君は美しい(最終夜)

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空港の中で30分ほど腰かけていたが、心はざわざわしていた。

なんとなく、背筋をしゃんと伸ばしていないと落ち着かない感じ。

チェックインカウンターがオープンしたので、先にスーツケースを預けに行く。

すぐに元いたイスに戻り、まわりを見渡すが、彼はいない。

出発時間まで、あと1時間半だ。

もう少ししたら、搭乗ゲートに行ったほうがいいだろう。

(来ないんだろうか

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第19話 土葬の国

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 置いて行かれた。
 取り残された。
 喪失感だけが心を埋め尽くしていた。
 覚えているのは、瞼の裏に焼きついているのは、燃え立つような小麦色の光だ。
 あの瞬間、世界の理が書き換えられた。
 そうとしか思えない光だった。
 神々しい、という言葉を思い浮かべて、そんな非科学的な単語しか連想できない自分が、何よりも変わってしまったのではないかと茫漠とした不安に駆られ

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第18.5話 Dreamed a dream(10)

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 汽車のステップに足をかけたところで、あれ、と立ち止まった。
 慌てて後ろを振り返った。自分の左手が、物欲しそうに宙に伸びているのをまじまじと眺めた。……変な格好。何しようとしてたんだっけ。
 誰を、連れて帰ろうとしてたんだっけ。
「……?」
 違う違う、そうじゃないっしょ。おかしいな。誰かを連れてくる予定なんて、今日はなかったじゃないか。
 でも、なんだろう。

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第18話 嘘

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 60、と明るく声が響いた。
 どこか遠くの世界で起こっている出来事のようだった。けたたましい警報音に、フロアを舐めつくす火の海。そしてこの、あまりにも和やかな機械音。59、と読み上げられる。58、57、56……と続いていく。
 僕は呆然と白い壁を見つめていた。
 思えばとっくに壊れかけていた。両目は塞がれて血の涙を垂れていた。顎の肉も削がれて白い骨が露出していた

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17.5話 Dreamed a dream(9)

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 太陽の下で、洗濯物を取り込んでいるライラの姿が浮かんだ。
 風にはためく大きなシーツを、小さな体でえいやっと下ろして、器用にぱたりぱたりと畳んでいく。あのシーツの中に、何か大切な言葉をそっと吹き込んでいたんじゃないだろうか。面と向かっては言えない思いを、ぱたり、ぱたりと畳んで閉じて。夜になって広げて使う誰かが、眠るとき、夢にでも見てくれたらいいと。そんな風に。

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君は美しい(第十六夜)

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「そのドレス、とてもきれいだ」

私のワンピースを褒めた彼は、白いシャツにジーンズ姿だった。
初めて出会った日に着ていた服だと、すぐに気づく。

「妹さんの誕生日パーティは、どうだった?」
「よかったよ。ケーキがすごく大きくて、食べきれなかったけど」

そう言ってウインクする顔は、初めて会ったときより打ち解けた、いつもの彼だ。

今日が最後だなんて信じられない。

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第17話 7人目

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 誰にも言えなかったことがある。
 伝えないことを選んだのは自分で、その選択を、ずっと悔いてきたことがある。
 今なら言えるような気がした。同じくらい、ああ、もう何も伝えなくてもいいかと、充足とも、諦めともつかない解放感に浸って目を閉じた。
 熱い。とめどなく額を汗が流れ落ちていく。拭おうかとも思ったけれど、ふと死ぬ人間が汗を拭ってどうするのだと気づき、とたん手を

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16.5話 Dreamed a dream(8)

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 置いて行かれた。
 2人の足音が遠のいていく。
 でも今は、追いかけるよりも、振り返ることのできない自分の首について考えるのが精一杯だった。だらりと垂れた右肩から下、まるで腱でも切られたみたいに力が入らない。指先もぴくりともしない。どうなってるんだろう。
 何をされたんだろう。
 目を閉じて、深呼吸した。

 ――ひどいこといっぱい言われたなぁ。

 違う違う、

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第16話 6人目

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「ゾフの元へ行くのだろう」
 部屋を出ると、思わぬ人物と鉢合わせた。いかにもこの男らしい、全て盗み聞いていたわけか。僕はひとつ頷き、ガサイの隣に並んだ。
「いつから風の国に?」
 世間話でもするように尋ねると、僕より頭一つは小さい屈強の壮年は、さもおかしそうに口元をほころばせた。
「私の近況が気になるか」
 ああ、と心の中で納得した。どうして今まで気づかなかったの

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第15.5話 Dreamed a dream(7)

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 なんで。
 この部屋にはファシオがいるんじゃなかったのか。
 どうにか風の国へと侵入し、ファシオの監禁場所まで辿りついた――そう思っていたのだが。代わりに待ち受けていたのは、口に布を押し込まれ、四肢を雁字搦めに縛られたレアだった。いつもは律儀に正している襟が淫らに開かれ、胸が露になってしまっている。大きく見開かれた瞳は泣き腫らした後なのか赤い。立ち尽くした俺と目

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