近隣の駅を急いでいたら、リュックやら鞄を脇に置いて、小さなカバンに頭を乗せて、床に転がってるおばさんがいた。年の頃、たぶん、私と変わらない。50代半ばぐらいか、いや、もうちょっと上か？　えっ？　と思うが、みんな知らん顔で通り過ぎる。えええ？　と、「大丈夫ですか？」と話しかけたら、すごく威勢のいい声で「大丈夫じゃないっ！」と答える。マジか？　「じゃ、お水飲みますか？」と言うと、「いらない！　下痢になるから！」と、また威勢のいい声で答え、目をつぶってしまう。

　受け答えがきちんとできるし、身なりもちゃんとしていて荷物もあり、急を要する病気でもなさそうだし、ホームレスの方でもないし、深刻に精神を病んでる方でもなさそうだし、と、とりあえず、トイレ行くわ、私。。。と、トイレに入った。ええ、急いでトイレに向かってる途中でした。

　で、出てきたら、若い男性警官が、彼女に話しかけていた。「どうしたんですか？」「は？　どうせメトロが呼んだんでしょう？　追い出すんでしょう？」と相変わらず威勢がいいが、横になったままだ。

　警官は「いえ、違います。倒れてる方がいらっしゃるから見て来てください、と通行人の方が教えてくれて来ました。どうしました？」と、意外とソフトに優しく話しかける。すると彼女も少し気持ちが和らいだのか、延々とそこから自分の体調を話す。「でも病院に行っても相手にしてくれないの。追い返される」と、不満をぶちまけていた。

　もっと聞いていたかったし、どうしたらいいか、もうちょっと考えてみたかったが、行かなきゃいけない場所があったから、その場を離れてしまったけど、その後どうしたんだろうか？

　それからバスに乗りながら考えた。彼女は何かもう、とにかく、イヤになっちゃったんじゃないのか？　それで、力も抜け、あちこち、どうにも動かせず、もう、それで、ああ、もう、何もかもイヤッ！　と、そこで、ふてくされて、ゴロンと床に横になったんじゃないか？　

　そういう気持ち、なんとなく理解できる。ああもういいやっ！と、何もかも捨て鉢になってしまう。そうなるともう、床にゴロンとするしかなくて、それが公園なら空を見上げる人になるけど、駅だと不審者になっちゃう。

思えば、最近ずっと自分もそうだった。あああ、もう、イヤだ！と捨て鉢な気持ちになって、ゴロンと転がる代わりに、むちゃくちゃな生活をしていたら、先週はひどい病が突然に襲ってきた。

　私はそれで「ふてくされてたツケがきた！」と思って、今はもうちょっとなんとかしよう、と思っている。思ってはいるが、なかなかなんとかできないのだが。とりあえず、深呼吸して、朝ちゃんと着替えて（だいたい一二日中パジャマでいましたから）、少しずつやれることをやろうと思っている。健康を考えて、１，２，１，２、だ。あと何年生きられるか分からないが、最後のラストスパートをもう少し、なんとか生きようと思った。

　でも、その女性はどうしたんだろうか？　その後、どこへ行っただろう？　思うに、ああいうときは女性警官が来てくれたらいいのになぁ？　男性だと話せないこともあるし。交番て、男性警官ばかりだけど、女性警官って、いないのかしら？　そして彼女には家族はいるのだろうか？　駅ではああしてしまい、今日はどこでどうしているんだろう？　本当は、大丈夫ですか？って、腕ぐらいなでなでしてあげたらよかったのだろうか？　でも、そうしたら「うるさいっ！」とはねのけられたろうか？　まぁ、でも、はねのけられたら「ごめんなさい」と言えばいいだけで。

　道端で横になってるおばさんを見たときの対処法ＡＢＣ。

　そういうコラム、誰か書いてくれないかしら？　これだけ情報過多の時代なのに、そういう大切な話は全然どこにも載ってないわ。