽさが今でも残っている気がして、思わず後ろ髪を触る。

「……ごめん」

「どうして謝る?」

「……」

こういう時なんて言えば良いだろう。感情がグチャグチャして、自分が続けたいであろう言葉がよく分からなかった。ただなんとなく後ろめたい。

「まぁ良いわよ、私でも初対面でそんな重たい話は

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ナンカヨウカイ「折る」②

緋山まひるは正真正銘の化け猫。 一名を除き、妖怪ばかり所属する便利屋「ナンカヨウカイ」の従業員として、理不尽な所長に日々こき使われる日々。 今日も所長の一声で、まひるは同僚の河童・渡と、唯一人間の高校生巫女・姫子とともに調査を開始する! 「折る」第1話はこちら

 窓の外から中をのぞくと、ジーパンに包まれた長い脚が見えた。
 足を高く組んで腰掛けているソイツは、何やらチャラチャラと装飾のされた、先

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【連載小説】横笛の手文庫【第五回】~りうの話



 ――横笛。
 というのはたしかに歴史上に存在する女人である。
 平家物語に出てくる、宮中に仕えた下級の女官だ。出家した恋人の貴公子に恋い焦がれて、彼の修行している京の郊外の嵯峨野まで追いかけていった。その貴公子はこの恋人の横笛と、その結婚に反対する父との間で、愛と孝心の板ばさみとなり俗世を捨てたのであったが、ここで御仏の道から逸れるわけにはいかぬと思いきり、ついに女に逢わず拒み通す。
 こ

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霧の世界 ろくじゅうきゅう

沢山の豆粒が落ちていた。しばらくしてそれが、大粒の雨が屋根を叩く音だと気付いた。ぼんやりとした世界に稲美はいた。彼は子供だった。小学校の高学年くらいだっただろうか。
稲美はクローゼットの中にいた。湿気のせいか、嫌な臭いがした。暗い。隙間から光の線が見えた。シャツやコートの間に埋もれていた。今、俺は何をしているのだろうか、と稲美は思った。動悸があった。子供の稲美は不安だった。これは、子供の頃の記憶な

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一年生になった~ら♪一年生になった~ら♪ 友達100人でっきっるっ かなっ!?

(誤)「一年生になった~ら♪ 一年生になったぁ~ら♪ 友達100人でっきっるっ かなっ!?」

できへんっわっ!!!

右も左も分からない状況で、一年生で友達100人できたら、凄いコミュニケーションスキル!

卒業する時は、友達100000人くらいは、できていることでしょう(笑)。

みんなに好かれることも大切♪ 

ひとりから好かれることも大切♪

何事も、小さなことの積み重ね。

(正)「一年

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