彼は外資系の仕事をしている彼女を問い詰める。「資金を横流ししているな?海外の両親に!」「なんでわかったの?ねえなんで……家族旅行のお金はすべて仮想通貨に換金したはずじゃない!」恋人をこれ以上哀しませないよう真実を伝える。「その仮想通貨はな、俺達の――」

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またのご来店お待ちしております。
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何か息苦しいと思ったら喉に海苔が張り付いていた。季節感のつららが肌に刺さる公園のベンチは少しだけ湿っていたが、多大に、映写機としての私を活躍させてくれた。最悪の場合このまま老いていくかもしれないのに、次の行き先はトイレか漫画喫茶だけ……。どうだ――。

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ありがとー。
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【低コストの総入れ歯を提供します】こんなチラシを見かけてしまった。最近増えてきたのであるが、モデルになっているのは私の妻で、総入れ歯歴十年のベテランだ。鼻が高い。そして主要場所でならどこでも自分の妻の姿を見れるのだからこの街が大好きだ。私も総入れ歯――。

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ありがとー。
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むくりと起き上がった彼はふと思う。「今の売れ行きはなんなんだろう」そう、この眠たそうな冴えない男は仕事人間だったのだ。頭の中は常にバーゲンセールでそうは言っても安売りはしない。管理職になってからというもの毎日見る夢は自社の製品下駄ギターが世界に――。

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ありがとー。
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悪霊という言葉しか当てはまらないし、これは。自分の左側に煤のかたまりがずっとへばりついていた。意識が奪われるような感覚はこいつのせいだったと説明できる。しかし今はもう自分たちの住処へ帰ったのだろう。私の左側は、空いてます。空き部屋よりがらりと――。

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いらっしゃいませー。
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「バック・トゥー・ザ……なんちゃら」思い出せないことが多くなった。記憶喪失から回復の兆しを見せていた彼女だったが、物事の端っこが消えてしまう。小さい頃に食べた自家製おやつの材料と分量は詳細に覚えているのに。連休に大事なことが何一つなかったような気が――。

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冷凍車のコンテナから出てきた彼。急に熱が出たと言って早退した。昨晩の飲み会は外でバーベキューだったから風邪をひいたのだろう……そんな矢先、彼から退職願いを渡されたのだった。「退職なんておかしいな、だって最初から就職してないんだから」最後に――。

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ありがとー。
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和紙に何か文字を書いてオーブントースターで焼くと何が出来ると思う?私の友人達は形代か付箋なのではと言う人が大半だった。しかし湯気を上げるそれを皿に盛る時に始めて品名がわかる。正解は誰もわからない。シュレディンガーの猫、または不安によるストレスが――。

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近くて遠いとはよく言いますが、実際はどのような感じなのでしょう?近くて遠いは確実に成り立たないのですが、私が最近感じた手触りは”近くて遠い”でしたので、今こうして「近くて遠い」を使っているのです。もうやってらんないよ。しっかりしろ、まとまりとして――。

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いらっしゃいませー。
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潔癖な幽霊 (1 minute novel)

『潔癖な幽霊』

古びた二階建てアパートの203号室。

ふと目に入ったのは、艶のある長い黒髪。

もちろん僕の髪じゃない。

ベッドに落ちていたぐらい、最初は気にしていなかったさ。

だけど、日を追うごとに増えていく髪が気持ち悪くって。

勝手に掃除をしたら、彼女驚いてたよ。