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へなへなの逸材、アイスリボン・真白優希を今から見ておいたほうがいい理由。


8月9日にデビューしたばかり、当然ながらまだ未勝利の選手なのだが、どうにも気になるのがアイスリボンの新人・真白優希である。
練習生として「ホワイト」と呼ばれていた時代から、これはもしかして逸材なんじゃないかと感じた。エキシビションで号泣。ドロップキックで倒されてギブアップ。かと思うと終了ゴング後もエルボーを打ち続けたりする。気が強いんだか弱いんだから分からないが、とにかく感情のダダ漏れっぷりが凄まじい。それはプロレスラーに向いているということでもある。


デビュー戦が終わると、すぐに上野公園での夏祭り興行が始まった。12日から14日、3日で7大会。それが終わると普段の道場マッチに若手興行P'sPartyに後楽園ホール大会もあって、急速に試合経験を積んでいる。そしてそこで“大物”ぶりを発揮している。
8.12上野公園、夏祭り初日第1部の第1試合に真白は出場。対戦相手は8.9横浜文化体育館でICE×∞王者になったばかりの鈴季すずだった。真白にとってはデビュー2戦目、すずにとっては王者としての初戦だ。
両者が入場したところで真白がマイクを取る。おそろしいことにベルト挑戦のアピールだ。すずはベルト奪取の際に「NGなし」「誰の挑戦でも受ける」「人間じゃなくてもいい」と言っていたから挑戦したいらしい。「人間じゃないの?」と言われた真白は「宇宙人だ!」。


リングサイドで写真撮りながら、これ本当に挑戦しちゃったら最高だな、「NGなし王者の初防衛戦」として抜群じゃないかと思ったが、さすがに取締役選手代表の藤本つかさが認めなかった。まあデビュー2戦目、未勝利だから仕方ない。かわりに何か特別なルールで、ということで試合は10本勝負になり、すずがあっという間に6本先取して勝利した。
だがしかし、そのあっという間の中で場外エスケープ、堂々と水分補給タイムを要求するのだから真白はやはり大物なのだった。実力はまだまだどころの話じゃない。けれども目が離せない。


その後も真白は2カウントルールの試合だとレフェリーに説明されて「かしこまりました」と返事してみたり、タックル合戦で「お前が走れ!」と要求するところを「走ってください、どうぞ」と促してみたり、キャッチフレーズ“摩訶不思議”そのものの面白さを見せている。歩き方からして極端に歩幅が狭いというか、ヒョコヒョコしている。コール時のポーズも定まっていない。しかし何だか楽しそうではある。
ラム会長が中指を立てれば「ダメです」とたたみ、なぜか会長も「今日だけだぞ」と言うことを聞いてしまう。得意技「いくぞー!ホワイトー!」と叫んでのダイビング・クロスボディは、相手に「もうちょっと前にお願いします」と距離の指示を出してから。


思い出すのは元アイスリボンの真琴だ。かつて“無気力レスラー”と呼ばれ、へなへなのヘナチョコだった。たくさんのファンが真白を「なんか昔の真琴みたいだな」と思ったようで、8.29後楽園の絆トーナメントでは真琴&真白組が実現している。
実を言うと僕が初めてアイスリボンを見に行ったのが「真琴vsメカマミー」で、そういう意味でも真白を見ると「あ〜、アイスリボンだなぁ」と思うのだった。こういう選手を許容するのが現代のプロレスのよさだろう。どんなタイプがいてもいいのだ。


といって、単に「弱いだけ」「未熟なだけ」でもない。これも(かつての)真琴と共通する部分なのだが、真白は「ヘナチョコレスラーとしての表現」がメチャクチャうまいとも言えるのだ。見ていて面白いのであって「ダメだこりゃ」ではない。まあ変な話、体がデカくて運動神経もいいレスラーの試合でも全っ然面白くないこともあるのがプロレスだ。じゃあ真白の目の離せなさっぷりと比べて「レベルが高い」のはどっちなのかという。


とにかく真白にはこのまままっすぐ育ってほしいと思う。誰の影響も受けずに、自分だけのプロレス道を歩んでほしい。ただ、今の真白の面白さが味わえるのは今だけかもしれない。レスラーは成長する。それは今の真琴を見れば分かることだ。真白だっていつか“ちゃんとした”レスラーになる可能性があるし、ベルトだって巻くもしれない。いやその場面見たら泣くな、俺。
そういう感動が待っているとも言えるし、だからこそ「今の真白の面白さを今のうちに見ておいたほうがいい」とも言いたい。飄々としていて、でもやっぱり彼女も負けず嫌いではあるようだ。同じ時期に練習生だった石川奈青のデビューが決まると、「ホワイト」は毎日泣いていたという。プロレスラーは負けず嫌いの分だけ伸びる。


先にデビューしたのは年上でもある石川。だけど真白は“文体デビュー”だ。すずも石川も予定通りの文体デビューができなかったのに、真白はスルッと大舞台のリングに立った。もしかして“持ってる”のか真白。今の真白を療養中の石川がどんなふうに見ているのかも気になる。2人はライバルなのか、それとも今はまだ比べるもんじゃないのか。とにかく真白とアイスリボンの若手戦線は見ておいたほうがいいですよと、そのことだけはお伝えしておきたい。

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