ジエンドが終わったあとに / 詩

エンドロールも流れ尽き

劇場内に明かりが灯っても

スクリーンの裏側で密かに

登場人物の生は続いていく

僕らは力の限りに疾走して

ハッピーエンドを迎えたのに

続編へと向かう時の狭間で

大切な人は去っていった

ジエンドで完全に閉じていれば

僕も君も石化しただろうけど

幸せな日々の記憶を

いつまでも保存できたのに

うすら寒くなったスクリーンを

鋭利なナイフで切り裂けば

世界は

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『毎日が観測史上初』からすやま るい

ぼくの起床時間を観測して
『スッキリ!』を流すテレビ

ぼくの出勤時間を観測して
きいろいでんしゃ は ホームに来る

改札に、パスモをかざす
きいろいでんしゃ で 職場へ向かう
改札に、パスモをかざす
あおいろのでんしゃ で 家へ帰る

ごはんトイレふろハミガキ、ねむる
おきる、ハミガキトイレふろごはん 

迎える朝 恒久平和の空は青色
今日も玄関を開けた瞬間に
「あたたかい風」

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僕は誰かに殺される / 詩

廻り廻って

みんな誰かに殺されるんだ

被害者であり

加害者であり

人のせいにするな

そう言うかもしれないけど

でも確かにそれは

誰かのせいに違いないんだ

役割は交換される

無自覚に犯される

過去から刺される

未来から撃たれる

犯人は誰だ?

僕は責めるだろうか

僕は赦せるだろうか

最期のときに

(詩/早乙女ボブ)

透明のねこ / 詩

買った記憶も
貰った記憶も
拾った記憶もない

それもそのはず
目に見えるねこではない

せめてねこぐらいは居てほしい
そうした寂しい願望の下
脳内に作り出された妄念だから

若いめすねこの白い柔毛はふわふわ
ところどころに黒いぶちがある

愛嬌があるというよりも
クールなのだけど
たまに甘えてくる仕草が
堪らなく可愛らしいんだ

それはまあ確かに
本物を飼いたいところなのだけれど
残念ながら僕は

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世界ビデオ / 詩

喜んだり悩んだり
悲しんだり怒ったり
恋をしたり失ったり

いつもドタバタ大騒ぎしているけど
一本のテープに記録されたイメージ

だから
早送りだって
巻き戻しだって
停止からの再生も

共有と専有は相矛盾せず
デッキに入れて操作さえすれば
お安い御用で
自分だけの時間軸の中で
幾らでもやり直せるんだ

だけど
記録媒体の外へ出ることは不可能で
何度も何度も同じ内容を
リプレイすることになる

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画材屋に行こう! / 詩

五番のバスに乗ってさ
地面のずっと下から這い出して
大きな街の画材屋さんに行こうって

正直なところ僕としては
特に欲しいものなんかないのだけど
君が行きたいと言うから

何を買いたいのかは知らないけれど
別に興味はないのだけど
君が行きたいと言うから

エスカレーターでごんごん登ってさ
色々なものがたくさん売っているね
なんだかもう頭がぐるぐるしちゃう

少し暑い季節
誰もが気怠い
午後の授業中

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最初の一滴 / 詩

朝早く家を出て
北へ北へと向かって
君に会いに行く

木造の駅舎から
人影もない目抜き通り
野良猫が横切る商店街
 
だけど
どうしても
欠片さえ見つけられない

冬も近い港町は
どんより曇って
しんみり寒くて

君は
蒸発して
雲になって
雨になって
川へ
海へ

最初の一滴を逃すまいと
駅前広場の水飲み場まで駆けて
冷たい蛇口を捻れば
浸透する記憶

そろそろ僕は
切符を買って
電車に乗って

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ノスタルジー

もう二度と
会うつもりなんてなかった
嫌いだからじゃないよ
好き過ぎたから

あの頃の僕じゃ
到底抱えきれないくらい
君の事ばかりで
そんな自分が怖かった

だけど今は
そこまで好きになれる人がいるって事
それだけでも素晴らしいと思うから

だから会わないようにしてたのに

久しぶりに会った君は
昔と変わらず綺麗で
一気に感情が巻き戻ったんだ

本当は会いたかった
ずっと僕の君でいてほしかった

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ねがお / 詩

零れ落ちた

さらさらの黒髪に

触れてみたり

鼻先に停泊していた

ほくろが

むくむくと

動き出したかと思うと

ぽろっと落下したあとの

小さな小さな穴ぼこから

白く細長いものが

くにゃくにゃと

頼りなく立ち上がって

踊るように揺れてから

くにゃくにゃと

穴の中に消えていった

落ちていたほくろは

ちゃんと元の場所へと

戻しておいたからね

おやすみ

(詩/早乙女ボブ)