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はたらクリエイトができるまで

(1)はじめに

株式会社はたらクリエイトの代表の井上です。長野県上田市でリモートチームサービス「hatakuri」を運営しています。

はたらクリエイトは子育て中の女性を中心に総勢71名となり、人手不足に陥りやすい企業の成長をサポートをするリモートチームサービスを展開しています。2019年5月には長野県佐久市に2拠点目を開設する予定です。

株式会社はたらクリエイトは長野県上田市のコワーキングスペースHanaLab.(ハナラボ)の活動の一部が事業化し、2017年12月から始動した法人です。事業化した当初はHanaLab.のことを知っているスタッフも多くいましたが、徐々に当時のことを知らないスタッフも増えてきました。

そこで、今後はたらクリエイトに参加してくれるスタッフのみなさんに自分の会社のルーツを知っておいてもらいたいなと思い、HanaLab.からはたらクリエイトができるまでの変遷をまとめておきたいと思います。

(2)「HanaLab.」とは

■概要
HanaLab.は2012年2月に長野県初となるコワーキングスペース「HanaLab.TOKIDA」として始まりました。2012年11月に一般社団法人ループサンパチとして法人化し、2015年4月にHanaLab.UNNO、2015年10月にHanaLab.CAMPとそれぞれ規模感や属性によって異なる3店舗の体制で運営していました。

HanaLab.はフリーランスやNPOの方々、小規模な企業の方、県外企業のサテライトオフィスなど様々な方々にご利用いただいてきました。HanaLab.がきっかけで今まで繋がらなかった人たちが繋がり、様々な化学変化が起きたことがHanaLab.の1番の価値だったと思います。

■開設するきっかけ
今でこそHanaLab.は地域活性の取り組みをしている団体として、多くの方に認知いただけるようになりましたが、開設当初はそのような高尚なビジョンではなく、単純に私の「友達づくり」の一環でした。

私は愛知県名古屋市出身です。信州大学に進学し、大学時代は上田で過ごしました。卒業後東京の企業に就職、福岡県でキャリアをスタートしました。そして、社会人になり3年ぐらい過ぎた頃、妻が上田出身ということもあり会社を辞めて上田に帰る選択をします。

上田市に移住した後は、ご縁もありモバイルコンテンツ企画制作のフリーランスとなりましたが、気づけば上田市で気軽に仕事の相談をできる知り合いがいませんでした。その時は、妻の家族4人ぐらいしか上田で話せる人がいなかったのです。

地域との関わりがないことが、こんなにも社会的に孤独感を生み出すとは予想していませんでした。それからは意識的に友人をつくるようにし、飲み会やイベントも主催してネットワークを広げていきました。

この広がりがコワーキングスペース開設に繋がっていきます。何事も行動してみると、自分の想像を超えることをこの時感じました。

■HanaLab.のビジョン
HanaLab.は「ワクワクしよう!」をビジョンとしてスタートしました。皆がワクワクして働くことができれば、きっと地域は楽しくなると思っていましたし、私自身もワクワクして働いている人たちに囲まれていたいなと思っていました。

そして、そんなワクワクの気持ちだけで突き進み、気づけば3店舗総床総面積1000坪の施設運営まで拡大していきました。今思うと地方最大級のコワーキングスペースだったかもしれません。

当初は漠然と「ワクワク」という言葉を使っていましたが、HanaLab.の事業を通して、「誰かのためになる」「社会が前進する」ということが自分のワクワクの源だということに気づき、はたらクリエイトでもその考えを引き継いでいます。 

現在は、そのコワーキング事業を各建物の大家さんに引き継いで、はたらクリエイトの事業に注力していますが、その過程はまた別の機会に記事にしたいと思います。

■はたらクリエイトの前身HanaLab.UNNO

HanaLab.UNNOは女性の働きやすい環境を作るという目的で、コワーキングスペース・シェアオフィス・キッチン・託児所を融合した施設です。対象が子育て中の女性ということもあり月額利用料を支払うコワーキングのモデルだけでなく、働き手となってもらいその管理費で運営するモデル「ママカラ」を構築しました。

当初は、子育て中の女性のネットワークもゼロ、ママカラのような業務委託の経験もゼロの状態からスタートだったので、子育てサークルの代表者会議で宣伝したり、色々なイベントを開いたりとコミュニティづくりの点でも大変でした。しかし、仲間とともにゼロ状態から試行錯誤しながら進めてきたことは本当に楽しかったですし、今の礎になっていると感じています。

(3)ママカラ

■概要
子育て中の女性は、働ける時間に制約があり、また子どもの病気等で休まざるを得ないことがあるなど、本人にとっても雇用する企業にとっても大きな壁になってきました。

そのため子育て期の女性は、パートタイマーなどの責任が比較的少なく時間の融通が利きやすい非正規として復帰する場合が多いです。一方で、子どもが大きくなったときにフルタイム勤務に戻したいと考えたときに、正社員に転換しにくいことが社会課題となっています。

ママカラは個人と業務委託の契約を結び、チームで仕事を分担しながら、担当した業務分の報酬が受けられる制度としてスタートしました。複数人のワーカーでグループを組んで業務を進行することで、時間的制約や突発的な休みを相互にサポートし合えるという仕組みはこの時から始まり、現状の働き方の基盤となっています。

■ママカラをやってみての課題感ママカラを開始してから、この働き方に共感して多くの女性が集まるようになりました。

その当時はまだ業務委託実績が少なく特徴的な強みもなかったため、企業への接触の仕方としては、営業というより「ママカラの活動を支援してください」というスタンスの方が色濃くありました。
そのため、受注できる業務量が少なく単価も安いという時期が続きました。それにより業務が定着しない、スキル育成が進まない、管理工数ばかり増えて報酬はも増えないという負のスパイラルに陥り、大きな課題となっていました。


■業務委託型(ママカラ)から雇用型への切り替え
経営状況が厳しくなる中、HanaLab.UNNOという施設や子育て中の女性が働ける環境を継続させるために、業務発注のパートナー企業を見つけ出すことは最優先事項でした。そのため、企業のホームページから問い合わせ、興味を持ってくれた企業へ訪問して取り組みの説明をする、取ってきた仕事の実績づくりのために惜しまず働く、ということを地道に繰り返していました。

そんな中、地方の子育て中の女性の働き方を一緒に作りましょう、というベンチャー企業との出会いました。この出会いが、ママカラをはたらクリエイトの仕組みへと一段押し上げることになります。

最初は、ライティングを中心に20人分のまとまった業務受注でスタートしました。これが、業務委託から雇用に切り替え、腰を据えて育成に取り組めた大きな要因です。

また、CSRのような「支援」ではなく、双方の事業成長を目的として取り組めたことで、業務のクオリティ向上につながり、スタッフも成長していくことができたと考えています。

■株式会社化へ
株式会社にした最大の理由は「社団法人として企業と業務委託契約を結ぶことの難しさ」でした。本来、社団法人は複数企業が基金を出資し、組合や協会などの組織を運営する目的で使われることが多く、企業が社団法人に対して業務を発注する事例が世間一般的に少ない状況だったのです。そのため、営業先の企業内での稟議に時間を要し、業務に障害が出始めていました。

また、金融機関の借入等に関しても株式会社の方が有利だったことも理由の1つです。

こうしたことから、2017年12月にママカラは「株式会社はたらクリエイト」として再スタートを切ることになりました。このタイミングでサービス名も、ママカラから「hatakuri」に変更しています。

(4)はたらクリエイト

■みんなで決めたビジョンと社名
「はたらクリエイト」という社名は、「はたらくをクリエイトすることで、仕事を楽しむ人を増やす」という気持ちが込められています。スタッフと社名やビジョンを考えるブレストを何度も繰り返してビジョンを固めた後、ふと出てきたワードがそのまま社名となりました。

ちなみにこの社名に決めた後、ストレートすぎる名前が恥ずかしく、決定後しばらくは誰も社名を言わない、ということが起こりました(笑)。今では「良い名前ですね」と言われることも多くなり、「はたらクリエイト」という名前を口にすることに、ようやく違和感がなくなってきました。

このような遊び心がコワーキング時代からの私たちの文化であり、未知の領域にチャレンジする原動力でもあります。

■事業の意義
女性は結婚や出産を機に退職をし、子育てが安定してから社会復帰する場合、パートタイマーとして復帰するケースがほとんどです。

本来、パートタイマーは1つの雇用形態でしかありません。しかし、決められた時間で決められた業務を行う位置付けが多いことから、「一定以上に責任を追わない代わりに安く働く」という、なんとなくパーツ的に働くイメージが根付いていることが事業を通してわかりました。

パートタイマーを含む非正規社員には、正社員と比較して1/3〜1/2程度しか訓練を実施しないというデータもあり、非正規社員は実務を回す一部の機能として多くの企業も捉えていることがわかります。

子育てから復帰する際に非正規社員を選択しやすい環境、実務を回す一部の機能として非正規社員を捉える企業など様々な要因が重なり、女性は一度キャリアが断絶すると正社員に戻りにくくなります。

はたらクリエイトは、社会で必要とされる人材を育てたいと思っています。そのために、今までのパートタイマーに求められてきた働き方だけではなく、責任を複数人で分散する仕組みを構築することで経験を積み、女性が長期的なキャリアを描けるようようになって欲しいと考えています。。

事業の意義については、別のnoteで詳細を書きましたので、そちらも読んでいただけると嬉しいです。

https://note.mu/hatakuri_inoue/n/n1a9bad3886ae



■事業の成長
◎初期
はたらクリエイトの初期は当初20名でスタートし、3ヶ月後には14人増え34人になりました。

当時は、業務をディレクションできるのが社員(現取締役)しかいなかったため、業務が増えるに従い社員の負担が大きくなり、新しい業務が始まるたびにチーム編成をやり直していたため、スタッフにも負担をかけていた時期でした。

この頃は、控え目に言っても「1進めば10の課題が出る」ような、数多くの課題を認識できた時期でした。課題に対しての1つ1つの対策が、リモートチームサービス「hatakuri」の核を作っていったように思います。
   

◎拡大期〜現在
現在では70名以上のスタッフが在籍しており、リモートチームとして顧客の事業に伴走するように、サポートさせていただいています。また、会社の拡大とともに、全てのスタッフが育ってきています。

その中でも、チームリーダーとして業務のディレクションができるスタッフや、スプレッドシートの関数やGAS (GoogleAppsScript) を使いこなして業務を効率化できるスタッフも育ってきました。

課題であった社員の負荷も徐々に分散でき、新しい企業の案件に取り組みながら少しずつ拡大することができてきています。次々に新業務が始まるため、依然としてチーム編成の変更などは多いですが、スタッフも変化や課題を一緒に乗り越える中で、成長の機会だと受け止めてもらえるようになってきています。

「時間の制約があるだけで社会的弱者ではない」というスタンスを中にも外にも見せていくことで、成長と自立を促していると感じています。このような変化が、業務を通して社会に価値を創出できる「hatakuri」を支えています。

■これから先
私たちの思い描く社会は、現在のはたらクリエイトの事業だけでは実現できません。

リモートチーム「hatakuri」の事業を中核として、もっと直接的に社会に影響を感じられる仕事づくりも必要ですし、ママカラの当初のように社会との接点や自分らしい働き方をもう少し気軽に体験できる仕組みも必要です。

「子育て中の女性」と一括りにしてネガティブに捉えられがちなイメージを私たちが壊し、それぞれの段階によって働き方を選択しチャレンジできる環境を作っていくことで、仕事を楽しむ人を増やしていきたいと思っています。

また、仕事を楽しむお母さんを見て、子どもたちのキャリア感が醸成することもできれば嬉しい限りです。

(5)《まとめ》思いだけで走った5年間とタネが花咲く瞬間

HanaLab.時代はまさに思いだけで走った5年間でした。この地域に足りないものは何だろう?と常に考え、とりあえずやってみる精神で様々なことにチャレンジしてきました。

今でも経営者としてまだまだ未熟ですが、あの頃は経営者になった自覚もないまま拡大していったため、地方に新しい種を植えられた一方、財務的には自転車操業以前の問題でした。そのため、色々なことが中途半端になり、当初応援していただいていた方々にも多くのご迷惑をかけたことはとても反省しています。

一方、その中でたくさん植えてきたタネの1つが「はたらクリエイト」という会社となり、今では70名以上も子育て中の女性を雇用する花となっています。

一時期は逆風が吹く中、遠くでなんとなく噂されていることを耳にし、精神的にとても追い詰められている時期もありました。そんな状況でも、一緒に走ってくれた社員やスタッフ、手を差し伸べてくれた方々にはとても感謝しています。

今は、この会社が「この地域にあって良かったね」と言われるよう、もっと事業を醸成させていくことが、恩返しになると考えています。

また、次にこの地域で新しいことにチャレンジする若者が出てきた時には、自分がピンチの際に手を差し伸べてもらったように、私も笑顔で手を差し伸べられる人間になっていたいと思います。

最後になりますが、はたらクリエイトのビジョンや取り組みについては、ダイレクト・ソーシング・ジャーナルに寄稿した以下の記事にまとまっていますので、こちらも是非ご一読ください。


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