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好きな道具を探す。

息子を保育園に預けて、妻と恵比寿に上京した。
恵比寿ガーデンプレイスで催されている生活のたのしみ展が目的地だ。
息子と過ごす時間も大切だけど、妻と過ごす時間も、一人の時間も大切にしたい。
この考えもペース配分も健康なときから変わらない。
最近よくガンになって何が変わりましたか?と聞かれるけど僕自身は全く変わっていない。

僕は自分が使用する道具は心が豊になるものを選びたい。カメラやスマホ、鉄砲やナイフもそうだった。

道具というのは使用していて楽しくなったり、心が豊にならなければ僕は魅力を感じない。

値段が高価なものがいいとか、便利で最先端がいいとかそういう基準ではなく、心が踊る道具が好きだ。

バルミューダのトーストを注文する。恵比寿まで上京したんだ、美味しいもの食べさせろ。と妻の顔に4K画質で書いてある。

噂には聞いていたけど、これは美味い。
以前うちでも購入を検討したけど、結局シロカのオーブントースターを購入した。
バルミューダと価格帯は同じなのだけど、シロカは4枚焼けるので時短を考えて購入した…が、明らかにシロカよりも美味い。

これはきっとパンが美味しいのだ、トッピングが美味しいのだ、焼いている人たちの技術が高いのだ。そう自分の顔に4K画質で書いて妻の顔を見たけど、妻はジッと展示されているバルミューダのトースターを心が踊るときの表情で眺めている。

確かにこのトーストが毎日の朝食なら生活が豊になる。

ほぼ日の永田さんに案内されて土楽さんのブースに入る。

病人になってヒマ人になり、外でお酒を嗜む機会が減り、自宅でお茶やコーヒーを淹れている。お茶やコーヒーの回数が増えると、湯飲みやコーヒーカップが欲しくなる。陶器市や骨董品店などで探しているが、いい陶器とは一期一会だ。それが楽しい。

僕は気に入った陶器を購入すると、翌日早朝の光で撮影をする。
妻と子どもが寝静まる一人で過ごす早朝の光が好きで、翌日に撮影するのは早く自分の仲間に入って欲しいからだ。

好きな道具を好きな光と時間帯で撮影する。それだけで自分の好きな写真が完成する。

ただ陶器の撮影というのは難しい、どの部分にピントを合わせるべきかわからない。口を当てる部分なのか、お茶なのか、側面の模様なのか。

いったいどこが陶器の顔なのかわからない。人間は基本的に目に合わせればいい、そこが顔だからだ。作家にとって何を大切にして、誰のため何のために製作したのか話を聞くのが一番面白い、そこがその陶器のピントを合わせるポイントだ。

そうこうしていると、糸井さんも来てくれた。周りのお客さんもテンションが上がる。ピントを目に合わせればいいなんて偉そうに書いたけど、糸井さんぐらい多くの人に認知されて撮影されまくっている人は、基本の足枷が外れる。ピントなんて気にしないでいい、シルエットでもなんでもいい。テンションの上がったときに撮るのが一番だ。

糸井さんと永田さんの案内でほぼ日キャップレス万年筆ブースに案内していただいた。確実に贅沢を味わっている、ありがたい。

今回の一番の目的はこの万年筆。
日常的にパソコンとスマホで文字を入力することが大半なので、せっかく文字を書くときは丁寧に書きたいと思うようになり。キャップレスで日常的に気軽に使える万年筆が欲しくなった。パソコンやスマホが大半だからこそ直筆も価値を持つものだと感じる。

“ ひとりであるということは、孤独を意味しない。ひとりを怖れない者どうしが、助けたり助けられたりしながら、生き生きとした日々が送れるなら、それがいちばんいいと思う。 ”というメッセージが万年筆に“Only is not Lonely”と短く印されている。

文字を書く前に一度このメッセージの意味を考えたい。

自分の名前と息子の名前で試し書きをした。

この日、一日で“写真家の幡野さんですか?”と何人かの方に話しかけられた。
八王子では言われたことがないけど、上京すると高確率で言われる。
悪いことしないけど、悪いことできないなと感じる。

サポートされた資金で新しい経験をして、それをまたみなさまに共有したいと考えています。