目醒めー記憶喪失、歩行不能、嚥下障害を経て/SLE(全身性エリテマトーデス)という難病とともに生きる(9)

<2017年11月>

 病室で寂寥感を抱えたまま、私は地元のフットサルチームの仲間たちに、LINEを入れた。友人たちは、私の14歳の頃の発病から知っている仲だったので、家族を除いては、気兼ねなくこの込み入った事情を打ち明けられる、一番の相手だった。

 友人たちから、すぐに、私のことはもとより、妻や子供たちの事も気にかけてくれる返事が来た。一通りのやり取りをした後、私は、状況として、自分の上半身

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目醒めー記憶喪失、歩行不能、嚥下障害を経て/SLE(全身性エリテマトーデス)という難病とともに生きる(8)

<2017年11月>



 本章から先は、私の中で薄っすらと残っている記憶と、家族や友人たちから聞いた話、それぞれの会話の記録、画像、動画、その前後の処方せん、領収書、その他病院関係の書類から、情報を整理して、つなぎ合わせたものが、しばらく続く事となります。



 クリニックでウィルス性胃腸炎などの薬をもらって、週末を近くにある妻の実家で寝て過ごした。後の記録から思い起こされた事だが、私は

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目醒めー記憶喪失、歩行不能、嚥下障害を経て/SLE(全身性エリテマトーデス)という難病とともに生きる(7)

手記の本旨である再燃のエピソードに入る前に、ここまでの記述で、人生の大きな転機(結婚、子供、昇進)を迎える度に、自分の身体を犠牲にして、苦境に追い込まれてきた様に捉えられると良くないので、改めて強調しておきたい。
 実際、独りでマイペースで暮らしていた独身時代に比べて、責任や負担は大きくなったし、結果的には再燃という悲劇を迎える事となったのだが、それは、本来自分でコントロールすべきものだし、特に自

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目醒めー記憶喪失、歩行不能、嚥下障害を経て/SLE(全身性エリテマトーデス)という難病とともに生きる(6)

<社会人となった2000年代まで>

 高校時代は、SLEを気にして運動などは控えていながらも、それなりに充実した生活を送れたが、やはり多くの事を我慢していたことは確かだ。高校受験同様に、大学受験も自学自習を中心に遂行し、志望通り東京六大学の某校に合格した私は、軽音楽部でまた素晴らしい仲間たちに会い、大学生活では、好きな音楽に没頭し、深夜まで飲み歩き、さすがにタバコはSLEへの影響を考えて避けたが

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目醒めー記憶喪失、歩行不能、嚥下障害を経て/SLE(全身性エリテマトーデス)という難病とともに生きる(5)

<1991年の冬>

 入院生活も落ち着き、母の献身的なサポートや明るい看護師たちのサポートのおかげで、徐々に元の明るさを取り戻していったが、やはり夜になり、一人で個室で寝ていると、自然と涙が出てきて目が覚める事もあった。
 とはいえ、中学3年生だった私には、進路という現実的な問題が目の前にあった。私は、元来負けず嫌いの性格であった為、家族に頼んで教科書や参考書を取り寄せて、毎日朝昼晩と勉強時間を

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目醒めー記憶喪失、歩行不能、嚥下障害を経て/SLE(全身性エリテマトーデス)という難病とともに生きる(4)

<1991年の冬>

 自己免疫疾患であるSLEの治療は、ステロイドの投薬が中心という事だった。ステロイドは、副腎皮質ホルモンの一種で、炎症を抑えたり免疫を抑制する効果がある。そういった理由で、一般的な皮膚炎やアレルギー疾患に使われる事が多い。SLEを発症し、自分の免疫によって、自分の肉体を攻撃され、ダメージを受けた身体には、このステロイドが効果があるという事で、ごく標準的な治療とされている筈だ。

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目醒めー記憶喪失、歩行不能、嚥下障害を経て/SLE(全身性エリテマトーデス)という難病とともに生きる(3)

<1991年の冬>

 一通りの検査を終えて病室で待っていると、診察の区切りがついた医師が、病室にやってきた。大体の入院に関する規則については、説明を受けたと話すと、医師は話し始めた。

 「たけし君は、膠原病という病気に罹っています。正式名称は、全身性エリテマトーデスという病気です」

 私は、初めて聞くその病名に、ただ頭の中で(高山病とは違うよなぁ)と考えながら、ぼんやり聞いていた。その病気は

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目醒めー記憶喪失、歩行不能、嚥下障害を経て/SLE(全身性エリテマトーデス)という難病とともに生きる(2)

<1991年の夏>

 時は26年程さかのぼり、中学3年生だった私は、祖父母の家に帰省して、一日中、海で素潜りをしていた。おそらく多くの昭和世代の男兄弟育ちの次男が同じ経験をしているだろうが、私には運動狂いの3歳上の兄がいて、この兄と行動を共にしていた少年時代は、ほとんど自分の意思など無視されて、完全に主導権、いや支配力を持たれていたので、こう言った磯遊びも基本的にはペースをコントロールされていた

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目醒めー記憶喪失、歩行不能、嚥下障害を経て/SLE(全身性エリテマトーデス)という難病とともに生きる(1)

<序文>
 一介のサラリーマンである私が、自伝的手記を纏めるなど、おこがましい事とは思いながらも、到底普通では考えられない稀有な体験をした事も事実であり、それが、何処かで誰かのためになるならば、公開する意味もあるのではないかと思い、ここに掲載することにした。

<2017年11月>
 私は、会社からの帰路をマイカーで運転する途中、左胸の急激な痛みを感じ、側道に車を停めた。その痛みは、それまで人生で

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難病になって気がついたこと

今年の2月末、県内の大学病院で指定難病*1の一つであるSLE(全身性エリテマトーデス)*2との診断を受けた。
3月頭から約1ヶ月の入院を経て、4月から現在に至るまでの約2ヶ月半を自宅療養期間として過ごしている。

*1:指定難病とは
1)発病の機構が明らかでなく、2)治療方法が確立していない、3)希少な疾患であって、4)⻑期の療養を必要とする、5)患者数が本邦において一定の人数(人口

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