お店に来た中国人の親子

 最近は近所の総菜やおにぎりを売る店でバイトしている。私は作るのもやりたかったのだけど、どう見てもほかの人が握る(といっても型に入れるんだけど)のよりも倍は大きくしてしまう私に、握る仕事は回ってこなくなった。おにぎりの重さは決まっているのだが、えっ?この値段でその重さ?って、何より自分がびっくりしちゃうので、どうしても大きくしてしまうんだ。気づくと。ええ。私はでかいのが好きです! 小さいおにぎりは悲しすぎる。小さいと、握ってて、悲しくなっちゃう。でも、そんなの店からしたら採算合わないから、はいはい、あんたは販売しててねって。。。まぁ、もともと販売接客希望ではあったんだが。

 それで日々、売っている。おにぎりだのお惣菜を。いろいろな人が来る。このあいだは中国人らしいお母さんと子供2人が来た。男の子と女の子。3~5歳ぐらい。子供はどこの国でも世界共通でキャッキャして、体を揺らし、落ち着かず。うろうろきょろきょろ。お母さんはそういう子に何度も注意しながら、時間をかけておにぎりを選んでいた。日本語は片言だ。でも、旅行者というよりも(その店には旅行者の海外からの人もよく来る)今現在はとにかく在住してる人、という風だった。

 そうして、やっと注文が決まり、片言の日本語と指差しで、注文し、総菜も取って渡し、包んだり会計したり。その間も子供はキャッキャして、お母さんは注意して。

 それで、目の前に、試食用のお菓子が何種類かあったので、蓋を開けて、子供たちに「ほら、ほら、これ、食べてみな~。おいしいよ~」と身振り手振りも交えて伝え、子供たちは急に神妙な顔をして、一つ二つ取って食べて、うんうん、と頷く。甘い、砂糖を固めたようなお菓子だ。その間はほぼ直立不動になり、もぐもぐもぐ。

 お金を払いながらお母さんは、何度も何度もありがとうありがとうという。そして、すべて済ませ、また、頭を深々下げてありがとうありがとうと言い、子供たちはバイバイ~と手を振って、ものすごくうれしそうに、とてつもなくうれしそうにして帰って行った。

 そのときにハッとした。そうか、この人たちは、普段どれだけ遠慮して生きてることか、と。中国人、というだけで、今の東京では一歩距離を置かれたり、うるさい、マナーなしみたいなレッテルを貼られて、よそよそしい接客を受けたりするのかもしれない。

 試食は販促のためにお客様に勧めてくださいと、店長から何度も言われてるからやっただけだ。子供がいたから、特にそうしたにすぎない。お母さんが選ぶも、ゆっくり待ったが、それはほかのお客さんにもしてることで、おにぎり迷う人なんて大勢いる。そんなに忙しい店ではない。

 でも、それは彼女たちにとっては特別なサービスを受けたことになるのかもしれない。当たり前のサービスだけど、それさえ受けずに、普段は小さく遠慮してるのかもしれない。中国人、というだけで。遠慮して生きてる。東京で。それはお前の思い過ごしだ? そうかもしれない。それならいい。でも、そんな風に感じてしまった。


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