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事業をはじめたきっかけと私自身の原動力

(1)「株式会社はたらクリエイト」とは

はたらクリエイトは、2017年に事業を開始した、長野県上田市にある会社です。「はたらくをクリエイトすることで、仕事を楽しむ人を増やす」をビジョンに掲げ、「女性が長期的なキャリアを見据えて働くことのできる環境」を核に、企業の成長をリモートチームとしてサポートする「hatakuri」というサービスを展開しています。

都市圏には様々な企業があり、女性が長期的にキャリアを醸成していける環境が徐々に整ってきました。一方、地方には時間的制約のある人材が選択できる職種が少なく、今までのキャリアを活かせる職種や興味がある仕事を選択しづらい現状があります。

私たちはその地方において今まで地方に少なかった職種と、ライフステージに応じて長期的にキャリアを醸成できる環境を作ることで、その課題解決にチャレンジしています。

また、当事者ではない自分のチャレンジの原動力は、私の「母」のキャリア感が大きく影響しています。今回は、女性の働き方の現状や課題と合わせて、そのお話もさせていただきます。

(2)この事業の意義

■女性の働き方の現状
近年では育休取得することが当たり前になりつつあり、正社員であればキャリアを断絶せずに子育てしながら働くことが可能となってきましたが、結婚や出産を機に退職せざるを得ない女性にとってはまだまだ課題の多いことが現状です。

「2015年出生動向基本調査(国立社会保障・人口問題研究所)」によると、第1子を出産する際に、出産前から就業している女性の46.9%が退職しています。

参考:http://www.ipss.go.jp/ps-doukou/j/doukou15/NFS15_reportALL.pdf

特に非正規社員は2010年〜2014年に出産した女性の74.8%が出産を機に退職しています。この結婚・出産に伴う退職が女性の就業率を30代前後に低くする「M字カーブ」を引き起こしています。

また、「女性のライフプランニング支援に関する調査(内閣府)」によると、女性が考える「理想の働き方(下図)」として、子どもが小さい頃は時短勤務(パートタイマーなど)で、短時間かつ勤務時間を融通の利きやすい働き方を希望することが多いです。そして、子どもが小学生になると、正社員などフルタイム勤務を望む人が増えることがわかります。

参考:http://www.gender.go.jp/research/kenkyu/raifupuran/houkoku19-index.htm

しかし、「現実の働き方(下図)」は、子どもが小学生・中学生になる時期になってもパートタイマーといった時短勤務での働き方が多いことがわかります。正社員などのフルタイムの割合は子どもが小学生や中学生になる時期においても減少しており、パートタイマーとして復帰をすると正社員への転換の難しさがわかります。

結婚や出産による退職でキャリアが断絶すると、時間制約のある時期に正社員として再就職することは、とてもハードルの高いこととなっています。地方、特に長野県の場合は、サービス業や製造業の検査などパートタイマーとして復帰することが多くなっています。

■パートタイマーなどの非正規社員の課題

参考:https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12602000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Roudouseisakutantou/0000063163.pdf

上記のグラフは産業別に計画的なOJT訓練・OFF-JT訓練の正社員と正社員以外の実施有の割合です。グラフからもわかるように、パートタイマーをはじめとした非正規社員は、正社員と比較して1/3〜1/2程度しか訓練を受けていないため、非正規社員は「実務を回す一部の機能」として多くの企業も捉えていることがわかります。

結婚や出産による退職でキャリアが断絶し、「普段からパソコンを使用しない業務」や「マニュアルに従い、主体的に考えて働くことが重要視されない業務」に非正規社員として復帰することで、いざフルタイムで働ける時期になったとしても正社員に転換できない、という課題とつながっていきます。

今後、子育て以外にも介護などにより時間を制約して働かざるを得ない人材が増えていく中で、人口減少による人手不足が深刻化する企業は人材戦略や制度を見直す必要が出てきています。

■「パートタイマー」のイメージを覆す
はたらクリエイトのスタッフはUターン、Iターン者など県外から移住してきた女性が多く、結婚や出産を機に退職するなど、キャリアの断絶を経験している人がほとんどです。

本来「パートタイマー」は1つの雇用形態でしかありません。しかし、実務を回す人材という位置付けが、「一定以上に責任を追わない代わりに安く働く」という、なんとなくパーツ的に働くイメージが世間一般的に根付いていることが事業を通してわかりました。

はたらクリエイトは、女性のキャリア断絶の課題を解決し、社会で必要とされる人材を育てたいと考えています。はたらクリエイトでそのままキャリアを積んでいってくれる人もいると思いますし、地域の企業で活躍していってくれる人や起業する人も出てくるかもしれません。

そのために、今までのパートタイマーに求められてきた働き方だけではなく、責任を複数人で分散する仕組みを構築することで、時間的制約のある女性がパートタイマーという働き方でもキャリアを醸成させていくことのできる環境を作っています。

まだまだ道半ばですが、目標を持ち課題を乗り越えた先の仕事の楽しさを、スタッフにも体験してもらう機会を増やしていきたいと思っています。

(3)私自身の原動力

私の母は大手予備校の数学講師でした。0歳の私を背負いながら、予備校の採用試験を受けに行ったそうです。その時から私がはたらクリエイトの事業を始めることは決まっていたのかもしれません(笑)。

私が小学生の時は、テストの採点者欄の印鑑押しの手伝いをよくしていましたし、大学生〜社会人になってからも、母からは「仕事の楽しさ」や「人の役に立つ喜び」をよく話してくれました。

「数学は美しい」とか「人が綺麗だと思う理由は数学で証明できる」と言われながら育った私は、やはり学生の時から数学は得意でしたし、いま事業を行う際にも自然と数学を活用しています。そんな母は現在、名古屋市のカルチャーセンターで「数学はミステリー」という講座を60代・70代の方々に教えているようです(笑)

一方で、団塊の世代で競争社会を勝ち抜いてきた父からは、「拓磨は甘いから社会で通用しないぞ」と言われ、子どもながら社会は厳しいのか楽しいのかどっちなんだろう?という気持ちを持っていました。

その両極端の両親の元で育ったことが、社会課題をビジネス視点で解決しようとする今の私の礎を作ったと思っています。これが私の原体験です。

そういった経験から、両親が子どもへ与えるキャリア感の影響について考えるようになりました。昨今「キャリア教育」ということがよく言われますが、一番子どもが影響を受けるのは両親のキャリア感だと考えています。その中でも、幼少期比較的長く過ごす母親の影響はとても大きいはずです。

私たちの事業を通して仕事を楽しむ女性が増えていけば、きっとその子どもたちは新しい社会を前進させる大人になっていってくれると信じています。結果がわかるのはまだ先になりますが、それが私のこの事業をやっている楽しみの1つでもあります。

(4)終わりに

女性は出産し子育てをする過程で、社会から離れる時期があります。そして、一度仕事から離れると、復帰に際して「誰かに迷惑を掛けてしまうのではないか」「自分にできることはあるのだろうか」という不安を抱え、自身のキャリアを諦めてしまうケースが多く見られます。この現状は、女性自身にとっても社会にとっても大きな損失でしかありません。

私たちは「はたらくをクリエイトすることで、仕事を楽しむ人を増やす」というビジョンのもと、女性が働きやすい環境を作り、社会に対して高い価値を提供することが目的です。そして、その過程で培ってきたノウハウを今後も積極的に発信していきたいと考えています。

子育てなど時間的制約のある女性は、時間的制約があっても働くことのできる制度や環境が整えば十分に能力を発揮できます。私たちが発信することで、女性が活躍できる企業が増えたり、はたらクリエイトのような取り組みが全国に増えていったら嬉しいなと思います。

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