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北海道の旅。

浅生鴨さんと田中泰延さんと永田泰大さんと古賀史健さんが帯広で本をうる旅をするというのを出発する一週間前に知った。おもしろそうなのでちょっと予定を調整してカメラを片手にぼくも遊びにいった。

つい最近あたらしいカメラを買った。
ライカのQ2というカメラだ、いまのカメラは性能はほぼ横並びなので、何を使ってもおなじ写真を撮れる。だからこそ性能に左右されずに使いたいカメラを選べる時代になった。

カメラというのは車の運転と同じで、運転方法を学べばどんな車でも運転できる。あとは自分の好きな車やライフスタイルにあった車を選べばいいのだ。カメラの選び方は車の選び方にとてもよく似ている。

そして車を買ったら運転してどこかに旅に行きたくなるように、カメラを買うと写真を撮りにどこかに旅に行きたくなるのだ。

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北海道に向かった日は台風15号が関東に直撃した日の朝だった。
JRはほぼ全線で運休か遅延や減線。八王子から東京方面行きの電車は激混み。これに乗って途中で止まったら多分死ぬ。

アナウンスで「急病人のお客さまの救助のため…」となる可能性もある。
これで死んだら、鴨さんたちは全然悪くないのに、すこし気まずいおもいをするとおもう。なので安全策をとりタクシーで空港まで向かった。

空港までは3時間もかかった、料金は23,000円ほど。このタクシーは羽田空港からお客さんを乗せることはできず、空の状態で八王子までまた戻る。もしも帰りも3時間かかったならば、6時間運転して23,000円の売り上げで、高いものとはいえず、売上としてはちょっと損だ。

そんな話をぼくがすると「私は売り上げはあまり考えないで、お客さんの笑顔を考えています。」と話してくれた。

話を聞くと、数年前までこの運転手さんは不動産の会社を経営していたそうだ。胃がんをきっかけに会社をたたんで、治療に専念していたが治療により食事がうまくできなくなり、お酒をたくさん呑むようになり、これではダメだと治療と平行しつつ、ゆるめに仕事を始めたそうだ。体重は30kgも減ったらしい、ぼくは治療で20kgも増えた。ひとことでガン治療といっても人によって随分とちがう。

運転手さんは不動産の不労所得があることも大きいけど、お金があるだけでは意味はなく、誰かの役に立っているという意識がガン治療には必要なことなのだと感じていた。

ぼくもガン患者であることを伝えて、終始3時間笑いっぱなしの車内だった。
空港に到着すると、声が枯れていた。

もうすでに、たのしい旅は始まっている。

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空港でも台風の被害は出ていた、施設にダメージがあるため搭乗する飛行機までバスで向かう。バスの台数が少ないため出発はどんどん遅れる。そんなことに怒っていても仕方がない。

このときはまだ、被害の全容はつかめていなかったけど、関東は台風という自然災害に遭っていたのだ。

無事に札幌まで運んでくれたAIRDOさんには感謝しかない。
機内で写真をたくさん撮っていた、飛行機っていままでにたくさん乗ってるのだけど、かならず写真を撮ってしまう。

きっと何度乗っても飛行機がワクワクするような乗り物だからだとおもう。きっと飛行機が苦手な人は飛行機で写真を撮らないんじゃないかな。

スマホで写真を撮ると、カシャってなってしまう。あれを不快におもう人もいるんだけど、ぼくは誰かが撮るスマホのシャッター音が好きだったりする、人は好きなときや、感動をしたとき前向きな感情のときに写真を撮る。

だから誰かが好きなタイミングに居合わせられたことが嬉しかったりする。何を撮ってるんだろうと気になる。

でも、ぼくは写真を撮る枚数が人よりも多いので、不快感を周囲に与えないようにシャッター音がならないカメラで撮影をする、シャッター音に関してQ2はとても優秀なカメラだ。

飛行機を降りるときに、キャビンアテンダントさんにお手紙をいただいた。
揺れる機内で書いてくれたのだろうか?とてもうれしかった。いつもはJALを利用させてもらうことが多かったのだけど、これからはAIRDOがあれば利用させていただこうかな。

AIRDOさん、いつでもお仕事のオファー待ってます。

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札幌から帯広までレンタカーで向かう。

帯広空港まで直接行けばいいのだけど、北海道の道を運転するのがぼくは好きだからだ。北海道特有のやたらとデカいレンタカー屋さんで車両の傷チェックをしているときに、飛行機がとんできたのでおもわず写真を撮った。

まだ初心者マークをつけた従業員さんに「飛行機っていいですよね。」と話しかけられた。そんなひとことをパッといえるあなたの方が素敵ですよ。とおもいながら車内に乗り込み笑顔で別れた。

車は帯広から先の釧路で乗り捨てる、もうこのお姉さんには二度とあわないかもしれない。きっとこれから彼女がどんな仕事をしようと、北海道にきた人を笑顔にしてくれるような、素敵な仕事をしてくれるとおもう。

イベントには20分遅れでなんとか到着をした。
みんな笑顔だ。たくさんの笑顔をあふれている。だからぼくたちも笑顔だ、このイベントは北海道地震から一年だったことによる復興イベントだ。

復興に関わる方法の答えは一つではない、自分ができる方法でいいのだ。
なにも募金やボランティアだけが方法ではない、祈るだけでも立派な復興の方法だ。

先週、台風15号の被害の大きい千葉県南部に行ってきた。
笑顔がなくなったわけじゃないけど、笑顔は減っていた。でも被災地に必要のは笑顔だとおもう、ちょうど数日前に武井壮さんがボランティアで炊き出しを行なっていたそうだ、きっと多くの人を笑顔にしただろう。

人を笑顔にするというのは、とても素晴らしいことだ。

イベント後の帯広で焼き鳥のお店に行った、お店に入った瞬間暑い。
もう暖房入れてんだっておもったら炭火の熱が理由だった。
きっと炭もいい炭を使ってる、当然うまい、鶏ってうまい。

帯広の夜道でバニーガールを見かけた、ドラゴンクエスト以外でバニーガールを見たのは初めてだ、本当にいるんだ。涼しそうだった。

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翌日、十勝プラザで本を売った。
お客さんはまばらだけど、ゆっくりと一人一人と会話ができるので、とてもたのしい時間が過ごせた。ホールの真ん中のピアノがおいてあった、鴨さんがピアノを弾く。うまい!かっこいい!!

鴨さんのお友達の森山さんも戦場のメリークリスマスを弾いた。ピアノが弾けるってすごい。高校生がやたらいてRADWIMPSの耳にしたことのある曲を弾いていた、すごいぞ。みんな格好いいぞ!!

ぼくたちが本を売っていた後ろで、高校生たちが写真展の準備をしていた。
十勝の写真部の高校生が一斉に作品を展示していた。

どんな写真を撮ってるのだろうと、お邪魔してみると、やはり…あまりいいものではなかった。写真雑誌の老舗、日本カメラ的なアサヒカメラ的なおじいさんたちが撮りそうな写真ばかりだった。

当然だ、この高校生たちを指導や講評しているのがおじさんだからだ。

おじさん写真が悪いわけじゃないけど、こういう写真はおじさんになってもおばさんになっても撮れる。高校生にとって一番撮ることが簡単で、おじさんおばさんが一番撮ることが難しいのは、まさに高校生の生活なのだ。

もっと日常を撮ってほしい、いましか撮れないし、とった写真は宝物になる。
数人、光る原石の子もいた。写真にかかわらず勉強だってスポーツの部活だってそうだけど、コーチングでおおきく変わるのだ。

高校生に人を撮るコツはありますか?と聞かれた。
学校で片想いしている子を撮りましょうと答えた。

最初は恥ずかしいし、バレないように、こっそりと撮ってしまうのだけど、コミュニケーション能力がある人はスマホで躊躇なくTIKTOKとか一緒に撮っちゃう。つまりカメラの性能ではなくコミュニケーション能力が全てだと伝えた。

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コミュニケーション能力ってこういうことね。
この旅でぼくが一番きもを抜かれたのが、泰延さんがスマホで人を撮るとき。
カメラをくるっと向けて人を笑わせるの。
半端ないよね、わらない人いないでしょ。

ぼくはこういうの絶対できない。だって恥ずかしいし、幡野さんってスマホで写真とらないから使い方知らないのかな?みたいな空気になっちゃいそうだし、そもそもそのリスクが気になってできない。

泰延さんみたいな人が性能いいカメラとかレンズとかつけちゃうと、かなわないだよね。写真って本当に人柄や性格が出る、それがおもしろいのだ。

写真はカメラの性能で撮るわけじゃない、カメラの性能は人柄を後押ししてくれるだけだ。

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岡書店さんで本を売ったあとに、六花亭の本店に行った。
本店の正確な場所がわからなくて、車内でああでもないこうでもないとみんながいっていたら、鴨さんがここをキャンプ地とするみたいな感じで「ついた先が六花亭。」といいだした。丹頂鶴の一声みたいだった。

ああ、こういう大人になりたい。これくらいの感じで生きたい。
鴨さんと会うたびにシンパシーを感じてしまう。

六花亭をあとにして、すでに廃線になって観光地になっている幸福駅に向かった。この日は台風の影響なのか、なかなかみれない夕日だった。

よく晴れた日の夕日が、地平線に沈んでからじわじわと暗くなるまでの時間をマジックアワーやエンジェルタイムって撮影用語でいう。よく晴れた日の朝と夕方の2回、それぞれ20分ほどチャンスがやってくる。この光で撮影をするとどんなものでも美しくなる。

ぼくもこの時間帯がとても好きだ。レオナルド・ディカプリオが主演した映画「レヴェナント」はこのマジックアワーでも撮影しているシーンがおおい。とても綺麗な映像だ。

人は綺麗な夕日をみるとおもわず写真を撮ってしまう。
しかし、じつはその夕日で照らされた街や人、景色を撮ることが大切なのだ。夕日を撮るのは極端なことをいうと電球を撮るようなものだ。でもぼくもおもわず夕日を撮る、撮っちゃうよね。

飛行機に何回乗っても写真を撮るように、綺麗な夕日だって感動して撮っちゃう。きっと大昔の人も、未来の人も夕日や朝日を眺めているとおもう。

だから写真を撮るのは当然だ、でも夕日を背にして夕日に照らされた世界もまた格別に美しいのだ。

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帯広空港でもたくさんの人に声をかけられた、写真もたくさん撮った。
旅というのはたくさんの人と話すことだとおもう。
旅先であった人はもう二度と会えないかもしれない、でもそれがいいのだ。

みんなは東京に向かって、ぼくは翌日釧路へ一人旅をする。
セイコーマートにとめてメロンソフトを食べる、この瞬間がぼくは北海道という感覚になる。静かになった車内で、さみしさをまぎらわすためにラジオをつけた、みんなでワイワイする旅も一人を向き合う旅も、とてもいいものだ。

病気になる前も、病気になってからもたくさん旅をして、たくさんの人と会話している。一度としておなじような旅はない。

旅というのは出発地と目的地を描く線のようなものだ。

台風の影響でタクシーに乗った運転手さん、AIRDOのキャビンアテンダントさん、レンタカーの新人さん、北海道の人たち、帯広の人たち、この先であった釧路の人たち、全てが素晴らしい思い出だ。

北海道でたくさん本が売れた、本を売るという大変さを経験できたことも貴重な経験だった。

写真集はほぼ日のサイトで購入されると、小さな別冊の写真集が付きます。ぜひ。



サポートされた資金で新しい経験をして、それをまたみなさまに共有したいと考えています。