ルネの首 #21 宗教と歴史の人類学

それから更に数日後、アズに呼ばれて、ナオはセツェンと一緒に彼女の家に行くことになった。
 一応、ルネも背負っていく。置いて行こうとしたら、激しく拗ねられたとも言う。
「救済機関の登録は済ませておいたから」
「誰にも会ってないけど、ぼく」
 この数日間、セツェンとルネと子供たちとしか顔を合わせていない。この面子で同じ家に住んでいるだから当たり前だが、今日になってアズに呼ばれたわけだから、ナオは何も聞

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【連載小説】 コネクト #3

東京

 中央線の帰宅ラッシュは最悪だ。空気が薄く息苦しい上に、満員の車両に押し込まれている人々が発する体臭、香水に汗やタバコ、酒の匂いなんかが入り混り、余計に息が詰まる。

ヒカリは自分と変わらない位大きいギターケースを両腕で抱えながら目を瞑り、ただ時間が早く過ぎるのを待っていた。一緒にいるバンドメンバーのジョーに目をやると、彼はベースを入れたケースの上に自分の両腕を置き、文庫本を読んでいた。こ

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vol.71「選択肢の少なさが,絆に代わる」(『なめらかな世界と、その敵』伴名練/早川書房/2019年刊)

vol.71「選択肢の少なさが,絆に代わる」

みなさんこんばんは。
今週は、故あって更新遅延いたしました。

いまカナダにいるのです。海外研修です。

就活シーズンが近づくと、そこらじゅうのサイトで「留学経験はありますか?」と聞かれ、空白で出してばかりの日々についカッとなって、気づいたら現地に到着していました。

とはいえ半月程度では、とくにキャリアとして目立つわけでもなく、どちらかというと、留

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【連載小説】  コネクト  #2

観察係

 この仕事を長年していると、様々な星を見る事が出来る。生命がいる星、いない星、緑豊かな星、劣悪な環境の星と様々だが、ルカは主に未開の星を担当している。

生命のいない星では地質や空気のチェックなどをし、人類が住める環境であれば、土地を整えるために適切な人材を派遣するよう評議会に申請する。

ルカは天の川一帯にある星の定期的な管理、調査、観察を行っている。科学的な水準が高い星もあれば低い星

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◆1分で読める小説◆  一筆がき

今日は、このくらいで止めておこうか。
いや、あともう一つだけ、描いておこう。

最近、一筆書きに凝っている。
そう、一本の線でいろいろな図形を描くのだ。

最初は、幾何学図形が多かったのだが、最近は、生き物を一筆書きで描く事に凝っている。
デザイン的にもユニークな絵が描けるからだ。
モチーフは、いろいろある。
動物の尾を渦巻き状にしたり、羽を描くのも面白い絵が描ける。
いろいろな生き物の形状をアレ

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【連載小説】  コネクト  #1

〜はじまり〜

 何億光年先にある星々にもその知らせは届いていた。偏狭の星で、沢山の命が瞬時に無くなったのだ。誰もがその不穏なエネルギーを感じていた。一瞬目を離した隙に、我々の子供達がとんでもない事をしてしまったようだ。

 あそこは・・・地球。

このまま放っておいたら、他の星にも悪い影響が出てしまう。現状が変わらなければ、自滅し兼ねない。今まで何度も失敗を繰り返してきたが、もうやり直しはできな

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vol.64「なんて素晴らしい世界」(『ザ・ロード』コーマック・マッカーシー 黒原敏行:訳/ハヤカワepi文庫/2010年刊)

vol.64「なんて素晴らしい世界」

みなさんこんにちは。
今週はピュリッツァー賞作品です。

またも漫画『バーナード嬢曰く。』を参考に、
読了いたしました。

なにかしら、
核戦争的なものがあって、
滅んだ世界のエピローグです。

広義でいえば、たぶんSF…?

コーマック・マッカーシー、
『ザ・ロード』。
では、どうぞ…。

いま世界が

よくなっているか
悪くなっているか

というのは、文

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神の宿る箱2-秩序をつかさどるもの

2.登場人物 ユイ・I・マニン

電子データというのは、或る意味面倒だ。跡形も無く消滅してしまうから。

夕空を雪雲が足早に覆い隠してしまうと、ただでさえ短い晩秋の光を、闇に変えた。

街を漫ろ歩いていると、教会のある脇道からはマタイの受難曲が聞こえてくる。
正教徒の記念日に行われる公開処刑の為のレクイエムを練習しているのだ。

「こんな所に教会がまだあったなんて。」

位置情報と、外部刺激に反応

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vol.60「パイオニアはジャンルを代表できるか」(『ニューロマンサー』ウィリアム・ギブスン 黒丸尚:訳/ハヤカワ文庫/1986年刊)

vol.60「パイオニアはジャンルを代表できるか」

みなさんこんにちは。
今週はサイバーパンクSFです。

とっても読みにくくて、
人にも勧めにくいですが。

記念碑的な作品なので、
面白いかどうかは抜きにして、
みんな読めばいいSFだと思います。

教養教養。
…おすすめはできません。

ウィリアム・ギブスン、
『ニューロマンサー』。
では、どうぞ…。

頭にプラグを指して、
電脳空間に入るの

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vol.57「見目好い知性の待望論」(『華氏451度』レイ・ブラッドベリ 宇野利泰:訳/ハヤカワ文庫/1975年刊)

vol.57「見目好い知性の待望論」

みなさんこんにちは。
今回は、ある読書会の課題図書です。

ちょっと作ってみた読書会サークルのメンバーが、来週に読書会を企画しておりまして。

こちらの本を扱うそうです。

レイ・ブラッドベリ、『華氏451度』。
では、どうぞ…。

本書はSF。

華氏451度は、摂氏に直すと233度くらい。
これは、紙が燃えだす温度だそうです。

このタイトルは暗喩で、

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