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スーパー・ササダンゴ・マシン新たな主戦場「劇団ムー」を見た!

12月17日、久しぶりに取材なしの旅に行ってきた。向かったのは新潟。スーパー・ササダンゴ・マシンが座付き作家を務める「劇団ムー」の舞台(i-MEDIA国際映像メディア専門学校実習棟3Fシアター)。脚本・演出ササダンゴマシンということで、これは見なければと。で、見た興奮そのままに書いている。

今回は追加公演。「マッスル」でプロレスの追加公演やった人が本当に演劇で追加公演やるんだなぁと。いや旗揚げ公演も見たかったしラジオのイベントも新潟での試合も見たかったんだけど。とにかく新潟でのササダンゴ/マッスル坂井が見たかった。まあDDTでのササダンゴも見れてないんだが。ともあれ実際のところ、活動の比重としては今は新潟なんだろうなというのを感じている。

坂井精機でプラモデルを開発し自腹でラジオ番組を作りタレント業もして、そして今度は演劇。地元のアイドルグループRYUTistの演劇公演だ。主宰はメンバーの五十嵐夢羽さん。だからムー。演目は「古町女子高校 相撲部物語」。古町というのは会場があるRYUTistの活動拠点の町。

前年は全国制覇したが今年は部員1人になった女子高相撲部がいかに復活するか。スポ根ものでありメンバーが「相撲系アイドルグループ Nocotta」を結成して歌って踊る場面も。そこで使われるのはもちろんRYUTistの楽曲で、つまり演劇だけでなくRYUTistのライブの要素もあるメタ構造というか。

アイドルイベントとして欠かせないライブパフォーマンスを織り込みつつ、同時にこれはまぎれもない「スーパー・ササダンゴマシン/マッスル坂井作品」なのだった。
会場にはスクリーンがあり、これをフルに使う演出。そこはプロレスの大会での仕事ぶりと変わらない。オープニング映像、出てくるのはRYUTistの面々なんだけど「ロンリー・デイズ」が似合いそうな。

相撲の試合シーンの前には煽りVが入る。役柄上の相撲部員を演じたVのはずが、演じているようで素のようで、もう普通にササダンゴも出てきて、やはりここもメタ構造。いやプロレスっぽく言うと虚実皮膜か。関係者と本当に生電話で会話するシーンもあり、そこもまた役を演じながらRYUTistのメンバー個々が喋っているように見える。けれどもやっぱり演劇として外せない流れもあるわけで、素とか演じるとかってなんでしょうねと。役柄に実人生が重なったりすることもあるのが坂井作品。

劇団ムーの公演は来年も続き、新作を作るだけでなく東京公演もやりたいそう。ササダンゴ/マッスル坂井の新たな主戦場の一つと言ってよさそうだ。アイドルイベントでありなおかつ作家性がはっきりと打ち出されており、やっぱり劇団ムーは「マッスル」、「まっする」あってこそ。そういえばパワポプレゼンの場面もあった。

カーテンコールでは「東京では本多劇場で」なんて言っていたササダンゴ。しかし演劇の街・下北沢でやるなら「マッスル」も「まっする」もやった北沢タウンホールがいいんじゃないかと思ったり。

追加公演は昼夜の2部公演。どちらも見たがインターバルがわずかな時間だったにもかかわらず変更・修正が随所に。結果、さらに盛り上がって夜の部ではスタンディング・オベーションが。いや本当にそれくらい素晴らしかった。

私はアイドルが好きだがRYUTistは生で見たことがなかった。知識もそんなにない。逆にRYUTistのファンでプロレスの知識がない人も多かったはず。で、そのどちらの人間も楽しめるものになっていた(と思う)。

プロレス通ならニヤリとか、そういうことでは完全になくなっている。構造であれ小ネタであれプロレスを知っているから面白い、知らないと面白くないというわけではないのだ。ササダンゴのラジオ「チェ・ジバラ」知ってると面白いというのはあったが、それもごく一部。誰にとっても開けているエンタメ。

メチャクチャ笑いながらしみじみ思ったのは、「劇団ムー」、すなわちササダンゴ/坂井の新たな取り組みは旗揚げ公演も追加公演も新潟でしかやってないということだ。今のところ東京でも大阪でも見られない。新潟だけ、古町だけ。新潟の人が新潟の人向けにとんでもなく面白いものを作って見せている。こんな凄いの地元だけでやってたのかよと。DDT、マッスル、まっするの流れ、その最先端は新潟にある。今のところ新潟にしかない。東京でやる時は地方巡業ならぬ東京巡業か。いや東京も大阪も「新潟から見た地方」なのか。

そしてササダンゴ/坂井は、もうほとんどプロレスを必要としなくなっているのかもしれない。リングを使わず、プロレスの試合という形式も取らず、しかしとてつもなく面白いエンターテインメントを作っている。もちろんDDTは「実家」だし「覆面プロレスラーのスーパー・ササダンゴ・マシン」という軸足があるからできることでもあるんだろう。でもこれからの彼はどんどん「プロレス界の人」ではなくなっていくんじゃないか。「プロレス的センスをもったエンタメの人」というか。それで全然いいんだと思う。そして拠点は新潟。だから新潟で見ないと。東京のマスコミどれくらい見たんだろうか「劇団ムー」。

まあそれをいうならご当地アイドルは地元でのライブが見たいよねと。NegiccoもそうだしRYUTistも。いやRYUTist、初めて生で見たけど本当に凄かった。楽曲のクオリティがとかライブのクオリティがという話はよく見聞きしたが、こちらとしては「ササダンゴが座付き作家の舞台」というワンクッションで入りやすくなった。キャリアのあるグループなので「劇団ムー」が新規のきっかけ。

歌も踊りも演技もそれぞれの個性も素晴らしくて「この人たちが東京にベースを移さず新潟で活動を続けてるの凄いな」と胸を打たれるような気持ちになった。今さらで申し訳ないんだけど、いやNegiccoもアルビレックスもそうなんだろうけど、新潟の人たちにとって「新潟にはRYUTistがいる」と思う時の誇らしさ心強さ愛おしさはどれくらい大きなものだろうかと。そう思いながら見るRYUTistのパフォーマンスに、なんだか涙が出そうになった。

新潟には凄いエンターテインメントがある。見に行かなかったら分からなかった。劇団ムー、次回公演も見たい。RYUTistのライブも。たぶん「地方だから」でも「地方なのに」でもなくて、今の新潟にこれをやる人たちが揃っていたということなんだろう。

※なお、同日にスターダム新潟大会が開催されているのを知ったのは「劇団ムー」昼夜公演のチケットを取ってからのことだった。


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