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西尾市とPayPayが地方自治体として全国初の提携。キャッシュレスシティへの第一歩。

藤野貴教の個人活動として、地元である愛知県西尾市のスマート自治体推進アドバイザーに就任して3か月。はじめての成果がでました。まだ第一歩ですが、大きな一歩ですのでNoteにまとめてみます。

PayPayと西尾市が包括業務提携を行い、市内でのキャッシュレス化を推進する取り組みが始まります。2019年9月19日に西尾市でPayPayとの共同記者会見が行われ、NHKの東海地域ニュースでも取り上げられました。

ニュースとは別軸で、私たちも昨日の記者会見の模様を映像でまとめてみました。


なぜキャッシュレス化を進めることが、スマート自治体推進につながるのか?⇒市民がデジタルに慣れる。「サクサクユーザー化」してもらうために

保育園の空きを確認する、粗大ゴミ引き取りを連絡する、などいろいろな市役所とのやり取りがスマホでできるようなサービスが、どんどん生まれています。しかし、市民自身が「私スマホとか苦手」「ネットで申し込まなくても別にいいじゃん」という感じでは、ネットサービスは宝の持ち腐れになってしまいます。

必要なのは、まずは「市民自身がデジタルを活用することに慣れていく=サクサクユーザーになる」ことだと私は考えます。

サクサクユーザー

そのきっかけになるのがデジタル決済サービスの活用です。PayPayをはじめとするデジタル決済は、還元キャンペーンの物理的なお得感と、財布を持たずに買い物できるサクサク感を味わえます。その体験を通じて、「デジタルは難しくない。慣れの問題」という感覚を多くの市民が得ていくことで、やがていろんな市民サービスがデジタル化していく中でのスムーズな移行が成されていくことをイメージしています。

税の有効活用をして、市民サービスの向上を図る⇒テクノロジーを活用して人間の仕事を進化させる

当たり前の話ですが、自治体の運営は税金で賄われています。住民票の更新も保育園の入園手続きも、市役所が行うすべての業務は税金によって運営されているわけです。民間企業が業務のデジタル化を行い、生まれた時間やコストを活用して、社会・顧客への価値向上を生み出していくのが求められるように、地方自治体も変わっていく必要があります。

デジタルテクノロジーが進化する中、人間が行ってきた業務をテクノロジーに代替していき、人間が行う仕事の付加価値を上げることは市民サービスの向上に寄与していきます。実際、西尾市では、ふるさと納税の受付・管理業務をRPAに代替し、生まれた時間で「もっと喜ばれる返礼品を探す」「生産者との対話を増やす」という仕事の付加価値向上を図っています。

市役所内の働き方改革をデジタルを活用して行うだけでなく、生まれた時間で市民サービスのさらなる向上を図れれば、市民も喜ぶだけでなく、市役所で働く人たちのやりがい・エンゲージメントの向上につながると信じています。

スマート自治体推進アドバイザーの役割

住みたくなる街、働きたくなる街、遊びに行きたくなる街になるのが、スマート自治体推進の大目的

超高齢社会である日本は、さらなる人口減少の中、地方自治体は住民税を増やすために住民票の取り合いになるでしょう。「住みたくなる街」「働きたくなる街」であることが、自治体としての至上課題です。

たとえば福岡市では、LINEで粗大ごみ収集の申し込みができ、一部の地域ではLINEPayで収集処分費用の支払いができるような実験を始めています。

このサービスは、ゴミ収集センターに行く時間のない働く人たちからするととても便利です。「いちいち電話予約して、引き取ってもらった後に手数料チケットをコンビニや郵便局で買わないといけないなんて、このスマホ時代にありえない!」という感覚が、これからのスタンダードになる。そこでいち早く、いろんな市民サービスがデジタル化させていくことで、「この町に住むと、生活も働くこともサクサクしてて快適」という町のブランドをつくっていくことが地方自治体としての重要な戦略になるはずです。

そして、「サクサクシティ」は観光客にとっても魅力的です。

キャッシュレスシティになっていること、バス・タクシーや自転車などが、シェアライドなどがスマホでワンストップでできるMaasが機能していることは、海外・国内の観光客を引き寄せるためのMUST条件になっていくでしょう。

社会をよくするために、僕たちは働きたい

私自身は、働きごこち研究所という会社を主宰し、「社会課題を解決するリーダーの育成」に全力で取り組んでいます。

この国の社会課題は、1、人口減少による働き手の不足と、2、テクノロジーの普及の立ち遅れのダブルパンチです。

上海では働く人が余っている中でのテクノロジー活用ですが、日本は働く人が足らない中でのテクノロジー活用と、目的がまったく違うのです。なのに私たちは「テクノロジーとか苦手」「別に今のままでもいいじゃん」とテクノロジーを使おうとしません。

もしこのままテクノロジーが普及しなかったら、働き手への負荷のしわ寄せがますます進み、「もうしんどいからお店・事業・仕事を辞める」ということが日本中で頻発していくでしょう。すでにドライバー不足による物流業の倒産や個人営業の店舗閉店が起きているのです。

選択肢を残す

私たちの国の豊かさは、「選択肢がいろいろある」ところにあります。豊かさの喪失とは、GDPが減少することではなく、選択肢がなくなることを意味します。「周りにあったいろんな選択肢(お店・農産物など)がなくなってきた」ときに、私たちは「この国の豊かさは失われた」と気づくかもしれません。

でもそれでは遅いのです。未来の子供たちのために、「選択肢がたくさんある豊かな国」を残す。そのために、2019年の今からできることをひとりひとりが始めていくことが大事。それが僕が全力で「サクサクユーザー化」啓もう活動(笑)を頑張っている理由です。

最近、あるラーメン店がPayPayを導入しました。ランチタイム以外は店主のおじさんが一人で回している個人営業のお店です。会計の時に1000円を支払うと店主は一度ラーメンをつくる手を止め、レジに来て310円のお釣りをくれます。その後店主は「手を洗って」また調理場に戻ります。この「手を洗う」という作業が発生していることに私たち消費者は気づいているでしょうか。

いまこのお店にはPayPayが導入されています。私はレジでQRコードを読み取り、調理場の店主の元に歩み寄り、「大将、690円で支払うよ!いい?」とスマホの画面を見せます。店主は「おおありがとう!」とラーメンを作ったままで会計を終えることができます。

たったこれだけのこと。でも、それが「働き手を楽にする」ために消費者ができることだと思うのです。

わたしたちが今、現金で支払うのに何の不便もないのは、閉店後のレジ締め作業と開店前の両替作業をお店の人がやってくれているからです。でもラーメンを作る人はラーメンを作ることに集中したいわけですし、美容師の人は髪を切ることとお客さんと会話することが仕事の喜びなわけです。閉店後の現金精算がしたくて美容師になったわけじゃないのです。そういうことを意識した美容室経営者はキャッシュレス化をすでに進めています。

キャッシュレスとは、消費者が還元キャンペーンを得るだけでなく、働き手を楽にすることもまた目的であることが伝わっていけばいいなあと感じています。(もちろん政府としては税収を増やすことが大目的にあるわけですが、それはまた別の視点として取り上げます)

大変長くなりましたが、「なぜ地方自治体がキャッシュレスを推進するのか」というところの意図を、僕個人の考えとして書かせていただきました。お読みくださりありがとうございました。

スマート自治体推進アドバイザーに就任した時の思いは以下のブログから。

これからも西尾市でのいろんなチャレンジに微力ながら貢献していきたいと思っています。




2冊目の本書いていて、たまにやる気出すためのNote書きます。